3/26Finallyバンド編成ワンマンLIVE『Next, Attract, Peace』レポ【まいにちFinally・day45】
こんにちは!!灰色です。
引き続き、燃え尽き症候群&書きものスランプにもがいている今日この頃です。
が、そんな前置きは省略しましょう。いい加減にずっと積んでいた宿題と向き合わなくてはなりません。
3/26のFinallyバンド編成ワンマンLIVE、「Next, Attract, Piece」(以下、「NAP」)のレポートでございます。
速報と称した殴り書きのメモだけは当日のうちにアップしたのですが、その後にはアイドル界最高のレポーターとして尊敬するかっつさんが素晴らしく充実した記事を書いてくださいました。
この人をお誘いできてよかった、それだけで私がいた甲斐はあった……と心底感じるほどの内容に加え、Finallyの記事を自分以外が書いてくれたことの嬉しさも相まって、ひたすら感動しきりです。何より、初見にしてあそこまで書けるというのは、氏の慧眼と分析力のなせる技としか言えません。
一方、ほぼ一年越しの大目標であったバンドワンマンを成功させたFinallyは、なおも立ち止まることを知りません。
詳細は省きますが、ワンマン夜の部では6/10の第1回定期公演「ファイナライブ」、そして7/17の2周年公演を発表。さらには大型フェスへの出演や、各種対バンでOAを務める情報なども、立て続けに日々解禁されています。
全体として、対バンの出演数自体は一時期に比べると控えめになるものの、フェスをはじめとしてイベントの一つ一つが大規模であったり、あるいはOAとして知名度の高いグループやロックバンドの先陣を切ったりと、明らかにステージが一つ上がった印象を受けます。
ちったあ休めよFinally!という感じなのですが、彼女たちの活動がさらにヒートアップするというならば、こちらも悠長に構えている場合ではありません。
ということで、まずは今一度あの日のLIVEを振り返り、伝説の記録を残すことにした次第です。
ただし、率直に言ってあのバンドワンマンの熱量と情報量は異常すぎました。普段からFinallyを見慣れているつもりの私にとっても、何もかもが異次元。しかもそれが二部続いた上、極めつけにセトリの構成をはじめとした相違点も山ほどありました。
よって、恐縮ながら細かな点や情報面については正確性を欠くことをご容赦ください。
代わりに今回は、普段以上に歌詞とストーリー性にフォーカスしていきます。必然的に、この日に至るまでの私の思い入れと熱を全投入した、実に長くて暑苦しくて芝居がかったものになるでしょう。
先述したかっつさんのレポートは「初見から見たFinally」「俯瞰的な分析」という点において最高のクオリティですので、是非併せてお読みいただければ幸いです。
というか、氏のものだけでもイベントレポとしては十分すぎるほど事足りますので、この記事は物好きな方だけお読みください。この物言いもいつも通りではありますが……。
では、本編に参りましょう。基本的には第一部のセトリに準じて本編を追っていく形でお送りしますが、一部順番を入れ替えているところもございます。また、楽曲別のレポの後にはメンバーごとにこの日特に印象に残った点を書き添えました。
なお、今回は文章の都合上メンバー全員を敬称愛称省略で記載しております。その点悪しからずご了承ください。
セットリスト
開幕ーーBelieving
あいにくの悪天候にも関わらず、後方まで観客で埋まった新宿BLAZE。早くも室温ごとボルテージが上がっていた会場へ、この日のためだけに作られた特別なOPが鳴り響きます。
