【黒木啓司さん芸能界引退に寄せて:③】7年越しに描かれた完璧な前日譚【HiGH&LOW】
こちらは連続記事の3番目となります。
3. 2018-2022 〜そこに彼がいなくても〜
FM公開から時間が過ぎ、新規作品にROCKYが出なくなってからも、何かがある度に彼のことに思いを馳せては、それを言語化して繋ぎ止めておきたい、フォロワーと共有したい、という気持ちを抑えられずに、不定期に衝動に駆られたツイートを続けてきました。しょーもないものも多いですが……。
全く意図してないと思うんだけど、日清によって「剣呑な雰囲気のROCKY」とか「笑顔のかわいいコブラ」とか、我々がもう新規供給はないだろうと諦めていたものがもたらされたの、ヤバい。なんか熱い。
— 灰色 (@mtkflying) July 2, 2018
EOSの頃のツイートが見つからくてアレなんですが、自分の「拳の損傷=精神的ダメージ」説で思い浮かべた場面としては1話のノボルの喧嘩、ノボルの報復、座敷牢の日向、EOSのROCKYの傷とバンダナ、村山vs轟とROCKYvs蘭丸の拳激突の対比(前者は互角なので無傷)などがありまして
— 灰色 (@mtkflying) August 26, 2018
あと今追加で浮かんだのが、心が折れた場面での「もう拳じゃ解決できねえ」です
— 灰色 (@mtkflying) August 26, 2018
ROCKYのことだから薬に溺れた女も散々見てきたんだろうな...
— 灰色 (@mtkflying) September 21, 2018
新生HEAVENのオープン直前にKOOさんが血相変えて呼びに来たのでROCKYが急いで行ったらキャストとラスカルズ総出のサプライズで、ピカピカの店で1日だけROCKYが主役のパーティーをやってあげる回(白爆がライブやってROCKYが嬉しそうに「ヘタクソが......」とか言う)
— 灰色 (@mtkflying) May 11, 2019
EOSではSWORDの中でも一番大人として描かれてきたROCKYが、「大人サイドで一番子供」な鏡写しの存在とも言える蘭丸と決着を付けることで彼なりの青春の終わり=END OF SKYが描かれる。一方、たとえ命を奪えてもスモーキーの前でカインは激昂する子供のままだったように見える。
— 灰色 (@mtkflying) June 24, 2019
無表情なフリをしても手癖とかに出ちゃうコブラ、グラサンを取らされるROCKY、相手の手がババに伸びると「それでいいの?マジで?大丈夫後悔しない?えー」とか言っちゃう村山さん、カードを引く前にスモ問答を始めようとするスモーキー、負けるとふてくされるけど勝つと結構喜ぶ日向
— 灰色 (@mtkflying) August 13, 2019
一方で「何物にも染まらない生き方としての白を貫く」ことを表明したROCKYもメチャクチャかっこいい
— 灰色 (@mtkflying) August 15, 2019
組織自体の目指すところもバラバラだし、たとえばラスカルズなんかROCKYの究極の目標は女たちが傷つかず幸せに生きていけるようになること=ラスカルズが無くなることって言ってもいいんじゃないかな?
— 灰色 (@mtkflying) August 18, 2019
ROCKYはドラマの時点で向かう道を決めていたけれど、蘭丸という自分の写し鏡のような宿敵とのタイマンを経て、自分一人で立つだけではない強さを得て、素の自分で「疲れた」って言えるようになって大人になったんだと思う。
— 灰色 (@mtkflying) October 4, 2019
村山さんたちが大人になったことで今までは意識してなかった他の面々の大人としての顔に気がつくのめっちゃいいな......きっかけが想像つかないけどROCKYに仕事の話とかしたら社会人の大先輩としてアドバイスくれるかもしれないしね
— 灰色 (@mtkflying) October 19, 2019
FMの共闘の後でROCKYと村山さんは画面の外で拳をぶつけて労いあったと思ってるので......
