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毎週ショートショートnote【ジンジャークッキーイブ】

 ある年のイブの夜。アパートに帰ると、ドアノブに赤いリボンの付いた手提げの紙袋がぶら下がっていた。
〈ハッピーメリクリスマス!私が作ったジンジャークッキー食べてね♡〉
 メッセージカードが入ってはいるが、名前がない。こんなことをする女性に心当たりもないから不気味なだけ。いや、女性とは限らない。自称女性かもしれないが、目的がわからないだけに中身も開けずに捨ててしまった。
 その年はクリスマスが土曜日で、どこへ出かけることもなく怠惰に寝転んでいると呼び鈴が鳴り、出てみると見知らぬ男女が立っていた。
 「突然すいません。つかぬことをお聞きしますが、昨日の夜、こちらにジンジャークッキーの入った紙袋が届いていませんでしたか?」
 「あったけど・・気持ち悪いんで捨てちゃったよ」
 「え~!でもほらね!」「ほらねじゃねえよっ」
 「おたくら、なんなの?」
 「あっすいません。僕、すぐ上の階に住んでるものですが、こいつが階を間違えてしまって」
 「あ~そういうことね。良かった。なんか妙なストーカーがいるのかと思ってさ。クッキー、ごみ箱にあるけど持ってく? そのままあるから」
 「いや。あっでも、じゃまなら持って帰ります」
 「了解。ちょっと待ってって」
 二人は紙袋を受け取ると、上の階へと戻っていく。
 「ほんとどっか抜けてるよな」「でも嘘じゃなかったでしょ。私、頑張って作ったんだから」「わかったわかった」
 やれやれ。イチャイチャしやがって。しょうがねえやつらだ。いや、しょうがが戻ったやつらか。その二人の背中に「メリクリっ!」とつぶやいた私に神のご加護を!w

 
 
 

 

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安&堵
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