【黒木啓司さん芸能界引退に寄せて:④】ROCKY最大の宿敵、蘭丸【HiGH&LOW】
こちらは連続記事の4番目となります。今回は第1章最終段として、蘭丸についてのツイートを発掘すると共に、彼のキャラクター性を再確認してみましょう。
5. 悪のカリスマ・蘭丸〜あるいは邪悪だけに愛された子供〜
まずはこれまで抽出した中に入っていなかった、蘭丸関係のツイートをいくつか掘り出してみましょう。最初の方はEOS公開前で、速報記事や予告への反応ですね。
蘭丸って多分ハイローで初めての「真っ向から戦う、大人じゃない明確な敵」だよね。日向会は大人の手先って面が強くてキャラもあんまり描かれなかったし、李や家村会は今のところ面と向かって戦ってはないし、上園会は明確な「一線を超えた大人との戦い」だったし
— 灰色 (@mtkflying) August 8, 2017
蘭丸の描かれ方としては若者の狂気と大人の残虐さを併せ持ったキャラクターになるのかな。楽しみです
— 灰色 (@mtkflying) August 8, 2017
蘭丸は出所して真っ先に達磨の本拠地に行って、お前本当に日向か?とか言いながらも改めて下につけじゃなく「俺と組め」って持ちかけて、駅に日向が現れたときも少しだけ声のトーンが高くなるんだよね...
— 灰色 (@mtkflying) August 26, 2017
切り捨てられた記憶がある日向だから蘭丸には付かなかったし、仲間との絆を一際強く感じさせる村山に動かされたんだと思うと燃える。悪邪高のガキもいつの間にか言うようになったじゃねえか、的な。村山さんのが年上の可能性とかいう話は今やめてください
— 灰色 (@mtkflying) August 26, 2017
ラストの蘭丸への仕打ちを見てる日向、あの場で一番「九龍のやり方」を知ってる人間だからか一段と冷めた目で睨んでるのよね
— 灰色 (@mtkflying) September 5, 2017
EOS三大新登場敵ボスキャラ(長い)の源治、蘭丸、ジェシーは全員が違う形をした子供なんじゃないか、という説をここで唱えてみる
— 灰色 (@mtkflying) September 5, 2017
ハイロー自体が子供vs大人の世界の物語というのはよく言われるんだけど、この3人は大人に歪められた子供な気がする。蘭丸は母に殺されかけて置いて行かれた赤子、源治は外道だろうと父のためだけに生きる生真面目な少年、ジェシーは友達と違う場所に進んでしまった不良
— 灰色 (@mtkflying) September 5, 2017
「...ダメだ」って言うところですね。蘭丸側の援軍の存在を伝えたら事の規模がダウトvsラスカルズを超えてるってことをコブラが理解して有無を言わせず助太刀すると分かってたからこその拒絶
— 灰色 (@mtkflying) September 10, 2017
ハイロー、「狂気的」って公式で言われてるキャラは多いんだけど、かつてバーサーカーだった村山と日向は成長・変化を明確に見せてるし、蘭丸はそのバックグラウンドを語らずとも垣間見せるし、逆にジェシーは「狂っている自分を自覚していて、今更仲間の古巣には戻れない」みたいなキャラだしで皆最高
— 灰色 (@mtkflying) September 15, 2017
忘れないうちにツイートしたいのがもう少しだけ。エンドオブスカイは「青春の終わり」って何かで語られてたんだけど、個人的には「子供たちの闘いの終わり」だとも思っていて、SWORDは勿論蘭丸、ジェシー、源治でさえもどこか「子供」サイドの色を残しているキャラクターなんですよね
— 灰色 (@mtkflying) August 26, 2018
キドラの弱さを思うに、ダウトの幹部たちは本当に有能だったんだな。援助込みとはいえあんだけの頭数揃えてSWORD連合軍と真っ向からやったのも凄ければ、一回負けてるのに蘭丸出所後にレベルアップして数また揃えて再戦したのも相当凄い。蘭丸、最終的に九龍食おうとしてたし。
— 灰色 (@mtkflying) October 6, 2019
ダウトのバックが善信だったのかは分からないけど、だとしたら蘭丸はさぞ無念だったろうな......
— 灰色 (@mtkflying) October 6, 2019
いい女発見さん、蘭丸収監前からいたの!!?歴戦の勇士じゃん......
