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シロクマ文芸部【甘いもの】
甘いものに誘われてやってきたのか、週末のコンビニ午前2時。
年の頃ならアラサーの独身女性? レジで待機してみても、あれこれ商品を手にとっては 戻し戻してなかなか決まらず、もう30分。ようやく手にもって来たのは、チロルチョコ 1 個だった。
「ありがとうございます」「少しですいません」
「いえいえ。全然OKですよ」
「あ、あの・・ちょっと聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょう?」「私みたいな体形、どう思います?」
「どうと言われても・・」
「ですよね。いきなりデブですねなんて言えませんよね」
「ですよね」「あ~やっぱりデブだと思ってる」
「そんなこと思ってませんよ。ただ、」
「ただ?」
「かわいいなぁって思いました。散々悩んで、チロルチョコ 1 個って」
「馬鹿みたいでしょ? 夜な夜な急に甘い物が欲しくなってここに来て。でも、ダメダメって言い聞かせる自分もいて・・」
「なんとなくわかりますよ。オレもお腹すいてないのにカレーとかラーメンとか、結構な量を食べる時ありますもん」
「何なんでしょうね、それって」
「多分、心のお腹がすいてる時なんじゃないかと思います」
「心のお腹?」
「というか、心の別腹かもしれないですね。なんか満たされない感じを好きなもので埋めたいっていう欲求なんですかね」
「なるほど」
「たくさん食べて一時的に満たされても、心の別腹はすぐにお腹すいちゃいますよ。だから、チロルチョコ1個は正解だと思います」
「・・今夜ここに来てよかったです」
「また一個でも買いに来てください」
それから彼女は店に来なくなった。心の別腹を満たす確かな方法を見出したに違いない。どんな方法なのか、ちょっと聞いてもいいですか?だ。
(なんだかいつもお腹いっぱいだわ。私、恋しちゃったのかも? やせたら、あの人に会いに行こう)
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