今回制作してくれたのは宮田"レフティ"リョウ氏。Finallyはdate fmにて氏の番組に出演したことをきっかけに、昨年12月仙台RENSAで開催した対バンイベント「ON SITE SESSION vol.1」でOAを務めています。NAPのOP SEは、そのラジオ出演時にFinally側が直談判し、レフティ氏が快諾してくれたことで生まれました。
4組の邦楽ロックバンドから招かれた豪華メンバーがサポートする今回のLIVEで、ロック界隈との本格的な交流のきっかけを作ったとも言えるレフティ氏が開幕の演出を彩るというのは、まさにFinallyならではのスタートです。静かながらも壮大さを感じるイントロから一気に熱を帯びていくサウンドにより、本当にこの日が来たのだという実感がようやく湧いてきました。
普段と同じポーズながら、堂々たる風格をまとって並び立った6人。Aoiは「内臓飛び出そうだった」と言っていましたが、私の目からはとてもそうは見えませんでした。
そして一曲目は……なんとBelieving!何曲か候補として予想していた曲はあったのですが、これは完全に予想外のセレクトでした。
しかし、振り返るとこの曲こそ0326のスタートに相応しかったとも思えます。その理由の一つがイントロです。BelievingはFinallyが毎回のLIVE終わりで挨拶するときに流れる曲でもあるため(歌はありませんが)、イントロだけならばLIVE皆勤賞でもあるのです。
つまり、Fimillyにとっては最も聴き慣れた曲と言っても差し支えないでしょう。
そのおなじみのメロディを、この日だけのバンドが演奏する。
いつものFinallyだけれど、いつものFinallyとは違う。そんな絶妙な演出でした。
もちろん、Believingといえばサビの連続コーラスとジャンプも忘れてはいけません。最初から観客も強制フルパワー。スロースタートなんて眠たい言葉はFinallyの辞書にありません。
加速ーー走れ
連続配信シリーズは中盤にまとめてくると勝手に予想していたのですが、早くも2曲目で流れるとは!かなり驚きました。第二部では6曲目に選出。ラブミー→愛迷と暁の間という絶妙なポジションです。
ミュージックカードの発売から数えきれないほど聴いてきた曲で、振りの楽しさから短期間にLIVEで観る機会も多かった分、生バンドによるパワーアップがハッキリと感じられます。
特に走れで圧倒されたのは、KEYTALK八木氏のドラムです。武道館終了直後というスケジュールで、どうやってこのクオリティに仕上げてきたのか……開始早々、このLIVEの成功を確信しました。
パフォーマンス面では、気合いの入ったダンスはもちろんのこと、作詞したRinkaの落ちサビが言葉を失うほどの説得力でした。今回私は後方にいたのですが、普段下手側からステージを見る際には膝をついて待機しているときから彼女が全神経を集中させているのを見ることができます。
彼女の集中力の凄まじさは走れに限ったことではありませんが、この曲で見せた静かなオーラは、もはや不可視の磁場を展開していると感じられたほどです。
こうしたRinkaならではの集中法は、歌っていない間も気持ちを切らさず、自分の番でしっかりと想いを載せられるように考えてのことだと後日語ってくれていました。しかしながら、それをこの大舞台で、さらには疲れも溜まってきたであろう第二部においても貫く姿には、ただただ脱帽です。
笑顔ーーファイター
なんと、3曲目にして連続リリース最後を飾った最新曲が初披露!既に第二部の後半戦のような、ペース配分を全く考えてないんじゃないかという構成です。
初回がいきなりバンド版というデタラメをやってのけたファイター。初見ではとても個々のパートにまで集中できず、ひたすらコーラスと振りコピをしていました。
そう、振りコピ。
Juriは事前の配信でも「サビは任せて、安心して!」と言っていましたが、その意味がやっと分かりました。
なんと、Finally史上初めての左右バンザイ!
