実写映画『からかい上手の高木さん』感想(途中からネタバレ有)
実写『からかい上手の高木さん』を観てきました。事前情報では「フランスに転校してしまった高木さんと10年ぶりに再会する」という原作とは大きく異なるifストーリーで、いわゆる「ダメな実写化」なのではないかという疑惑がありました。監督の今泉力哉さんは不倫、浮気作品で有名であり、中学生のピュアな恋愛を描けるのか怪しい感じもしました。正直、ドロドロの大人の恋愛とかセックス描写とか含まれた特級呪物映画になってることも懸念(期待)していたんですが、実際試聴してみるとそんなことは全くなく120分の長場を飽きることなく楽しめました。自分は西片と高木さんのイチャつきを見て原作やアニメを見ている時のような2828した顔になっていたので、十分良作映画だと思います。
ただし、高木さんの原作、アニメファンにお薦めできるかというと留保がつきます。結局、実写ですからね。ドラマ版でも思いましたが、実写化してキツイのは高木さんでなく西片の方です。高木さんを3次元化してもそこまで違和感はないですが、高木さんからからかわれてキョどる西片は結構きついものがあります。加えて、本作では高木さんと西片は24歳になっていますが、恋愛観は中学生どころか小学生レベルです。いい年した大人たちが手を繋ぐ、繋がないで盛り上がりながらイチャイチャしてるのを「ピュア」と感じられるかどうかがこの映画を楽しめるかどうかの分水嶺だと思います。自分は楽しめました。ドラマ版楽しめた人なら映画も見て面白いんじゃないですかね。
ここから具体的な内容に入っていきます。ネタバレ注意。
24歳になっても高木さんと西片はやってることは中学生の時と変わりません。完全に体の大きな子供です。高木さんに西片がからかわれて照れて高木さんがクスクス笑うという定番パターンです。完全にやってることが中学生ですが、これは10年ぶりに再会して二人の精神が子供時代に戻ってるんでしょうかね。恋愛観が中学生で止まってるので、西片たちより現役中学生の恋愛の方が進んでおり、今泉監督も「中学生が二人の恋愛の師匠」と言っています。西片は生徒たちの恋愛相談に乗っているうちに「好き」ってなんだろうと考えさせられ、最終的に高木さんに告白しようとします。
その告白シーンがかなり映像的に挑戦的です。長尺(15分くらい)を使ってカメラ固定、BGMなしで高木さんと西片の二人の会話だけで進みます。西片の告白も男子小学生レベルのものです。「お前が大人の恋愛の何を知ってるんだ?」と言われそうですが、本当にそう思いました。ピュアピュアです。そして高木さんが告白への返答に「好きだよ、付き合おう」と言った後に西片が「いや俺が言いたいのはそうじゃなくって……」と難しそうな顔してからがちょっと面白かったです。詳しくは劇場で。
不満点といえば、やっぱこの高木さん定番の「ねえ西片、勝負しよっか?」から始まるゲームはどこかで一つは入れて欲しかったですかね。「わたしの勝ちだね」「高木さんめ〜!」の黄金パターンがなかったのはちょっと寂しかったです。
後、10年間高木さんが西片に会いにこなかった理由づけもどっかでして欲しかったかな。原作の高木さんは、時々不気味なくらい超然としたところがありますが、映画版では結構普通の女性です。「西片、バカ!」って感情を顕にすることもありますし、人生に疲れた雰囲気もあります。そもそも20歳で日本に帰国した高木さんが4年も経ってから西片に会いに来たのは人生の方向性に迷っていたためです。進路に迷って生きづらさを感じ、童心に帰りたくってふと中学生の頃好きだった男子を思い出してまた会いたくなったという流れなんじゃないかと思ってしまいます。
もうちょい揚げ足取りすると、教師と教育実習生があんなに所構わずイチャついてたら流石に叱られると思います。学生気分ここに極まれりです。
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