— 灰色 (@mtkflying) October 19, 2019
「えってかROCKYってさ、もしかしてラスカルちゃんとか女の子にお給料払ったりとかしてんの?」「当たり前だろうが、じゃなきゃ俺を何だと思ってたんだテメェは......」「えっすご、社長さんじゃん!社長、俺にもなんか仕事ないっすか!」「敬語が使えねえやつはキャストにはできねえよ......」
— 灰色 (@mtkflying) October 19, 2019
「ヘブン新店の家賃超高そう。やっぱROCKYはすごい」「今回と毛色を変えて格の高いキャラ同士で本筋を進めるならジェシーvsICEかもしれない」「雨宮兄弟の収入は最強で最高」「1年生時点の轟が同い年では最強かと思ったが、高校生でゼロレンジコンバットをマスターしてた尊龍は遥か上」などの話をした
— 灰色 (@mtkflying) October 19, 2019
ハイロー世界で「ついてくる者に夢(理想)を見させる」っていうのはすごく格の高い頭の資質なんだよね。轟や村山さんは勿論ROCKYやスモーキー、後を継いだタケシもきっとそう。始まりは龍也さんで、琥珀さんも九十九さん達にとっては同じ。ICEも、日向も、蘭丸さえもそうだったと思う。
— 灰色 (@mtkflying) October 20, 2019
数も、強さも、やり方の正しさすらもここでは問題でなくて、神輿の上に立つ人間が、どれ程担ぎ手を魅せられるか、本気で担ごうと思わせるか、っていう話だと考えてる
— 灰色 (@mtkflying) October 20, 2019
SWORDの頭で身体をガチガチに鍛えてそうランキング、コブラちゃんを抑えてROCKYが脳内1位
— 灰色 (@mtkflying) October 23, 2019
SWORDでもROCKYは最初から大人だったんだな、って話をたまに見るので個人的解釈を書くと、彼は歪な形で「大人になるのを強いられた」子供だったと思う。誰にも頼れず「強くなる」ことを決意して、子供らしいことは何もできず、何が正しいかも誰にも教わらないまま大人にならないと生きられなかった子供
— 灰色 (@mtkflying) October 27, 2019
ROCKYがコブラの手を取った瞬間が彼が大人になった本当のターニングポイントだと思っている
— 灰色 (@mtkflying) November 6, 2019
夕陽に照らされながら決着するROCKYと蘭丸、正しく神話の一場面なんだよな
— 灰色 (@mtkflying) November 13, 2019
こないだザベでも確認したけど、蘭丸の拳を砕いたときに血が流れるのは破壊された拳を振るったROCKYの方で、それでも彼は止まらないんですよね。コブラたちSWORD協定の仲間が集まってきて以降、ROCKYが心の痛みを完全に克服したって描写だと思っています
— 灰色 (@mtkflying) December 1, 2019
Party People = ROCKYのParty Timeの掛け声とともに女を執拗に悲しませる奴は許さねえという思いで一つになる人々のこと
— 灰色 (@mtkflying) March 20, 2020
蘭丸にやられたのか聞かれたときのROCKY、得体の知れない強い連中が敵についたことをコブラが知れば絶対に放っておかないってことを理解してたからこそはぐらかすんだけど、ラスカルズだけじゃ勝ち目が限りなく薄いことも悟ってたんだろうな。だから目を逸らしたり声が少し震えたりしたんだろう
— 灰色 (@mtkflying) April 11, 2020
EOS久々に見るとBreak into the Darkをバックに現れたROCKYが杖に寄りかかっているように見えるところで泣いてしまう
— 灰色 (@mtkflying) August 14, 2020
閉店したヘブンでコブラちゃんの再びの申し出を断るROCKYも見ててつらくて泣いてしまうな……
— 灰色 (@mtkflying) August 14, 2020
物量で負けるのが間違いないのに黒白堂で正面からぶつかったROCKYと、なりふり構わない反撃に出ようとして邪道の戦いを選んだ結果惨敗したコブラのこと考えてた
— 灰色 (@mtkflying) September 30, 2020
黒白堂開戦前の「お前は女のことを何も分かってねえ」、ROCKY自身も決して自分が女のことを誰よりも分かってるなんてつもりはなくて、彼は彼であの日自分を置いていった母と姉のことを「何も分かってなかった」のがずっと心に残ってるんだろうな
— 灰色 (@mtkflying) October 17, 2020
蘭丸が母親に無理心中を迫られた挙句一人遺されたなんて境遇は知らなくとも、目の前の怪物と自分を隔てるのが紙一重の差でしかないこと、蘭丸がもう一人の自分に等しいことをROCKYは本能的に理解していて、だからこそ自分自身の手でケリをつけることにこだわったのだろう
— 灰色 (@mtkflying) October 17, 2020
