大ケヤキと親父
東野圭吾さんの著書「クスノキの番人」
夜、クスノキの空洞に入ると、亡くなった身内の方からのメッセージを受けることができるというストーリー。
九石の大ケヤキ
当クスノキにはモデルと言われる木があるようだが、僕は九石の大ケヤキを思い出して読んだ。
大ケヤキは、栃木県茂木町の市街から車で20分、八溝山系の山中にある。
樹齢800年、樹高18m、目通り7.3mの巨木である。
大ケヤキに最初に出会ったのは、カーナビがない昔に、夜、車で道に迷ったときのことだ。山中の夜間運転は怖いものだ。
真っ暗な空間を、車のライトを頼りにして進んだ。
突然、巨大で、空洞のあるものが目に飛び込んだ。不気味だった。
通り過ぎた後、「今のは、一体何だったんだ」と怖く思った。
巨樹が放つ圧倒感は、昼よりも夜の方が一層強い。
東野さんの物語のクスノキは、昼は一般開放され、夜は予約した者だけが行くことができる。
九石の大ケヤキは、800年もの長い間、高台の場所から、茂木の町を、そしてそこで働く人たちを温かく見守ってきた。
歴史の生き証人だ。
東野さんの物語のように、大ケヤキを前にして、祈念すれば願いが叶うように思う。
親父の声
僕は、大ケヤキを通して誰のメッセージを受け取りたいだろう。
直ぐに顔が浮かぶ。
そう、親父だ。
生前、「人に迷惑を掛けずに逝きたい」と言っていたが、言葉通り、昼に車を運転してスーパーに買い物に行って、その夜に突然、意識が戻らなくなった。
最後に、何を話したかったのだろうといつも思う。
僕は、あの親父ともう一度どこかで話したい。
僕は、大ケヤキに手を触れ、そっと声をかけた。
僕「親父よ」
「・・・・・・・・・・」
僕「ありがとう」
僕は、大ケヤキから離れ、空に向かって大きく背伸びした。
さあ、家族のところに帰ろう!