シンプルさと楽しさに全振りです。
てっきり拳が絡むと思ったのですが、そちらはサビ終わりのピンポイントに持ってきて、ボクサーを思わせるシャープな締めに。それ以外の主要部では、初見でも絶対に真似できるようひたすら陽気に作ってきました。君エールに近い潔さと爽やかさで、完全に一本取られましたね。
加えて、ファイターのサビには印象的な点がもう一つあります。それは、この振り付けならではのメンバー全員の笑顔です。
全員がノリにノッて、伸ばした両手の先から元気を分けてくれる姿。それを見て、肩の力が入りすぎていた私も自然とピュアな楽しさだけで胸がいっぱいになり、本当の意味でバンドワンマンを満喫する準備ができました。
すげーなあ、ジュリメグ。
変貌ーーLove me for who I am
4曲目はラブミー!2月下旬のリリース後から本格的な0326の準備に入ったこともあり、今日のセトリでもファイターを除けばLIVE披露回数が最も少ない曲です。
そして、ミクスチャー系のトラックのためFinallyとしては異色とも言えるほど原曲にバンド色がないのもラブミーの大きな特徴。セトリ入りはほぼ確実なものの、一番どうなるか分からない曲でもありました。
しかしこれがまた凄まじい完成度!こうして書いていても、日々記憶が薄れていってしまうのが悔しくて仕方ありません。サビ以外はFinallyここにありというほどの超高難度ダンスが続くラブミーは、バンドで武装することによって普段のクラブサウンド色から一旦、ヘビーな音圧と色香を併せ持った楽曲となりました。
そして観客としては、やはり最も盛り上がったのはラストの連続拳振り上げダンスです。ステージ上からの熱波は、観客にも全く息継ぎを許してくれません。通常でもクタクタになるところ、生のビートがこちらの鼓動をもガンガンに早めたため、掛け声も拳も一切手抜きできませんでした。こうして二部の私はラブミーで完全に力尽きることになります。
刹那ーー飽くなきヒーロー
Fimillyでも、この曲をバンドアレンジしてほしいと願っていた人は特に多かったのではないでしょうか。一度聴いたら忘れられないベースのイントロを伴って、5曲目には「飽くヒロ」がカットインしてきました。開幕を告げるAoiの「ワン、ツー!」も、たまらなく楽しそうです。
Finallyの「ガールズロックグループ」としての側面を象徴するかのようなこの曲は、期待以上に生バンドとの相性が完璧でした。フロアのテンションも天井知らずに上昇していきます。
音の強化もさることながら、飽くヒロは歌詞のメッセージも印象的です。
Finallyはいつだって、現実から目を逸らしたり、避けられない終わりをごまかすことはしません。この至高のLIVEも、そしてその先のことさえも、いつか終わりが訪れます。
けれど、それを嫌がって立ち止まったり、悲しみに備えようと心をこわばらせることだけが全てではありません。
終わりがあるからこそ、今が真に価値を持つ。
今このときにある感情を、何よりも大切にする。
終わりが来ることを恐れてばかりいる自分の心を見透かされ、優しく寄り添ってもらったような、そんな気にさせられました。
賞杯ーーWINNERS
6曲目に持ってきたのはWINNERS!連続配信シリーズの中でも特にジャンプやコーラスなどパワーを要する楽曲ですが、Finallyのスタミナは無尽蔵です。おっさんのスタミナは有限ですが……。
WINNERSのトラックで最大の魅力といえば、やはりインパクト抜群のリフでしょう。WINNERSのバンド版は私も特に楽しみにしていた点の一つでしたが、この日限りのダブルギターの音が鮮烈に襲いかかってくるイントロから完全にハートを掴まれました。
高揚感に包まれながらも、「朽ち果てたって咲き続くんだ」というWINNERSの歌詞が胸に響きます。Finallyの前世やデビューからイナズマまでのことを知らない私でも、6人が紆余曲折の末にこの場に立っていることだけは理解できます。長年のファンの方々にとっての重みは言うまでもないでしょう。
それゆえに、WINNERSはサウンドとストーリーの両面でNAPを象徴する曲となりました。