悪辣な攻撃の最中に舌を出したり、かと思いきやROCKYが倒れかけた途端つまらなさそうにしたりと、蘭丸の幼い精神にとっては女だけでなく全ての人間、目の前の喧嘩相手さえもが道具や玩具に過ぎなかったんだろう。それが何度も立ち上がる彼を見て、初めて「人間」と向き合っていることを認識し、怖れた
— 灰色 (@mtkflying) October 17, 2020
DTCでベイビーズと女の子たちに慰安旅行プレゼントするROCKY、ザワで深夜に電話出てくれるコブラちゃん、最高なんだよな
— 灰色 (@mtkflying) November 13, 2020
黒木啓司がもう金髪つらいことがROCKYの再登場が難しいと見られてる要因の一つに挙げられるけど、「施設の子供たちが怖がる」ってことにすれば黒髪で登場できるんじゃないでしょうか
— 灰色 (@mtkflying) December 28, 2020
ハイローにおいて拳とは精神の象徴であり、拳が傷つくということは魂にダメージを負っているということであり、ROCKYが砕けた拳に山王バンダナを巻くのは折れた心にSWORDの絆をまとって心を再度武装する意味があった、みたいな話を熱燗を飲みながらしていました
— 灰色 (@mtkflying) December 27, 2021
「自分の中の轟と違和感がある」「エキストラ上がりの自分たちがEXILEのかませ犬で終わりたくない」「最強の男は一番弱さも抱えていると思い、ノート一冊以上解釈を練った」「ここまで格好良かったROCKYの泥臭くもがく姿を見せたい」「コブラはそんなこと言わない」「日向は避けない」etc……
— 灰色 (@mtkflying) March 28, 2022
いやー、何もないときも騒ぐ騒ぐ。この頃になると、リプライツリーを用いて作品全体を振り返りながら語ることが増えたので、別のキャラクターの話も多くなっているのはご容赦ください。
でも、たとえばDTCザ湯でSMGとキャストが慰安旅行の休暇をもらったと言及していたように、あるいはその後リスペクトしたシーンが見られたように、たとえそこにいなくとも言及されるだけで想像が膨らむのがROCKYという男でした。これはザワで村山さんがコブラちゃんに電話するシーンにも通じます。それほどまでに、彼らSWORD第一世代は特別で、存在感の強いキャラクターたちでした。
さて、2019年以降のシリーズ展開はというと、新たなキャストを中心に据えた鬼邪高全日生のスピンオフであるザワシリーズにシフトしていきます。新作公開のたび、折に触れて「頭という存在」や「子供と大人」などを考えることもあり、その度にROCKYの存在は頭をよぎりますが、一方で今後は世代交代と「子供の喧嘩」へのフォーカスが進み、ROCKYを含むSWORD第一世代の物語を観ることはもうできない……とずっと思っていました。そこに突然、思いもよらない方向から彗星のごとく、それはもたらされました。
4. 宝塚歌劇『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』の衝撃、そして再び輝きを放つSWORDサーガ
そう、「ヅカロー」です。以前の記事でも触れましたが、ドラマS1の放送時から数えて実に7年後に描かれた過去の物語は、「コブラの悲恋」「空白の時期」という衝撃的な情報を受けて期待と不安の入り混じったこちらの予想を遥かに上回りました。
誰もが見たかった、知りたかった、夢見ていた、けれど諦めていた「SWORDの前日譚」を、溢れんばかりの愛と最高の解像度を持って描ききることを完遂してくれました。
単体作品としての出来も白眉ながら、ハイローのディープなファンにとっては、さらに嬉しいことがありました。ヅカローによって、もはや掘り尽くされた鉱脈だと思っていたドラマ〜FMまでの第一世代の物語に新たな切り口、文脈、背景が描き込まれ、余白が彩られたことで、「もう一周」の楽しみが生まれたのです。
その中でも自分が最も胸を打たれた、「『ムゲン』概念の再定義」という話は、別の記事で詳しく触れております。
その他は初見後の衝動に任せて殴り書いており、また一回しか観られていないためにディテールへの解像度はとても粗いのですが、一応ヒートアップしたツイート群も載せておきます。
メモ……苦邪組七姉妹の生き残りが女アサシンギルドを結成した可能性、S&Bs、コブラとROCKYのタッグマッチは蘭丸戦と逆の組み合わせ(1vs1、1vs多)、仮面舞踏会は顔を隠すような訳ありの女性を見つけ出して安全なheavenにスカウトする場、開店パーティのカップル参加にロクでもない男がいたら許さない
— 灰色 (@mtkflying) September 26, 2022
それがああいうことになって、彼の中では大規模抗争=誰かを失う、という考えが支配的になったのではと考えます。しかもそれと並行して、ROCKYはHEAVENを本当に女たちにとって安全な場所にするように、スモーキーは他所の誰を犠牲にしても家族を守るように、という変化があった。
— 灰色 (@mtkflying) October 12, 2022
ROCKYなんかは、ヅカローEDから繋がるとヘブンをとにかく堅牢にして安全な女のための楽園(かつ駆け込み寺)にしたかったんですよね、多分。で、ダウトの存在もあってその思いが強まった結果、一つたりともトラブルは許さないとなって、S1の凶行になる。ヅカの事件を経て変わったのはコブラだけじゃない
