がぼがぼとごとごと

むかしむかしあるところにがぼがぼがいました。

がぼがぼは踊りが大好き。嬉しいことがあるとすぐに踊ってしまいます。おしりをふりふり。くるくるまわっておててをたたく。

がぼがぼは歌うことも大好き。一人で歌うのも大好きだけれど、みんなで歌うことはもっと大好きです。なぜならたくさんの鈴がコロコロと転がるからです。

がぼがぼはお父さんとお母さんがいません。みんながお父さんでお母さんです。こどもたちはみんなお父さんとお母さんの子供です。

がぼがぼのおとうさんやおにいさんはらいおんさんを探しに出かけます。らいおんさんは草むらのなかに隠れています。がぼがぼのおとうさんやおにいさんはらいおんさんをおうちにつれて帰ります。おとうさんとおにいさんはおててをたたきます。鈴とたいこにあわせて踊ります。

がぼがぼのおかあさんはおとうさんといっしょに帰ってきたらいおんさんを見て踊りだします。それを見たお姉さんやこどもたちも踊りだします。一人のこどもが歌いだしました。するとほかのたくさんのこどもたちもつづいて歌いはじめました。たくさんの鈴がころころ転がります。

がぼがぼはらいおんさんをみんなに分けます。おとうさんはパパイヤの大きさ。お兄さんはマンゴーの大きさ。お母さんもマンゴーの大きさ。お姉さんはりんごの大きさ。子供たちはキウイのおおきさ。みんなで食べるとおいしいね。みんなのらいおんさんです。がぼがぼはらいおんさんにありがとうといいました。またたくさんの鈴がころころ転がります。

がぼがぼは泥や木の実でへんてこなものを作るのが大好き。だれも見たことがないものを毎日せっせと作ります。夢の中にでてきた手の長いお友達や川のそばに座っていた小さくて丸いお友達。お散歩についてきた5本あしのかわいいお友達。お友達はがぼがぼにしか見えません。お友達はいつでもがぼがぼたちの側にいて草笛を吹いておどっています。がぼがぼはこのお友達と踊ったり歌ったりするのが大好き。お友達は一緒におどろうよ。たのしいよ。とががぼがぼに話しかけます。がぼがぼにだけ聞こえるそよ風の声で。

ある日がぼがぼは森の中で迷ってしまいました。がぼがぼはお家にかえれません。どうしよう。がぼがぼは頭の上の蜘蛛の巣に聞いてみました。おーい、蜘蛛の巣やい。僕のおうちはどっちだい?蜘蛛の巣はいいました。おひさまの方向にまっすぐ進んでそれから三角のお花畑を歩いていくんだ。そしたら大きなお腹をした丘のむこうにきみのお家はあるよ。蜘蛛の巣はいいました。ぼくが一緒にいてあげるから怖がらないで。ぼくはいつでもいっしょだよ。

がぼがぼはいつも困ったことがあると蜘蛛の巣がまもってくれるのです。蜘蛛の巣はとってもおしゃべり。だってがぼがぼが大好きだから。あちらにはらいおんさんがいるからくねくね山を通っておうちにかえろう。あちらに行けばバナナ色のお花があるからきっと君たちがうれしいと思う。がぼがぼはいつも蜘蛛の巣といっしょ。蜘蛛の巣はがぼがぼといっしょにいるのが大好き。

がぼがぼのお顔やお手てはおひさまのお布団色に包まれています。がぼがぼはいっぱいのおひさまにくるまれるのが大好き。だっておひさまはがぼがぼをずっと昔がぼがぼがほんとうのおうちにいた頃を思い出させてくれるからです。がぼがぼはいつもおひさまにだいすきだよ、といいました。おひさまもがぼがぼにわたしのかわいいこどもたちといいました。わたしにそっくりなかわいいこどもたち。たくさんの鈴がころころところがります。

ある日ごとごとががぼがぼの村にやってきました。ごとごとは踊りが大嫌い。おうたも大嫌い。おひさまも大嫌い。ごとごとはいつもひとりぼっちです。がぼがぼはひとりぼっちのごとごとにいっしょにおどろうよ。と言いました。ごとごとは上手に踊れません。ごとごとはいいました。ぼくはきみたちなんかと踊りたくないんだ。がぼがぼは、じゃあぼくたちと一緒にうたおうよ。鈴がころころころがります。ごとごとはいいました。ぼくはお歌は大嫌いなんだ。