WINNERSの歌詞は、はるかな旅路の結末に「勝ち残る」ことを誓い、「まだまだここから」と闘志を燃やしています。しかしそれだけでなく、NAPの演目として考えたときに私が最も注目したのは引用部です。
Finallyは折に触れて、一回一回のLIVEを二度とないものとして大切にすること、そしてその度に前の自分たちよりも進化することの重要性を語っています。
であれば、「この瞬間」とは彼女たちがステージに立っているその時に他なりません。
そして「賞杯」とは、そんな彼女たちが今ここで観客から受け取る歓声であり、賞賛であり、笑顔です。
掲げた目標、さらにその先にある結末への距離はまだまだ遠く、Finallyが自らを勝者と認める日は今日ではありません。
それでも、この日の LIVEはグループにとっても、ファンにとっても、特別で最高の時間でした。
素晴らしい楽曲たち。
揃うだけでも奇跡のようなバンドメンバー。
BLAZEに集まった大勢の観客。
その全ては、彼女たちの実力と情熱が掴み取ったものです。
たとえ今はまだ夢の途中だとしても、このLIVEそのものもまた、Finallyにとってかけがえのない「賞杯」になったのではないでしょうか。
万感ーー暁
来ると分かっていても、涙ぐまずにはいられませんでした。
7曲目に選ばれたのは暁。事前予想では本編ラストかとも思っていましたが、ちょうど折り返しのタイミングです。多くの曲が並び変わる中、初披露のファイターとこの暁だけが第一部、第二部とも同じ曲順に並びました。
暁ならではの特徴といえば、間奏部での語りです。最年長組のJuriとRinkaはもちろんのことながら、この日はHarunaの言葉と歌がとても胸に残りました。きっとそう感じさせたものは、彼女がこれまでの芸能活動を通じて培ってきた、Haruna というひとの芯そのものなのでしょう。それを感じられること自体が、とても尊いことのようにも思われました。
武道館を目指す想いと、応援してくれるファンへの感謝の気持ちを歌ったこの曲を生で聴くのは、これが昨年のクリスマス以来2回目です。
過去から、さらに言えば前身グループから彼女たちを応援している人たちにとっては、新参風情が何を生意気な、と思われることでしょうが、それを承知で書かせていただきます。
暁を聴くたびに、私が思うことは一つだけ。
ありがとうって言いたいのは、こっちの方だよ。
ここまでたどり着いてくれて、こんなに最高の景色を見せてくれて、最高の音を聴かせてくれて、ありがとう。
これほどのステージも通過点に過ぎない、まだまだこれからだと、そう言ってくれてありがとう。
この日に向けて死に物狂いで頑張らせてくれて、そんな自分のことを少し好きにならせてくれて、ありがとう。
何よりも、たくさんの困難に諦めず6人で活動を続けてくれて、その中で俺とこうして出会ってくれて、本当に本当にありがとう。
将来、武道館でこの曲を聴いたとしても、きっと私は同じことを思います。
激情ーー君に咲いたリナリア①
暁の感傷をそのままに、8曲目はリナリア。Finallyの代表曲であり、彼女たちにとって大きな転機となった作品でもあります。
LIVEで披露されるのもかなり久しぶりだった印象ですが、この日はリナリアもひと味違った!
もともとはFinallyでも特にしっとりと美しいピアノサウンドが特徴でしたが、NAP版では土台はそのままながらもバンドのカラーが炸裂。間奏のギターが強烈で、一気にロックテイストが強まっていました。「これがこうなるのか!」感の強さにおいては、ひときわ印象に残っています。
またバンドだけでなく、メンバー6人も同じように歌唱法をこの日だけの特別なものへと変えていました。特にRinkaが普段以上にフェイクを駆使していたのが印象に残っています。
白い衣装に似合う透明感と切なさが特色だったリナリアですが、この日はバンドもボーカルも、そしてダンスも、全ての要素にかつてない熱が込められたことで、狂おしいほどに抑えきれない激情が伝わってくる烈しいアレンジとなっていました。
青空ーー君エール
