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毎週ショートショートnote【デンジャー縞ほっけ部】
スーパーに冷凍したほっけの切り身が大量に売られていた。一尾98円。
地域的にほっけはあまり流通しておらず高級魚だと思っていたので、半透明のビニール袋に五尾を買い物かごへ入れた。
「それ、真ほっけにあらず。縞ほっけだぞ」
見知らぬ爺さんが声をかけてきた。
「わしは買わん。そんなロシアからの輸入品なんぞ」
「どうしてですか」
「その代金がウクライナを攻撃する砲弾に化けるんじゃ」
そんなことを言い出したら切りがない。
「でも、親ロシア系の自国民を虐殺してたのはウクライナですよ」
「おっ! 兄ちゃん、若いのに言うねぇ」
「裏にはアメリカの産軍共同体の戦争屋がいて」
「確かにな。二国間だけの問題じゃない。ドイツだってバルト海にパイプラインを引いて天然ガスの中継地だったスウクライナの地位をおとしめた。NATOの思惑が複雑に絡んでおるな」
「だから、縞ほっけに罪はないでしょ? 買いますよ僕は」
「好きにするがよいよい。またもっと兄ちゃんとディープでデンジャーな裏話がしたいものじゃ」
「はい。いずれまた」
ほっけの名前の由来はその美味さを伝えたのが法華経のお坊さんだったからだが、縞ほっけで絡んでくるじいさんはさしずめデンジャー縞ほっけ部の部会長。 ならばこっちは、モーマンタイ縞ほっけ部を名乗って食すのみ。
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