がぼがぼは、わかったよ。でもぼくたちはごとごとのことも大好きだからいつでもおいで。といいました。ごとごとはがぼがぼが太鼓や鈴といっしょにおどっているのをずっと見ていました。こんな踊りやお歌なんておもしろくないんだ。でもごとごとは本当はがぼがぼといっしょに踊りたいのです。鈴を一緒に転がしたいのです。ごとごとはひとりで踊ってみました。歌ってみました。やっぱりうまくできません。ごとごとは草むらのくさを全部ちぎってしまいました。ごとごとのお腹には赤いとうがらしがくっつきました。

がぼがぼはごとごとにききました。きみの蜘蛛の巣はどうだい?ごとごとは蜘蛛の巣ってなあにと聞きました。がぼがぼは言います。蜘蛛の巣は僕らのとってもやさしいお友達さ。いつも一緒にいて笑ったり泣いたりするんだ。僕は蜘蛛の巣が大好きなんだ。ごとごとはなんのことだかさっぱりわかりません。がぼがぼのおくちのはしっこは太陽の方向を向いています。がぼがぼはあまいあまいイチゴを食べたときのような顔をしています。ごとごとはなんだか悲しくなりました。ぼくは踊りも踊れない。歌も歌えない。蜘蛛の巣もない。ごとごとは頭の上を触ってみました。やっぱり蜘蛛の巣はありません。またごとごとのお腹には赤いとうがらしがくっつきました。

ごとごとのお腹の赤いとうがらしはごとごとにいいました。ぼくはがぼがぼがだいきらい。ごとごと、がぼがぼを踊れなくしちゃおうよ。ごとごとは言いました。そんなことしたらがぼがぼが泣いちゃうよ。とうがらしはいいました。いいじゃないか。だってきみのほうがほんとうはがぼがぼよりずっとかしこいんだから。

ごとごとは青白いお月様がまん丸に広がる明るい夜、がぼがぼの村へいきました。ごとごとはがぼがぼの細い足に茨をぐるぐるとまきつけました。これでがぼがぼは踊れません。とうがらしはいいました。僕をがぼがぼの口にいれてくれよ。辛くてがぼがぼはお口が開かなくなる。ごとごとはがぼがぼのおくちにとうがらしを入れました。ごとごとは蜘蛛の巣をさがしました。どこにもみあたりません。とうがらしは真っ赤な顔で蜘蛛の巣はどこだといいました。青白いお月様がまん丸に明るい夜。蜘蛛の巣はどこにもみつかりません。

大好きなお日様が顔をのぞかせるとがぼがぼたちはおひさまに会いにいきます。ところがどうでしょう。足に茨がぐるぐる巻きになってお日様に会いにいけません。がぼがぼはお歌でお日様に会おうと思いました。ところがどうでしょう。唐辛子が辛くてお日様にあえません。がぼがぼの目からしょっぱいお水が川のように湧き出てきます。えーんえん。えーんえん。

ごとごとはがぼがぼの目から流れるしょっぱい川の前でいいました。やいがぼがぼ、お前の蜘蛛の巣はどこにある!僕は蜘蛛の巣がほしいんだ。がぼがぼはいいました。蜘蛛の巣はどこにもないんだ。だからぼくたちを離してよ。ごとごとはいいました。がぼがぼ、ぼくはおまえたちがだーい嫌い。いいか、がぼがぼ、ぼくはきみたちが蜘蛛の巣をぼくにくれるまで許してあげない。

えーんえん。えーんえん。がぼがぼの目から流れる川はヘビさんになり、わにさんになり、しまいにはぐるぐるまきのりゅうさんになりました。がぼがぼはいいました。えーんえん。ぼくの大切な蜘蛛の巣がなくなっちゃった。蜘蛛の巣が聞こえないよう。えーんえん。えーんえん。

とうがらしはごとごとに言いました。ごとごと、おまえはもうひとりぼっちじゃないぞ。ぼくがいる。ごとごとはとうがらしを食べました。辛い辛いとうがらし。ごとごとはいいました。ぼくはもうひとりぼっちじゃないぞ。ぼくにはとうがらしがいるんだ。ごとごとの体はおおきなたつまきなり、がぼがぼたちをつれて行ったとさ。

おしまい。




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