ここまで2曲連続のバラードから、ミドルテンポの定番曲である君エールへ。リリースイベントの時期にまだFinallyと出会っていなかったこともあり、私にとってはリナリアよりもむしろこちらの方がLIVEで多く観た印象です。
ですが、リナリアと同様にこの日はスペシャル中のスペシャルバージョン。爽やかさを保ちつつも、骨太なロックナンバーへガラッと変身しました。
君エールといえばサビの振りも特徴的。普段のように近距離でメンバーと目線が合うのもとても楽しいですが、大きな会場だとまるでメンバーからあたたかい光がいっぱいに広がっていくように感じられます。
地下のライブハウスでの公演、しかも外はあいにくの大雨だったにも関わらず、この時間だけはまるで全員が青空の下にいるかのようでした。やはり、次なるステップとしては大型の野外フェスで見てみたいところです。
過去の記事で語った通り、私にとっても特別な曲であり、いつでも元気をくれる君エール。実に晴れやかな気分で後半戦に臨むことができました。
勇姿ーー決別イミテーション
LIVEスタートの曲というイメージが特に強いのが、この決別です。第一部ではラストスパートに向けた再点火の役割を務め、第二部では期待通りに開幕を飾ってくれました。Believingと決別、どちらかをOPに固定してもよかったところをあえて変えてきたことにも、並々ならぬこだわりを感じます。
決別がLIVEの幕開けに相応しい最大の理由は、曲そのものの展開にあります。祈りを捧げるように透き通った歌声から静かに始まったかと思いきや、一気に火力を全開に。そこから観客のコーラス、重低音ヘドバンとパワフルな要素が続いて、大サビはメッセージフルな歌詞で締め。ラストはダメ押しのコール&レスポンスから、続く二の矢を期待させるアウトロと共にフェードアウトします。
この怒涛の展開のうちでも、特に印象に残るのが冒頭部です。暗闇でスポットライトを浴びるJuriの美しさは通常のLIVEでも息を呑むほどですが、この日はBLAZEの照明演出が一層その静謐さと儚さを引き立てることで、会場中の時間の流れがスローになったと錯覚するほどになっていました。
その始まりから「行くぞォ!」と叫ぶ閧の声、そして大サビまで、この曲にはWINNERSと並んで特にリーダー・Juriの多彩な魅力が凝縮されています。堂々たるその姿はバンドに負けていないどころか、それを「サポート」として背負うのに相応しい風格を放っていました。
もっと荘厳な演出で、あるいはマルチカメラと大スクリーンを使って、Juriの歌う決別が見たい……ついそう思ってしまったことは、どうかご容赦ください。
祝祭ーーRock’n’roll Shooter
この曲をLIVEで観たことがあるファンなら、一人の例外もなくNAPでの披露を楽しみにしていたでしょう。それほど、リリース以降のロッケンの勢いは凄まじいものがあります。
LIVEの登板率もほぼ皆勤で、ワイブレを抜いてのトップ独走状態。同時期に多くの対バンで声出しが本格解禁となったこともあり、Finally最大のお祭り騒ぎ曲に君臨しています。
しかもそれでいて、メンバー全員の大人な魅力を引き出してもいる(Rinkaいわく「えろかっこかわいい」)のがロッケンのとんでもないところです。
そんな楽曲を生み出してくれたのが、感覚ピエロ・横山氏。そして0326では、ベースを同グループの滝口氏が務めてくださいました。いやはや、なんと豪華な……というか、もうこれは完全に感覚ピエロのLIVEですよ。
ベースオンリーの蠱惑的なイントロから、中盤の超絶技巧ギターまで、曲名の通りにロックサウンドのスタイリッシュさと楽しさが詰め込まれたこの曲。
第一部では本編ラストの二つ前、第二部では一つ前と盛り上がりの最高潮に配置されたロッケンは、進化したサウンドも、それにノって最高に楽しげなメンバーのダンスも、ステージに呼応して沸騰するフロアからのレスポンスも、何もかもが特別な日に相応しいパーティタイムでした。
融合ーーTrash Talk
