毎週ショートショートnote【だいたいニャー】
定休日。換気のために店裏の搬入口を開けたまま在庫管理に追われて戻ると、ストーブの前に薄茶のノラ猫が寝そべっていた。
「おっ! いらっしゃい」「・・ニャ~」
ノラ猫はちらりとオレをいちべつし、めんどくさそうに返事した。
「今日も寒いなぁ」「ニャー」
今度は1ミリも動かず、しかし律儀に返事だけはする。
「もしかして、お前、猫のふりして本当は犬だろ」「ミャ~」
鳴き方が微妙に違う。否定しているのか?と可笑しくなった。
搬入口を開けていると、ふらりとやって来ては温まっていなくなる。唇がめくれていて、舌先がいつものぞいている愛嬌のある顔をしたノラだった。
そんなある日、派手に転びながら取っ組み合いの喧嘩をしているそいつががいた。二匹のノラの抜けた毛が風に舞う。最後はにらみ合い、そいつは先に後ずさりしてその場を離れた。その日以来、そいつは店裏に来なくなった。
「そうか。あの日、ボス争いに負けたんだな」
ノラは死を悟ると、ひとりで死んでいくという。
(ダイ(死)体は、見せないニャー)
今日もストーブの前がぽっかりと空いている。
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