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毎週ショートショートnote【バンドを組む残像】


 高校の文化祭に出たくてバンドを組んだ。エレキ2人とベースとドラム。知り合いにドラムを借りに行くも断られてしまい、ドラム担当のT君は練習用に借りた田んぼの小屋には来なかった。本番までにドラムをどう調達するか決まってないし、最悪3人編成でやるという考えを見透かされてたのだ。
 
    文化祭前に予選会があり、ドラムがないと音が締まらないのを実感し、合格するも参加することに意義あり状態。しかし、本番前日になって T 君がどこからかドラムを調達してきて「オレも参加していい?」と言ってきた。もちろんと承諾して本番当日。級友に「このストップボタンを押して解除したら録音が始まるから」とテープレコーダーを渡す。演奏が始まると生徒たちの自然な手拍子が始まり、体育館全体が沸いた。メガネにくくりつけたグラサンが重くてずり落ちそう。マイクが途中シんでオレのボーカルは口パクだ。T君のドラムは先走る。ベースのY君だけが冷静だった。    

 台風が来てるからとバンドデビューは1曲で終わった。級友がストップボタンを何故か2度押して録音失敗。サイドのN君は「気持ちよかった~天下を取った気分」と満足気だったが、オレはもう一回最初からちゃんと組み直したかった。だが、バンドは霧散して幾年月、あの小屋も朽ち果てた。
 
 おっさんバンド再結成? きっとリズムがバラバラ、観客全員つんのめって帰れコールの、残念!散々オールスターズの残像が浮かんでくる。




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