君エールが爽やかで透明なFinallyを象徴する曲ならば、もう一つのLIVE定番曲であるTTはその対極に位置します。日本語ラップのように尖ったリリックの数々、ひねりを加えた歌い方は、Finallyの楽曲でも最も攻撃的かつ挑発的なナンバー。しかし、表現の形は違えどその根底に流れているスピリットは変わらないことは、過去記事で既に述べた通りです。
そんなTTですから、生バンドとの相性が悪かろうはずもありません。少し話は逸れますが、Finallyは歌唱力の成長速度がとても速く、特に昨年末からは外部アーティストとの交流によっていっそう手札の幅が広がったこともあって、いい意味でLIVEと過去音源とが別物のように思えることが多々あります。
そうした傾向は、TTのように高いスキルと工夫が必要な曲では一段と顕著です。歌い手側が大幅に成長していることで、言ってしまえば「音源を置き去りにして進化している」とすら感じさせられます。
しかし、この日に限ってはそんな心配は無用でした。終盤戦にあってもハードなダンスを難なくこなし、激しいdisと叱咤激励を次々に繰り出すメンバーたちの姿は、バンドと融合したことでこれ以上ないほどにロックを体現しており、WINNERSや飽くヒロのサウンドがグレードアップしたのとはまた違った意味でNAP版ならではの切れ味にシビれさせてくれました。
異端ーー愛迷
まさか。
まさかまさか。
本当にその一言に尽きます。
夜の部で差し代わった一曲、いわばサプライズ枠はまさかの愛迷でした。しかも、リアルタイムでは分かりませんでしたがFinallyとの入れ替えです。
愛迷。まっすぐさを何よりの特徴としているFinallyにあって、全編をダークなテイストで織った楽曲。死や滅びといった言葉を連想させる、ほぼ唯一といっていいほどに異色の作品です。
それだけに、愛迷が対バンで選出されることは決して多くはありません。楽曲が大幅に増えた現在は尚のことで、レア曲と呼んでも差し支えないでしょう。
それだけに、あの壮大なイントロが流れたときには耳を疑いました。
ただでさえ毎回のセトリに確たる意味を持たせるFinallyのことです。本稿で語ってきた通り、NAPにどの曲を採用するか……むしろ、全曲の中からどの曲を採用「しないか」には、少なからず頭を悩ませたことでしょう。
無粋を承知で多少事情を深読みしてしまえば、連続リリースの5曲、代表作であるワイブレとリナリア、初見にもピッタリのWe are、定番の決別とTTと君エール、メッセージ性のある暁とFinally……と、「これは外せないだろう」と予想していた曲だけでも相当な数に上ります。
そのため、それ以外のいわば自由枠に何の曲が入るかを考えるのが楽しくもあったのですが、愛迷は「やってほしいけどまず無理だろうな……」という曲の筆頭でした。あえて言えば、Innocent WarやNew:ERAの方がずっと「らしい」チョイスです。
それだけに、喜びと共にそれらを押さえて愛迷が選ばれた理由にも思いを巡らせずにはいられません。
そして、その理由もやはり「異端」ゆえなのでしょう。
仮に、Finallyの楽曲のトーンを線上に分類するとします。このとき、片方の極には最も陽気なWe areやロッケンを置きましょう。パブリックイメージの「アイドルらしい」カラーを持ったグループです。
そうした場合に、反対の極に来るのはほぼ間違いなく愛迷です。こちらは、いわゆる「アイドルらしさ」とは真逆に位置しています。
さらには、等身大の感情を綴るというグループの持ち味を排し、一貫して仮想のストーリーを描いているのも愛迷だけです。歌詞だけでいえばむしろアニソンやV系に近いと言えるかもしれません。
つまり愛迷とは、Finallyの表現の幅広さをもっとも象徴する楽曲なのです。
相応の実力があって初めて創造できる、ダークでシリアスな世界。
現時点のFinallyが持つ表現力、その一つの到達点です。
だからこそ、あえて他の曲を切ってまでこれをバンドと共に奏でたことで、グループのポテンシャルと可能性を改めて示したのでしょう。
バンドリーの4人がその心意気に応え、重厚で荘厳な調べを奏でたことで、彼女たちの狙いは見事に成功しました。
あ、あと一つだけいいですか?
