毎週ショートショートnote【恋花粉】

　驚くべき研究結果が発表された。花粉症になった人ほど恋人が見つかりやすいという。花粉が鼻の中にフェロモン受容体を作るというのだ。
　「へえ、面白い。そういえば私、春と夏によく告られるわ。私のフェロモンを感知するブタクサ君やスギヒノキ君が増えるのね」
　「それでも花粉症じゃない君は、男達にごめんなさいを言い続けて、いまだおひとり様か」
　「あなたに言われたくないわ」
　「おれも花粉症じゃないからなあ」
　「あっ！ 私すごい発見したわ」「なになに？」
　「ジューンブライドって、どうして6月の梅雨の時期にわざわざ結婚するんだろうって疑問だったの」
　「確かに。足元の悪い時期に式を挙げなくてもいいよな」
　「でしょ？ でも雨が降って恋花粉が飛ばない時期だからこそ、フェロモン関係なく愛が深まった二人がゴールするのが梅雨の6月なのよ」
　「ふむ。なかなか深い考察だね。でもそもそもがヨーロッパの古い風習を真似たらしいよ？ あちらでは農繁期が終わって雨も少ない６月だからこそのジューンブライドなんだってよ」
　「あらそうなの。んじゃ、恋花粉が飛んでるの日本だけなのよ、きっと」
　自説を曲げない彼女だったが、研究結果には続きがあった。
　フェロモン受容体が出来るのは、何故か日本人に多いらしい。たびたび恋はするが、そのせいなのか愛にまで昇華しない。少子化の根本原因かもしれないとその研究は述べている。