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もっとファンタジーを! 第二章「Face to face」

高校に進学してから半年、すっかりこの生活にも慣れていた。
 しかし!つるんでいるのは中学から安定のメンツのみである。
 俺は出花いずはな赤城あかぎ。ちょっとロン毛の帰宅部一年、好きな漫画はダントツで「ブルー・ノート」、これはイツメンとの交流のきっかけでもある青山御影先生の傑作で、高校生の主人公たちがバンドを組んでヒーローになるという感じの作品だ。
 ちなみに俺たちは全員音楽が出来るわけではない。
「明日ブルーノートの新刊出るじゃんな、学校サボって買いに行こうかな」
そういうこいつは朝月あさつき大輝たいき。サッカー部のバリバリスポーツマン。かなり陽気な方でバカ。俺とは対照的な人間だ。
「サボりはダメ!放課後みんなで買いに行こうよ!」
そう言ったこいつは松雪まつゆき静心せいしん。美術部であり芸術家。静かめだがただ静かなだけではなく、冷静で、時に的確にツッコむ。勉強もそこそこにできる天才だ。
 まるで似ていない俺たち三人はやはり他の人たちから見ても不思議なメンツのようだ。ただ「同じ漫画が好き」というところから始まった交友だが、きっかけなんて些細なもんだなとよく思う。
 ほとんど毎日二人の部活が終わるのを待ってこんな他愛のないことを話しながら三人で下校する。
 学校のすぐそばを流れる川沿いの道を歩いて商店街を抜けていく。そこが俺たちの分かれ道。

 歩いていたら靴ひもが解けてしまったので結びなおす。
顔を上げると数歩先で二人が待っている。その二人の顔を俺の後ろから夕陽が照らす。これが茜色か、と言うような空。
なにも変わらない日々。
 「なに黄昏れてんだ?お前?」
 「大丈夫…?」
 「ごめんごめん、お待た。」
 今この見える景色と俺たちの関係は変わらないままであってほしい。
 しかし、変わらなすぎる日々に退屈しているのもまた事実だ。

 次の日、部活のない俺は適当に図書室で課題をやって時間を潰し、早く終わった静心が途中で合流した。
 「赤城、お待たせ」
 そう言って静心が目の前の席に座る。
 「お、来たな、早速で悪いけど、世界史教えてくんね?」
 「じゃあ、その後は物理基礎お願いね」
 そんな感じでしばし勉強していた。
大輝の部活が終わるころには日も傾き、図書室も閉まるということなので静心と一緒にグラウンドへ。
俺たちが近づくとちょうど最後の「ありっさっしゃーーー‼」みたいな声が聞こえてきた。
少し待って、着替えも終わった大輝がやってきたので連行。駐輪場へ。
「三人そろったし、早速本屋へ!」と俺が言うと二人が「おー!」と返す。
「そういや大輝よ、今日彼女は居ないのかい?」
「ああ、あいつ今日は塾なんよ」
「一年生から塾って偉いねまったく、」
「うん、凄いと思う。」
「まあ、あいつ部活やってないし暇なんじゃね?あ、でも生徒会やるって。」
「おいまじか。なんもしてねえの俺だけじゃん!」
「赤城はそのままで十分だよ、ちゃんと勉強できるし」
「的確にどうも、」
そんなこんなで本屋に向かう。
俺たちはサブスクが主流の今でもCDを愛している。なのでCDも取り扱っているこの本屋は俺らの行きつけ?だ。もう店員のおじさんとお兄さんに覚えられている。
「お、君たち今日も来たのか!」店員のおじさんが気前よく言う。
「はい、今日発売の漫画買いに来たんす!」
「あ、今日はCDじゃないのか、新刊はあっちねー」
そう言われ俺たちは新刊の置いてある場所に向かう。
遠目からみてもわかる青色の表紙、間違いない!
ブルー・ノートはタイトル通りの青を基調とした話だ。青春、悲哀、舞台が海の見える街、雨の描写が多いなどなど青を思い浮かばせるものが多い。漫画なので見る絵は白黒なのだが巧みな技法によって完全に青色の世界に吸い込まれていく。作者の青山御影先生はこの作品を「群青色の青春とコバルトブルーのメロディー」と表現している。
新刊を手にし、購入。
「よっしゃ!早く読みてー!」
「じゃあ、ここらで解散かね?」
「うん、そうしよう」
こうしてそれぞれの帰路に就き、明日学校で大感想会が開かれる。

