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SLIP STRIP TRIP

はじめに

私の生家は、愛媛県は松山市、道後温泉から徒歩1分にある。道後の温泉街は有り体に言えば私の庭であるが、唯一踏み入れたことのない場所があった。
それはストリップクラブである。
正式名称をニュー道後ミュージック。
四国最後のストリップクラブであり、人気バラエティー番組である相席食堂でも紹介された歴史のある店舗だ。

産まれてから高校卒業に至る18年間、私はほぼ毎日ニュー道後ミュージックの前を通り、その度にそれを視界の隅に追いやった。幼い頃は店頭に飾られている裸体の女性のイラストが書かれたポスターを避け、成長してからは店の前をたむろする厄介そうな大人に絡まれない為、見ないように努めた。

上記の様に私にとっては忌むべき文化であったストリップだが、先日、様々な文化に造詣が深い先輩の1人がストリップの面白さ、興味深さを私に聞かせてくれた。彼女曰く、ストリップクラブは性的な表現にスポットライトが当てられがちだが、身体表現の極地であると。

こうして私は、この文化に対するイメージを少々改め、折角好立地にあるこの禍々しい箱を無視しておく訳にはいかんだろうと、松山市1助平な友人であり、タイの風俗で狂った夜を共に過ごした戦友、土居を引き連れてストリップクラブに向かった。

なお、同行した土居も私とは別の視点からnoteを書いているので、こちらも合わせて読むともっと楽しめると思われる。
(彼のnoteはこちらから↓)

入店

ニュー道後ミュージックは1日に4公演あり、我々は18:50から始まる2公演目に行く運びになった。
開始の数分前に集合した我々は来たるべき女性器に背中を押され、小走りで店へ向かった。

店頭では深緑のダウンを着たあらさまな死相が出ている男性が受付をしている。周辺にいた数人の女性が、若者が来たと騒ぎ立てる為、私はたじろいだ。

この店は学割があり、学生は500¥オフで入店することが可能である。2500円きっちり支払い、虹村億泰の来店を疑うほどに深々と抉り取られたドアノブに手をかけた。

扉を開けると薄暗い空間にランウェイ付きのステージと、申し訳程度のポールに、ステージを取り囲む様に設置された椅子が見える。

客は我々の他に誰1人として居ない。

その日は道後商店街がかなりの賑わいを見せていたので満員で入れない可能性すら考慮していたのだが、出鼻を挫かれた。もっと言うと他のお客さんの立ち居振る舞いを参考にして楽しもうと思っていた上、仮にこれから見せられるものが見るに耐えないものであった際どさくさに紛れて退店することができない。参った。万策尽きたと感じた。

店内アナウンスが流れる。
明朗な女性の声で観覧中の諸注意を聞かされる。
大まかにまとめると

・自慰をするな

・奇声を上げるな

・携帯を出すな

の3点だ。

声量に関しての忠告があったために、この時点で我々が真一文字に口を結び乳房及び女性器を眺める未来が確かなものになってしまった。

続いて流れたのはかなり年のいった様子の男性の声だ。
内容はわからない。というのも、彼の喋り方はおおよそ人が放つものではなかった。
文字と文字の間がない、筆記体のような喋り方だった。

コレ

第1の刺客

ステージが暗転し、スポットライトが眩く光ると女性の影が落ちる。我々は目を疑った。

そこには神肌の貴種がいたのだ。

引用元:ELDEN RING

闘士の本能か、素早く危険を察知した土居は懐に携えた大剣を抜き放つ。私も負けじとタリスマンを取り出し神に祈りを捧げた。

すると、我々の窮地を嘲笑うかのように気の抜けた電子音楽が流れ始める。

彼女はその音楽に乗せて体を捻り始めた。
「大技が来る」と咄嗟に我々は防御体制を取ったがどうやら敵意はないようで、小気味良くステップをとり始めた。

どうやら「猫」がテーマらしく、身振り手振りで猫を表現しながらランウェイを闊歩している。

申し訳ないがかなり滑稽で、これから恥部が顕になると考えると笑いが込み上げる。

しかし彼女はストリッパーである以前に1人の人間。

真剣に活動を行う人の姿を笑うことはできない。
隣を見ると土居も同様の考えが逡巡しているのだろう。かなり複雑な顔をしていた。

1曲目は大した盛り上がりを見せず
じわじわと笑いと恐怖という相反する感情が積み重なった。

2曲目に突入すると彼女はおもむろにそのキャミソールを脱ぎ捨て恥部を曝け出した。

やっと御目当てを見ることが出来た私は安堵でか股間が熱くなった。失礼な物言いだが、おっぱいが出てきたら何でもいいんだなと、男の悲しい一面を感じ、胸が痛む。

一糸纏わぬ彼女は身体のあらゆる部位を大きく揺らしながら我々に向かって歩みを進め、目と鼻の先に立ち止まると、小オナニーを開始した。

客は私達2人しかいないので、彼女の視線が我々に集まり、長時間目が合う。永遠に思える時間我々は見つめあっていたが、彼女の目は冬の夜空より黒く、冷たかった。

極限まで張り詰めた空気の中、女性がセルフプレジャーに興じるのを無言で見るという人生最大級の混沌に精神が疲弊してきたところで、だいぶ酔っ払った様子の男性2人組が壁にぶつかりながら入店してきた。