— 灰色 (@mtkflying) October 14, 2019
日向が出てきたあたりの蘭丸、切ないんだよな
— 灰色 (@mtkflying) November 13, 2019
蘭丸のコインゲーム、実際ダウトを5分の1以下まで選別したというよりは闘争心を高める効果があったんだろうなと解釈してる
— 灰色 (@mtkflying) April 11, 2020
ダウトモブ、無限湧き戦闘員概念だから多分気にしちゃいけないんだけど、コンテナ街であそこまでボロカスにやられたのに黒白堂でまたそれに近い人数が集まるの普通に根性がすごいよね。途中コインゲームとかやらされてるし。それだけ勝算を感じさせる蘭丸のカリスマがすごいのだろう
— 灰色 (@mtkflying) August 29, 2020
ある種無邪気な子供(無邪気というには語弊があるが)なんですよね、蘭丸。それが最後には、邪悪な大人によって彼が今までしてきた以上の理不尽な暴力を受けることに。蘭丸と違って善信には「人間を踏みにじる」というハッキリとした意思があるし、かつそれをアイスの棒を捨てるごとく容易くやってのける
— 灰色 (@mtkflying) October 17, 2020
ザム5で何かの間違いが起こればあるかもしれないシーン……善信会長がバルジの計画が完了するまで少人数で地下に潜伏していたところ、突然外の見張りと共にアジトのドアが吹っ飛ばされて平井と高野が殴り込み、更にその奥の暗闇から顔半分に包帯を巻いた蘭丸が報復に現れる(BGM:蘭丸のテーマ)
— 灰色 (@mtkflying) September 7, 2022
これでとりあえず検索できた分は全部です。一部順番がおかしいところや重複しているものについては何卒ご容赦ください。
蘭丸というキャラクターは単体でも記事が書けるくらい大好きで、特に最近ザワクロスを観てからは一層、その悪役としての強度が際立って思い出されるようになりました。
本筋とは逸れますが、率直に少しだけ言及しますと、自分は高校生青春喧嘩甲子園テイストになった最新作よりも、子供と大人の狭間で足掻き、残酷な現実を乗り越えて生きようとする男たちの、ダークな中にも光の差す物語、あるいはその戦いの先を描いたザワ(における村山さん卒業と轟の羽化)までが、個人的には好みのテイストでした。
そのためか、どうしても最新作の初見時からずっと、金をばら撒くシーンとか兵隊を集めるシーンのたびに蘭丸が脳裏に蘇って離れません。
蘭丸。「他人が躊躇するラインを簡単に越える」とROCKYが語った通り、その狂気と凶暴性は常軌を逸していました。しかし、彼の邪悪としての才覚は、そうした精神面の異常性だけに留まりません。
まずはそのカリスマと策士ぶりです。一度は500人以上を動員してもSWORD連合軍に大敗した平井・高野とDOUBTの大群を、出所日に当然のごとく従えます。誰もが、蘭丸を頭として即日再起することを当然と考え、準備を整えていたのでしょう。
そしてほぼ間を置かず、ラスカルズを少数ずつ襲撃しては半殺しにしていくと、境界線など不要だと宣戦布告しました。しかも、その後もただ無策に数で押そうとするのではなく、「DOUBTに弱い奴はいらねえ」と言い放ち、コイン争奪ゲームによって有象無象の群れを20%以下の精兵に絞るという命令を下し、あまつさえ側近の幹部であるはずの平井と高野までもその蠱毒の中に蹴り落とします。
これは解釈次第ですが、実際のところコインを5枚集めた者だけが黒白堂の決戦に向かえたというよりは、金目当てで数だけ多い寄せ集めであり、士気にムラや弛みがあったDOUBTのチームとしての弱さを、飢えた野獣同士が狭い檻の中で喰い合うような環境に叩き込むことで、絶対的な恐怖で支配すると共に否応なく軍隊として成立させたのだと思われます。もちろんゲームに敗れてダウンしてしまった者は別ですが、そうでないといくらなんでもDOUBTの総数&残党多すぎないか?という気もしますし。
ただ、もしかしたら本当に、例のいい女発見さんのような精鋭中の精鋭だけが決戦に向かったのかもしれません。その場合、DOUBTといえどモブ同士の戦闘力はSWORDのチームにも劣らないほどだったでしょう。