 次の日。
 クラスに俺のクラスに朝から全員集結して早速感想会。ちなみに俺と大輝は同じクラスなので、静心が俺たちのクラスに来てくれている。

三人で顔を見合わせる。言いたいことは皆同じはずだ。
「で、…。な?」
 「いやー、ね?」
 「うん」
 「えぐすぎない?」
 「それなー‼」
 「うん、凄かった。」
 大体いつもこんな感じから始まるのだ。
 「いや、マジで5巻のくだりがここで回収されたな!」
 「それ、あと最後やばい。あの感じだと一回解散すんのかな?」
 「解散はありそうだよね、なんかいよいよ感があったね。」
 こんな感じで話していると大輝の彼女がやって来た。
 「おはよー、またあの漫画の話?」
 「お、彼女」
 「朱里おはよー」
 「彼女だ。」
 大輝の彼女こと入江いりえ朱里しゅりである。俺と静心はそのまんま「彼女」と呼んでいる。理由はない。ノリだ。ちなみに入江と俺は小学から同じ学校なので、知り合いではある。
 「みんな本当にその漫画好きよねー」
 「当たり前さ!」
 「何をいまさら!」
 「当然。」
 「なにこの一体感…。流石トリオだわ…」
 こうして朝の時間は終わる。入江は俺たちが話しているのをいつも端から聞いている。
 前に一度「放置してごめんな」的なこと言ったが、「楽しそうなのが楽しいからいいのー」と言われた。でも申し訳ないので今度ブルー・ノートを貸しておいてくれと大輝に言っておいた。
 入江と静心は同じクラスなので俺と大輝で二人にしばしの別れと今日の授業への激励をかける。
 
 昼休みは四人で学食へ。
 言っておくが入江をほっといてしまうことはあれど俺たちは普通に仲が良い。と思う。
 少なくとも週に一回はこのようにみんなで学食に来ているし、大輝の部活の応援を他三人ですることもしばしばだし、一緒に四人で下校することもある。
 だが、まあ一応この時はブルー・ノートの話題は控えて授業や課題の話をすることが多い。
 特に今日の5限には「総合」という名の授業で環境問題について考える時間がある。
 昨今よく聞く「地球温暖化」。個人的に色々調べたりしている関心の高い話題なのでとても楽しみだ。
 俺たち四人はみんな勉強への意識がそこそこに高い。なので、お昼を食べながらこのような話もするのである。
 なんか中学はもっと堅苦しかった思い出があるが、それすら半年で薄れていくぐらい高校生活は楽しいし、自由だ。
 もちろん大変な面もある。特に勉強。中学の時にやっていたものが赤子に思えるほど今の勉強は大変だ。しかし、俺たちは高校受験の時の勉強習慣があったのでなんとか喰らいついている。
 俺は幸いなことにド理系なので、難関な数学や生物基礎、化学基礎なんかは楽勝だ。なんなら生物は趣味で一年の範囲は全部終えたし、その先もやろうかという段階に居る。
 勉強は好きな方だし得意な方だ。
 そして、それらの知識を活かしていつか世界を見渡してみたいと思っている。
 とはいえ今はただ机に向かうのみだ。
 なにか変化が欲しい。
 なら今からでも部活に入ればいいだろとも思うが、あまり惹かれないし、きっと慣れてしまえば飽きてしまう気がする。
 もちろんブルー・ノートの影響で軽音部に入ろうかな!と思っていたのだが、そもそもこの学校に軽音部は無かった。
 それなら趣味で楽器をやればいいじゃないかと思うかもしれないが、小学生の時から音痴で鍵盤ハーモニカも使いこなせなかったので無理だと思っている。
 とりあえずは目の前の勉強でいっぱいだ。部活をやっている人は本当に尊敬している。
 
 それから数日後。
 俺はいつものように静心と合流し、大輝の部活終わりを待って帰路に就いた。
 今日は大輝の部活がいつもよりも早く終わり、入江も合流して四人で帰ることに。
 「あー、今日も疲れたー」
 「な、マジ今日の古文ヤバかった。」
 「それは大輝が予習しないからでしょ?」
 「たいちゃん今度から予習一緒にしよーねー」
 「まあ大輝に関しては予習の問題もあるだろうけど、今日はなんか先生キレてたわ。」
 「みんなひでえな!確かに今日なんかヤバかったな。」
 「え、こっちのクラスなんともなかったよ?」
 「ね、うちらは平気だったよ?」
 「じゃあ、古典部がなんかやらかしたな…。」
 こんな会話をしていた。
 いつも通りの茜色の空。俺の後ろには黒にも近い紫色の空が広がりつつあるのだろうそんな時間。
 俺はまた解けてしまった靴紐を直すために立ち止まった。
 「わりい、靴紐解けたわ。」
 そう言い、靴紐を直しながら「そろそろ替え時かなー」なんて思っていた。
 少し先で三人が止まっている。
 顔を上げて「わりい!」と言う。
 俺は今日の疲れもあってか左手を上にして軽く伸びをしながら三人に近づく。

 次の瞬間にそれは起こった。

 ガッ!!バリバリ!!!

というようななんだか聞きなれない音が響いたかと思うと、俺の視界は真っ白になった。
 あ、と思ったときにはもう遅く、全身に流れる衝撃を感じながら俺は意識を失った。
 雷かなにかが俺が伸ばした左手から右足にかけて走ったのだ。
 意識を失う直前に青く幻想的な走馬灯の様なものを見た気がする。
 ああ、これで終わりなのか…。

 


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逆倉青海
ぐんぐんどんどん成長していつか誰かに届く小説を書きたいです・・・! そのために頑張ります!