ライン民の彼女


彼女はライン民だった。


16歳のとき、誰に誘われてどう流れ着いたのか忘れてしまったが、とあるLINEグループに所属し、ライン民と言われる人種になっていたことがある。

これはその時の話し。
※ライン民とはLINEを通じて集まったネットの人間の総称

俺の高校は特殊で、17~21時の間に授業を受ける。
所謂、夜間高校だ。
16時に起床して5時に就寝する。今思うと奇妙な生活をしていたと思う。
家族も寝静まって静寂に包まれる1~5時の間、俺はライン民として活動?をしていた。全く知らない大学生やニートと人狼したりただただLINEを交わしあった。ほとんどが自分より年上だった。
高校生の自分には、よくわからない話しばかりが交差するなか、俺の立ち回りはというと「キチガイを演じ適当に盛り上げる」だった。なんとも。
人狼のルールも良くわからないまま参加していて、村人なのに狂人ムーブをして本気でキレられたのを良く覚えている。

そんな中、歳の近い女の子が現れた、それが彼女である。

まず、今回なぜ彼女に関してのnoteを書くに至ったかを話したいと思う。
簡単に言うと”思い出を文章に落として忘れないようにする”ためだ。
写真を見るとその時の情景や感情が思い浮かぶみたいな。

いま俺は、最良の思い出たちを忘れていってることに悩まされている。

歳を重ねるにつれ情景が一番綺麗だった頃の思い出が徐々に徐々に欠落する感覚。世の中の人間はどう折り合いをつけているのか。

だから、なんか不意に彼女のことを思い出した、思い出せたので、せっかくなので文字の起こそうかなと思った。それだけ。

彼女。


彼女は俺と同い年にもかかわらず、コミュニケーション能力が高く、グループに入ってからすぐに馴染んでいた。そんな彼女を羨望の眼差しで見ていたのを覚えている。俺とはどうとにもならない存在。

ライン民は基本的にはグループチャット内で会話をするのだが、例外として、特別な行為として、個人LINEでのやりとりがある。俺は大学生のお姉さんに目をつけられていた。そこには恋愛要素があったのかなどは分からないがとにかく目をつけられていた。かなりの頻度で個人LINEでやりとりを誘われて電話をしていたからだ。当時チェリーボーイの俺から誘うことはないと思うのでこの記憶は正しいと思う。

そして彼女とも個人LINEでのやりとりがあった。
何度も言うが当時チェリーボーイだった俺からはそんな個人LINEをするという、大胆な行為はできるはずがないので、彼女から始まった個人LINEなのだろう。当時の俺に魅力なんてものはなかったので、何かの成り行きで始まったのだろう。

そうしてどうとにもならない存在から個人LINEをする程度の存在になった、なってしまった俺は、彼女に恋愛的に惹かれていった。ということはなく、一人の人間として興味をもっていった。
グループ内での彼女のチャットは常に明るく生き生きとしていたのだが、個人LINEを重ねるにつれて、どうやら彼女はそれだけの人間ではないらしいということを知った。
俗に言うメンヘラ気質だ。
当時どんな内容の会話をしたかは忘れてしまったが”依存先を常に求めている”そんな印象をもったのを覚えている。
そんな彼女の二面性に興味をもった。

”普段誰にも見せない意外な一面を見せる”をやるひと結構いるよな。あれほんと良くない、勘違いするから。今回に限っては、見せられた”意外な一面”がメンヘラだったこともあり、勘違いというよりは恐れのほうが強かったけれど。

個人LINEをするのは大学生のお姉さんと彼女くらいだった。
ある日、大学生のお姉さんからこんな話を聞かされた。
「彼女、虚言か分からないけど強姦されたことがあるとか家族絡みで劣悪な環境にあるとか言ってるらしい」
恐らく彼女が他の誰か(恐らく男性だろう)に個人的に話したであろう内容が回り回って俺のところまで届いたのだろう。そして、その頃から彼女はLINEグループから浮き始めた。

彼女にはメンヘラ要素とは別に「どことなく人とは違う雰囲気」があった。大学生のお姉さんからその話を聞いたとき、その原因はそういうところにあるのだと思った。なので俺はその話を真実だったと思った。今でもそう思っている。高校生にもかかわらず深夜に活動する彼女。ヤンキーでも不良でもない普通の女の子。だから普通じゃない。人と、違う。

そんな彼女を、16という未熟児である俺は背負いきれるはずもなく、距離は離れていった、と思ったが、なぜか俺達は東武動物公園にいた。

10月くらいだったと思う、きっと彼女も関東圏の人だったのだろう、俺達は会うことになった。所謂「オフ会」。人生初のオフ会。非日常。しかも女の子と二人っきり。俺は気合を入れ髪を茶髪に染めた。

東武動物公園内の噴水?みたいのがあるところで待ち合わせをした気がする、というかそこからしか記憶がない_____。
彼女は黒のパンツに白の上着を着ていて髪は黒く、肌は白かった。肌の白さは俺と同じで昼に外出することがないからだと想像できた。見た目は普通に普通の女の子だった。茶髪の自分が恥ずかしくなる程に。

俺達は、精一杯、東武動物園を楽しんだ。
基本的にスカしてたチェリーボーイだったので東武動物園を楽しむなんて柄ではなかった、から彼女に引っ張られて色んなとこを周った。その証拠にプリクラを撮ったことがあげられる。自分からプリクラなんて撮る発想にならないからね。

ベンチで昼食を取っているときした会話を覚えている、というかその時の会話しかもう思い出せない。
彼女「私、めっちゃ脚O脚なんだよね」
俺「へ~(彼女が立ち上がり見せてくれる) お~すげ~」
以上。
文章を書きながら記憶の欠落の怖さを改めて感じている。

太陽が沈みだし辺りがオレンジに染まりだした頃、彼女と別れる時間がやってきた。最後に何かを話した。内容はもう忘れたが、この後をどうするかの話しがされていた気がする。

俺達は、東武動物公園で解散した____。

解散が決まったとき、どことなく彼女から「期待外れ」という雰囲気を感じ取ったのを今でも覚えている。そして彼女はライングループから浮き出していたこともあり、フェードアウト。俺も気づいたときにはライン民ではなくなっていた。

彼女はいまどこで何をしていているのだろうか。


後日談というか今回のオチ。


オフ会のあとも少なからず連絡はしていたのだけど、半年もたつ頃には、連絡は一切取らなくなった。今では連絡先すら知らない。

気がかりな点として、当時の俺は”最終的に恋愛感情があったのか”が、あげられる。が、それはないのだろう。当時の俺にはぞっこんの女の子がいた。8回も告白するほどに。(8回振られた)だからきっとそれはないのだ。

だけど、彼女と共有した時間を思い出すと、どことなく青春の匂いがする。

つまり俺は、LINEという媒体を通じて青春を少しだけした。
「O脚で闇深めのライン民少女」と。

そのことを忘れたくないのだ。



















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