彼の用意周到ぶりはこれだけに留まりません。ただでさえ数で圧倒的に勝っているところに、一騎当千のプリズンギャングをも金を惜しまずに投入。たとえジェシーが手土産がわりにROCKYを倒してきたといえど、その手は緩みません。仕上げにコンテナ街の頃とは別格の強軍と化した兵隊に檄を飛ばし、その終着点を知らない暴力と狂気を隅々まで伝播させて、決戦に向かいます。
そう、蘭丸の恐ろしさは狂気だけではないのです。決してハイロー世界で正当化されるものではないとしても、彼は「兵を率いる頭」あるいは将としての天性のカリスマと知能に恵まれており、それらと人外の凶暴性が矛盾なく同居しているのです。
そして極めつけに、個人の喧嘩の実力(暴力性)も文句のつけようがありません。おそらくトレーニングの類とは無縁であるにも関わらず、身体が弱っているはずの出所早々にネームドキャラの首根っこを軽々と片手で持ち上げる怪力は、はるか後に登場するラオウにも迫る描写です。ジェシー戦のダメージがあった可能性も高いとはいえ、SWORDの頭でも最も体格に優れたROCKYを正面から押しまくります。
その天賦の剛腕は、正面から敵を拳で倒すのではなく、強引に抑えつけて制圧するときに最も発揮されます。そして相手を力づくで捩じ伏せた次の瞬間には、彼はどこからでも即座に凶器を見つけ、子供が安物の玩具を振り回すかのごとく楽しみながら、容易に人体を破壊していきます。
凶器を使うシーンが印象的な蘭丸ですが、しかし彼は元から銃器や刃物を持ち歩いているわけではありません。蘭丸にとって、黒白堂のような廃墟は最高の遊び場であり、幼児が公園に落ちているボールや木の枝を振り回すかのように、その時々に周囲を眺めて楽しそうなものがあれば思い切り振り回し、玩具か相手が壊れるまで遊び続けます。
そう、蘭丸にとって「喧嘩」という概念は存在しないのです。対等の相手というものはこの世におらず、過去に自分を抑えつけようと殺到した警官も、遊びの邪魔をする不快な大人に過ぎなかったのでしょう。彼はこの上なく凶暴で狂気に満ち溢れていますが、決して正気を失った狂人ではなく、また九龍のような暴力のプロフェッショナルでもありません。ただ異常に力が強く、頭が良く、精神が未成熟で、それでいて周囲の悪を寄せ集めて夢に酔わせるような魔性の魅力を生まれつき備えた……まさに、邪悪に愛された天才なのです。
そんな蘭丸ですから、ROCKYとの格闘の最中にあっても異常なほどにコロコロと表情が変わります。ROCKYが蘭丸に狙いを定めて決着をつけようとしたのはその使命感からですが、蘭丸がROCKYに執着するのは本能的に感じ取った一番楽しめそうな遊び相手……あるいは最も遊びがいのある玩具そのものに見えたからでしょう。
相手が嫌がれば楽しい、痛がれば気持ちいい。けれど、プリズンギャングが横入りして痛めつけたときのように、横取りされるとつまらない。その挙句、相手が壊れかけたら急激に飽きてしまう。それだけのことなのです。
悪のカリスマと称される蘭丸の本質について自分なりの解釈を語ったところで、少し彼のバックグラウンドについても触れましょう。劇中で描写されることはありませんが、公開時のインタビューなどで演者である中村蒼から、「蘭丸は幼い頃に母親の無理心中に巻き込まれつつも、自分だけ生き残ってしまった」という裏設定が明かされました。
そのことで彼は、女性……さらには自分以外の生命に対する共感性や感傷を、一切育むことができないままに肉体と知能だけが大人になってしまったのだと考えるのが、最も自然な解釈でしょうか。
劇中に聖母の絵に血塗れのナイフを投げつけ、不気味なオルゴール音のような彼のテーマ曲と共に炎上させる演出がありますが、それこそが彼の過去に起きた事象の暗喩であるのかもしれません。
と、あまりに好きすぎて蘭丸の語りが止まらなくなってしまいましたが、彼個人の考察と過去ツイートの引用はこれくらいにしましょう。さて、ようやくTweetの発掘作業が完結しましたので、これにて第1章を終えます。ここから先、⑤以降の記事では、第2章〜として今現在の自分が作品を振り返っての考察、解釈、思い、そしてその先について綴っていきましょう。まずは次回、ROCKYと蘭丸それぞれのキャラクターを改めて比較していきます。それでは。