中森明菜の復活。本当のことなんて、彼女しか知らない
また、中森明菜が帰ってきた。
中森明菜といわれると、子供のころから資生堂の化粧品を連想する。
白い机に、
宝石箱からこぼれだしたかのように、赤い口紅と色とりどりのマニキュア、アイシャドウが散らばっている。
それを手に取るのが、若き日の明菜だった。
ファン、というわけではない。
もう少し身近な存在だ。
「大人になったら、こんなお姉さんになりたいな」と思わせる人だった。
当時、歌番組で活躍したアイドルたちのほとんどが、その姿を消していく中、
明菜は、私の人生の節目節目で、顔を見せてくれた。
少しハスキーで、艶のある低音は、健在だった。
忘れられない話がある。
「ほんとはね、不良娘のイメージで売りだされるのが嫌だったの」と苦笑していたことだ。
「だから、セカンド・ラブを歌えた時は、私、ほんとに嬉しかったのよ。
可愛らしい女の子の歌だもの」
それを聞いて、なんだか切なくなった。
私は、少し斜に構えた明菜も好きだけれど、
プライベートでもレッテルを貼られるのは、辛い。
セカンド・ラブは、私のお気に入りの一曲となった。
やがて、いよいよ彼女の姿を見かけることもなくなり、
同時に、長年、心の病を抱えていたことを知った。
アン・ルイスも弾けるような笑顔の裏で、パニック障害と闘っていた。
私に歌うきっかけを与えてくれた人たちは、皆、ひとりで目に見えないものと戦い続けている。
そして私も歌手になり、ジャズスタンダードを歌うようになってしばらくたったころ、
久しぶりに明菜を見つけた。
スマホのなかで、やはりジャズを歌う明菜は、目元が優しくなって、年相応のきれいな小母さんになっていた。
「歌姫の復活」
本格的な活動開始について、たくさんの声や要望を聞くが、
私はそれは求めない。
体調を1番に考えて、細く長く続けてもらえたらそれで良い。
ー私も、マニキュアと赤い口紅を普段づかいする女になりました。
これからも一緒に歌って、綺麗に歳を重ねていこう。
姉さん。