初めてオナニーを邪魔されて感謝の念が湧いた。

我々は好機とばかりに煙草休憩を挟みに外へ出た。

外に出た我々は暫く沈黙していた。
彼女の思うがままに蹂躙された私の脳のCPUは過負荷に耐えきれず処理落ちしていた。

時計を見ると1時間半ある公演時間の20分しか経過していない。

私は先の女性が残りの公演も淫らな姿を見せ続けるものだと思っていたので、帰宅を辞さない心づもりだったのだが、大成功の前には大失敗があるのが世の常だ。
もしかしたら絶世の美女が出てくるかもしれない。

みすみすこれを逃す手はないので、「まだ頑張ろう」という意思を土居と共有した後、タバコの火を消して我々は店内に戻った。

店内に戻ると先ほど入店してきた酔っ払いの連れが10人ほど参加していて、少々居心地は改善された。
しかし、彼等が絵に描いたような「こうはなりたくない大人」で、嬢に対する勢いが凄まじく、数分前まで攻撃を受けていた我々は、気がつくと攻撃を加える側に立たされていた。

また、神肌の貴種は丁寧に股を広げ、大勢の視線を一手に引き受けていた。
何処となく終わりが近づいているようだったので、我々は観覧を続行することにした。

我々の勘はあたり、彼女は去った。
いきなり現れ、その場を叩き壊し、音も無く去る。
傷や記憶は残る。

地震のような女性だった。

第2の刺客

お次に登場したのはすらりと美しく伸びた四肢を持つ女性。顔を開いた唐傘で隠している。

ここまでの時間はこれを楽しむ為の前菜だったのだ、そう思ったのも束の間、唐傘が閉じると

破戒僧が現れた。

引用元:SEKIRO SHADOW DIE TOWICE

その細い目から放たれる威圧感によって前方のお客さん達がバタバタと気を失っていく。内数人は発狂してしまった。私も正気を保つので必死だったが、数々の死地を潜り抜けてきた土居は目を見開き、彼女の次の動きを伺っている。
彼の右手は力強く大剣のグリップを握り締めていた。

此度のテーマはラグビーだ。
何処かで聞いたことがある曲に合わせて破戒僧は取り出したラグビーボールを足蹴にしている。

ラグビーのワールドカップがあったのも先月の話であり、謎は深まるばかりであった。

特に面白みのない踊りが続き、2曲目に入ると、彼女も服を脱ぎ捨てた。

その豊満な乳房にまたしても我々は歓びの声を上げた。

悔しいと、そうとも思った。

3曲目に突入。あろうことか米津玄師の「馬と鹿」が流れる。ラグビードラマ「ノーサイドゲーム」の主題歌であり、ワールドカップでも流れた曲なので選曲としてはなんら間違いではないのだが、私は大の米津ファンなので、曲を汚される感じがして酷く不快な思いをした。

無事に彼女のパフォーマンスが終わると、撮影タイムが開始した。どうやら1000円支払うと、パンツが買えたり、ストリッパーと一緒に写真が撮れるようだ。

我々は記念に撮りたくて堪らず血の涙を流したが、怖い団体客がパンツを購入して邪智暴虐な振る舞いをしていたので我々は身を引いた。

彼らはストリッパーの胸に顔面を埋め、パンツを被り、ブラジャーを素敵な帽子に仕立てた。

健気にもお客さんを笑顔にしようと破戒僧はMCトークをしていたのだが、甘すべり。大人達はフォローに入る訳でも気の利いたことを言うでも無く受動的に彼女の話を聞いていた。

ストリップはみんなで作り上げていくものだろう。

私の頭の中でツッコミが生まれては消え、生まれては消えた。勇気が出ず、彼女を救えなかった。

第3の刺客

破戒僧が去った後、会場は暗転。
舞台袖から影が出てきて舞台の飾り付けをしている。
ベールのような布を天井につける作業だ。

黙々と作業をするその人を団体客の1人が揶揄した。

「はよ乳見せえや」

こんな風に生きられたら楽だろうなと思った。

飾り付けが終わり出てきたのは

冷たい谷の踊り子だ。

引用元:DARK SOUL3

彼女はスタイルも良く、歳はとっているが3人の中では綺麗な方だった。

何よりおっぱいが綺麗だった。

ツンと上を向いたピンク色の乳首だ。

彼女は踊りの最中舞台に寝転んだ。
すると先ほど罵声を飛ばした男性が
「犯したったらええがな」と言い放った。

ええ訳があるか。

この発言にも彼女は動じず、堂々と踊りきった。
正直、セクシュアルな興奮よりも感動が勝っていた。

ただ、三曲目がking gnuの「三文小説」でking gnuのビッグファンである土居は唇を噛み締め、血を流した。

退店

以上が事の顛末だ。
初めてのストリップクラブは壮絶な経験であったが、総じてかなり興味深く面白おかしい経験であった。

我々はなんとなく帰る気持ちにならず、コンビニでアイスと飲み物を買い、道後温泉を見下ろせる足湯で感想を語り合った。

土居は「いい映画を見た後のようだ」と言った。
その通りだった。

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