— 灰色 (@mtkflying) October 12, 2022
そうして第九がどうのこうのいう、所謂イトカン破壊事件が起きるわけですけど、それに目を瞑れば、コブラちゃんの中ではやっぱりROCKYは(S1を経
— 灰色 (@mtkflying) October 12, 2022
村山さんとは別枠で)頭の中でも格別に頼れる相手だったのかな、と。だからこそEOSに繋がるし、ROCKYが「ハナから腹括ってる」ことが分かる。
※中盤の脱字、正確には「S1を経ての」です。
あとザワクロス後にヅカローでのROCKYの掘り下げを見たことで、最近は蘭丸のことが頭から離れない 蘭丸が獄中にいるうちにHEAVENを完成させて繁華街をシマとして基盤固めて、一人でも多くの女性を救って守れるようにしておきたかったんだろうなとか
— 灰色 (@mtkflying) October 22, 2022
ただROCKYとKOOさんはS1のやらかしがムゲンに面白いのがノイズなんだよなあ……いや、あれがオリジナルらしいんですけど……
— 灰色 (@mtkflying) October 22, 2022
よーーーうやく、執筆している本日までのROCKYツイートの発掘と掲載を終えられました。
改めまして、ヅカローの話です。今回は宝塚歌劇ということもあってか、またメインがコブラとカナの愛を軸にしていることもあってか、女を守ることを誓う誘惑の白き悪魔・White RascalsのLeaderであるROCKYは、もう一人の主役と言ってもいい程に破格の存在感を放ちます。
そろそろ言及しておかないといけないですが、ITOKAN襲撃事件やDOUBTの高野がヘブンに来てるのに気付かない事件といったS1の面白描写(前者はシーン自体はかなり狂ってて怖いですが)との整合性はいよいよ取れなくなってきたものの、そこはカッコいいROCKYを語りつくすということで、今回は完全無視して進めましょう。擦り続けるのも愉快ですが……。
ヅカローについては、どうしてもその性質上観客数とその機会が映像作品に比べて非常に限られており、まだ未視聴(ライビュ待ち)の方もいらっしゃると思います。よって大筋のネタバレは省略いたしますが、本作でのROCKYはビジュアルも振る舞いも歌唱も、とにかく何もかもが完璧に作り込まれ、我々の知っているあのROCKYが舞台の上にいました。
もちろん、宝塚ならではの解釈を盛り込んだり、役者の個性とのすり合わせの中で調整していくという方法も間違いなく素晴らしいのですが、ことROCKYというキャラクターに関しては、徹底的に原作のキャラクター像を貫くという方法がバッチリとハマっていたように感じます。さらに言えば、彼にとって欠かすことのできない側近のKOOまでもが、「実写版」と謎の言葉で称えられたほどに完璧な再現度。この2人のシーンは本当に、原作からカットされたと言われても違和感のないほど「あの2人」でした。
ラスカルズは結成当初からの強固な信念として、「女を守る」ことを掲げ、ROCKYはその統率者としてそのために殉じることすら厭わないほどの決意と覚悟を最初から決めている人間です。その特異さが、ビジュアル・脚本・演技全てで完璧に表されており、自分はそれだけでも胸が一杯になりました。
また、あえて自分のことを「私」と呼ぶ劇中歌も、とても印象的でした。ヘブンという女たちの聖域を築く決意と覚悟を一層強め、その重みを己に課す歌。「私」という一人称は、ROCKYという個人を超えた存在の名乗り口上であり、その心身に神性を宿らせ、守護者としての使命を貫く宣言を、自らに強く言い聞かせているかのように響き渡ります。そんな素晴らしい宝塚版ROCKYは、エピローグに至るまで、PREQUELを白く彩ってくれました。
さらには、その後に新時代の勢力圏を各々確立させることになるSWORDの頭たちの中でも、コブラとROCKYだけは劇中で背中を預け合って共闘します。ツイートでも触れた通り、まさにEOSでコブラが救援に来た場面を彷彿とさせるシーンです。(例のITOKAN破壊事件はあったものの)その後のドラマでのミホの件や、EOSで何度もヘブンを訪れ、DOUBTとの決戦への助力を申し出るシーンに至るまでの行動で見られる通り、コブラにとってのROCKYはSWORDの頭で唯一「いざというときに頼れる男」だという印象があったのかもしれません。加えて特に義理堅いコブラのことですから、ヅカローでの恩義があるからこそ助力を何度突っぱねられてもなお、「立てなくなったらいつでも呼べよ」という言葉が自然と出たのでしょう。
このように、ヅカローから過去作品のROCKYを振り返るだけでも、また何周でもシリーズ全作を通し視聴したくなってきます。ここまででも既に、彼が最高の男であること、それに俺がどこまでも魅せられ続けてきたことはご理解いただけたかと思いますが、あえて今回はもう一歩踏み込み、ROCKYを語る上でどうしても外せない最後のピースに、今だからこそ触れたいと思います。
それは無論、DOUBTの頭にして最凶最悪の男、蘭丸です。次の記事では、彼について見ていきましょう。