本当にありがとうございました。
六人ーーFinally
第一部の本編ラストを飾ったのは、グループ名を冠したこの曲でした。
これはもう、納得の選曲です。
しかし今更ながら、何度聴いてもこの曲には驚かされます。アイドルのグループ名と同じ名を持つ曲自体はこの世に数あれど、「ごめんね」から始まるものは他にほとんどないのではないでしょうか。
そんなシリアスさと切なさを持ったこの曲ですが、NAPで披露されたFinallyの歌詞は、他の曲以上に特別な意味を持っていました。
サビでの印象的な「繋がった」というフレーズ。
おそらくリリース当初に込めた想いは、「夢への一縷の望みが繋がった」「ついてきてくれるファン=Fimillyと繋がった」というものだったのだと思います。
もちろん、それだけでも十分に尊いことです。
ですが、彼女たちはその後も単に上を目指すだけでなく、Finallyにしかできないアプローチで実力を示し続け、ジャンルの垣根を越えた大規模フェスへ出演し、邦ロック界隈とも交流を深めてきました。
言い換えれば、並のアイドルには不可能なほどに広く、多様な人々と「繋がって」きました。
その一つの結果としてこの日のLIVEが実現したことは、言うまでもありません、
Finallyの歌詞を書いたとき、彼女たちはこれほどの展開を予想していなかったかもしれません。
けれど今、ここにはFinallyというグループの力と志を認めた歴戦の強者達が並び、バックバンドとしてステージを彩っています。
さらにはそのサポートメンバーのファンまでもが、 LIVEに足を運んでくれています。
Finallyというグループは、こんなにもたくさんの人と、強く、たしかに「繋がり」ました。
何よりも。
彼女たちが「まだ終わりたくない」と再起してくれたから。
繋がってくれたから。
今、私はこうして生きています。
この感謝は、どれほど言葉にしても伝えきれません。
全員ーーWe are Finally
Finallyに、「事務所の都合」「プロデューサーの趣味」はありません。
だからこそ、私がこのグループを推していて心からよかったと思うのは、彼女たちは今好きなことを思い切りやっているんだ、と感じられるその瞬間です。
その点において、この日最も心が躍ったのがWe areでした。
第一部セトリでは、Finallyで感動的なエンディングを迎えてからのアンコール曲に置かれています。
そこから意図を汲み取るとすれば、この曲をエンタメ面での隠し球として、そして夜の第二部へつなぐ強烈なフックとして位置付けているということでしょう。
各メンバーパートにおける盛り上がりは言うに及ばず。
何より最高だったのは4番、特別編のバンドリーパートです。
メグは先日の配信でこの日を振り返り「ジャンプとかコールとか、やりたいことを詰め込んだ」と語ってくれましたが、また別の特典会で話したときにもAoiが「タッキー!って呼ぶとかありえないよ!」と、開催から日が経ったにも関わらず大興奮で語ってくれました。
バンドワンマンが、グループとしての目標である以上にメンバーたちにとっての夢の舞台であったことを、我々は知っています。
だからこそ、この笑顔が何よりも見たかったのです。
言い方が悪いですが、Finallyが持ち前のサービス精神を発揮して、多種多様な仕掛けで観客を盛り上げてくれることは、中身はどうあれ予想できました。
ですが私がそれ以上に待ち侘びていたのは、彼女たち自身がこの特別な日を楽しみ、この日にしかできない遊びを存分に堪能して喜ぶ、その姿でした。
だからこそ、We areで彼女たちのはじける笑顔とやりたい放題な自己紹介を、さらにバンドリーを交えた大はしゃぎっぷりを見て、心からこの日を迎えられてよかったと感じました。
最初から最後まで、まるで結成当初からの仲間かのように息のあった演奏とユニークなキャラクターを見せてくれたバンドリーの4名。
至難とは理解しつつ、どうしても再結集を願わずにはいられません。
と、ここまで気取ったことを書いてきましたが、実のところ当日のアンコールではそんなにあれこれと考えている余裕はありませんでした。
というか、バンドリーパート以外の記憶がほぼありません。
