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4月15日、思い出のグラデーション(タカラジェンヌの退団のことなど)

 宝塚歌劇を好きになり、特定のタカラジェンヌのファンになり、彼女のことを“贔屓”と呼ぶようになり、そこから足繁く劇場に通い、組の公演スケジュールに合わせて自分の休みの日の過ごし方が決まり、仕事のスケジュールまで動かし(笑)、彼女の名前がつくグッズを嬉々として購入し、スカステの番組表を贔屓の名前で検索して、タカニュは毎日録画して。あの時って本当に楽しくて、何も怖いものはないと思ってた。贔屓のことを考えているだけで満たされるし、他のものはどうでも良くなるし、他人にも優しくなれる気すらする。“恋は盲目”って本当にこのこと。でも、どうしたって抗えない“贔屓の退団”は、ほとんどの人にやってくるもの。

 “贔屓の退団”って、自分の身体の一部が捥れるような、そんなイメージではあるし実際そうだったけど()、その代わりに生まれてしまった空洞には、一生物のキラキラした思い出が自然と埋まると思ってる。タカラジェンヌでいてくれる期間を自分なりに精一杯応援する最後の機会、当時は必死そのものだけど、落ち着いてから思い返すと、あれほど充実した日々はないと思う。
 先日11日の雪組大千秋楽の余韻、未だにひたひたになっているけれど、あの日、たとえ中継だとしても、永遠に忘れられない尊い光景でした。感情を全て持っていかれるほど。タカラジェンヌではなくなること自体も寂しいけれど、組子と一緒に舞台に立つ姿が見られないこと、決まったスケジュールの中でお会いできなくなること、退団には色んな“寂しさ”があると思ってる。でも、千秋楽で見せてくれる集大成の舞台や、大階段を降りてのご挨拶でのやりきった表情は、寂しさでどろどろした感情にスっと光をさしてくれるよう。拭いきれない切なさと共存できる光。“昇華”という言葉が相応しいかな。端的に言うと、「良い顔するなぁ~!」と思う。選ばれて入団した皆さんが去り際に見せる最後の美しさは、何物にも敵うまいって思うよね。退団者の紋付袴姿を見て、こんなに細い身体で…と毎回ハッとする。男役や娘役という要素よりも、“ひとりのタカラジェンヌ”として地に足を着けて凛としている姿は、お芝居やショーに出演されてる時とはまた違った輝きがあって、好きなんです。すみれ色の世界に足を踏み入れる時と卒業する時、その区切りのセレモニーを盛大に執り行ってくれるところも、宝塚歌劇に惹かれてるポイントです。

 今日は4月15日。敢えて触れなくても良いかな…と思いつつも、当時の写真を見返すと、それはもう懐かしくて楽しくて… 蘇る充実感。宝塚ファンでいる限り、何人もの贔屓に出会うこともあると思うけど、退団発表から東京の大千秋楽にかけての感情は、二度と巡り合えない。退団自体は寂しいけれど、あの充実した日々を過ごしていた自分には嫉妬しちゃう時がある。

   『夢現無双/クルンテープ』、大劇場の公演期間は5週あって、そのうち4週遠征した。今思えばもう1週行って週末制覇したかった。往復新幹線+1泊代なんて、退団公演中の貴重な1週と比べれば、時間とお金を何故出し渋っていたのか。気軽に遠征できなくなった今すごく思う。よく「贔屓の退団公演を追いかけるのに必要な金額は…」みたいな話題を見かけるけれど、正直あんなに“プライスレス”な時間はないと思う。思い出を買っていたんです。(おっと計算しない口実…)
 2年前、特に4月の充実感はすごかった。今でも信じられないのが、千秋楽の日は泊まり、始発で東へ帰り仕事に行き、翌日の午前は仕事、午後からまた宝塚へ行き、宝塚駅付近の美容室でヘアセットをしてもらいディナーショー初日観劇後泊まり、翌朝始発で東へ帰り仕事。もう絶対できない!(笑)楽しかった武勇伝のようになっているけれど(爆)、DSご出演の皆さんは千秋楽の2日後に本番なのだから、もう頭が下がる思いでした、また、これだけ思う存分追いかけられる環境があったこと、お世話になった皆様のおかげも忘れちゃいけない。公演期間中もDSも、令和最後のミートるりさんも、常に感情の昂りが最高潮だったので、ふっと気を抜くと泣きそうな、表面張力ギリギリのコップのような日々だったけれど、それは悲しいとか寂しいだけじゃなく、満たされる幸せみたいなものがあった。ときめきで常に頬が熱かったので、チークなんて要らないなぁと思いながらソリオで冷たいタピオカ買って飲んでた。空いた時間に憧れの梅田の阪急に行き、デパコスファンデを買った。遠征先の買い物は最高に楽しい。遠征しなくても買えるものだとわかってるけれど、もしかしたら日常の中では買わないかもしれない。理性を東京に置いてくる、って最高。また遠征したいなぁ…。

 さてさて、美弥さんの大劇場ご卒業から2年。前の日は雨だったのに、当日は晴れ、白のジャケット、パンツ、すみれ色のブラウスに身を包んだ美弥さんが登場された楽屋口、それを見計らったかのように舞い始めた桜の花びら。奇跡のような、でも美弥さんが引き寄せた必然のような。あまりにもドラマチックな光景だった。紋付袴で大階段を降りてご挨拶する姿の神々しい美しさ、1993年のグランドホテルを観劇しに初めて宝塚大劇場へ訪れたことから始まるご挨拶。恋をし続けた宝塚。鮮明に覚えてるものですね…。「このグランドホテル」、とサヨナラショーで胸に手を当てる姿に重なるものがあった。17年間、男役像を追究してくれたから、宝塚歌劇を通して出会えた。ファンになれた。間に合えた。
 ファン目線で感じる「ご卒業から2年」はあっという間だけど、世の中の2年ってやっぱり長いんだなと、久しぶりにサヨナラショーを見ながら実感した。れいこちゃんは次期トップスターに決まり、来月には珠城さんとさくらちゃんの退団公演が始まる。それにしても、やっぱりサヨナラショーが高笑いで始まるなんて最高にかっこいいな!「I'm Sweetheart 」な美弥るりかさん。奇しくもBADDYを初めて観劇したのも4月15日。この観劇がきっかけで心撃ち抜かれ、美弥さんが気になって気になって…と友人達に告白し(恋愛相談か?)お茶会を取り次いでいただき、お手紙を書き。全ての始まりだった4月15日。ファンになった日と言っても過言ではない日。そう3年前。こんな偶然ある?(笑)
 「ファンになってからと退団まで」と「退団から今日まで」、今日で後者が前者の倍になりました。Twitterのタイムラインにいるファンの皆さんの中でも、ファン歴はそんなに長くないと思います。タカラジェンヌ時代のお茶会のご挨拶で仰っていた「宝塚の美弥るりかを好きになってくれた人達に、これからも素敵だと言ってもらえるような人生を」の言葉そのままに、有言実行する美弥さんをお慕い続ける日々が、今日からまた始まるぞ。あの日、嗚咽で埋め尽くされた宝塚大劇場も、充実した日々の思い出の1パーツ。寂しさから充実感。思い出のグラデーションも時間と共に変化していくなぁとしみじみ実感したところで、(とっくに日付は変わってしまいましたが)4月15日に寄せて!

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