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(短編) エケベリア(七福神) その1
プー太郎が公園のベンチでうたた寝をしてると、一陣の風が吹いて風来坊が現れた。
「お前の願いは何だ?」
「何だよ?いきなり?」
「願いが無いのなら、帰るぞ」
「ちょ、ちょ待てよ!そうだ!昨日買った宝くじを当ててくれっ」
「お前、金がほしいんじゃの。よし、わかった」
風来坊は、持っていた長い杖をプー太郎に振りかざした。まばゆい黄金の光が彼を包み込み、彼は変身した。風来坊は懐から鏡を取り出して彼に見せた。
「うわっ!誰なんだよ、オレは!」
「ふくろくじゅ、じゃよ。これで、願いは叶うであろう。さらばじゃ!」
風来坊は、また一陣の風となって消えて行った。
(ふくろくじゅ?ってなんなんだ?)
プー太郎はスマホでググった。
【福禄寿。七福神の一人。幸福・金運・長寿の神】とある。
(ふむふむ。これで、宝くじが当たるのか?抽選結果が発表されるのは、今夜だ。楽しみ、楽しみ)
しかしである。
(この見た目で長寿とは、困ったものだ。すっかり爺さんじゃねえか)
プー太郎は、でも今までもモテたことは無いし、金が入れば何とかなると覚悟を決め、目を閉じて、またうたた寝を始めた。
「お暑いでしょうに」
薄目を開けると、誰かが麦わら帽子をかぶせてくれた。また、誰かは手を合わせて拝んで行く。中には小銭を握らせてくれる人もいた。
(ハハーン。みんな、福禄寿にあやかりたいのか?)
プー太郎は、麦わら帽子を逆さに地面に置き、見えない杖を右手に持ち、左手も巻物をつかんでいる風な格好で、笑みを浮かべて立ってみた。
集まる、集まる。麦わら帽子の中には、万札も数枚ある。すぐに立ち疲れて、集計する。当分、困らない金額だ。空腹が襲ってきた。
(コンビニで何か買って帰ろう)
公園の出入口に、何やら大勢の人が集まっている。近づくと、交通遺児育英会・募金会場のノボリが立っていた。少女が募金箱を持って、(お願いしま〜す)と叫んでいる。ふいに目が合ってしまい、吸い寄せられるように少女の前に進んだ彼は、募金箱のフタを開け、所持金全てを入れてしまった。
「ありがとうございます!お名前を教えて下さい」
「名乗る程の者では、ござらぬよ」
時代劇の役者か!と自分にツッコミを入れながら、彼は公園を出た。
(見事な振る舞いじゃ!)
どこからか声がして、プー太郎はまた黄金の光を浴びた。通りのショーウィンドウのガラスには元の姿に戻った彼がいた。
(なんだよ~誰かに金運を運ぶための福禄寿だったのかよ。オレの金運はどこへ行ったんだよ~!)
彼は、泣け無しの、自分のポケットの小銭も募金していた。
(続く)
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