だって……めちゃくちゃ楽しかったんだもの。
お許しください。
真価ーー君に咲いたリナリア②
第二部の本編ラストを飾ったのはリナリアでした。
しかし、あれをリナリアと呼んでいいものかどうか、私にはまだ判断がついていません。
それほどまでに特別な、ただのアレンジというには異質すぎるインパクトのある一曲でした。
イントロの前にはMCが入りました。
第一部でJuriが語ったのと同様に、Megがこの日のBLAZEをSOLD OUTにできなかったことへの悔しさを語ります。
率直なところ、一部では客席でひとり歯軋りするほどの気持ちでしたが、その後に続くJuriの言葉を聞けたことで、二部では比較的冷静に耳を傾けられました。
そうして冷静になっていたところへ、Megの魂を結晶化した歌声が突き刺さります。
セトリの入れ替え具合を勘案して、ラストはワイブレかリナリアかな、とは思っていました。
しかし、それだけにあの驚きは今振り返っても並大抵ではありません。
たった一人でスポットライトを浴びたMegの、ここで倒れてもいいというようなアカペラでのロングトーン。
私は、人生であそこまでラブソングというものに衝撃を受けたことがありません。
1分足らずの間に、MegだけでなくFinallyというグループの想いの丈が全て詰まっていたと思えるほど、あまりにも劇的な歌い出し。
そこから紡がれる、第一部と同じ曲のはずなのにクライマックスに相応しいオーラをまとった6人の歌声とダンスは、Finallyというグループの真価をこれ以上ないほどに表すものでした。
ラブソングを超えたラブソング。
アイドルを超えたアイドル。
ロックを超えたロック。
たとえ武道館へ立ったアイドルが同じ曲を歌ったとしても、Finally以外があの気迫を出すことは絶対に不可能です。
4ヶ月の間、さんざんFinallyの別格さを語ってきましたが、事ここに至ってはどんな言葉も陳腐に感じてしまいます。
もはや、他のアーティストと比較する意味など微塵もありません。
Finallyの前にFinallyなし。
Finallyの後にFinallyなし。
一番の代表曲を究極の形まで進化させることによって、彼女たちは最後にその成長の凄まじさを見せつけ、そして今後への期待感をこれ以上ないほどに膨らませてくれました。
覚悟ーーWILD BRAVE
二部のアンコール曲、すなわち一日の大トリです。この激闘を締めくくるには、やはりこの曲しかありませんでした。
第一部と同様の感動的な演出ではなく、最後にダメ押しで完全燃焼することで、次なる舞台へとストーリーをつなげる。そんな意図を持った選択でしょう。
この曲がFinallyにとってどんな意味を持っているのかについては過去の楽曲語り記事で散々書き尽くしましたが、同時にワイブレは私にとっても一段と特別な思い入れのある曲でもあります。
昨年秋、ワイブレのリリース直後に私がFinallyにハマったことで、LIVEでも間違いなく一番多く観てきました。極端な言い方ですが、FinallyのLIVEといえばWILD BRAVE、そんな印象すら持っています。
それだけに、イントロから大胆なアレンジを加えられた特別版のワイブレは大変に新鮮でした。今回のアレンジは、単にサウンドがグレードアップした、生で迫力が増したというだけではありません。聴き慣れたはずの曲の可能性がまだこんなにあったのかと、思わず目を見張りました。
そんなワイブレで一番耳に残るフレーズといえば、「覚悟はできたか?」をおいて他にはありません。そしてFinallyは、この言葉を「自分たちとファンの双方に問う」ものとしています。
では、記念すべきLIVEの最後に彼女たちが問いかけた覚悟とは、どのようなものだったのでしょうか。
それは、この日を通過点にする覚悟です。
メンバー全員にとっての長年の目標で、ファンにとっても夢の舞台。二度と同じ面子は揃わないのではないかと思えるほど、奇跡的に結集したバンドの面々。
間違いなく、彼女たちの芸能活動の中では最大にして最高のLIVEだったでしょう。
でも、ここがピークじゃない。
Finallyは、ここで終わりじゃない。
立ち止まってる暇なんかない。
燃え尽きるなんて許さない。
最強最高のエンドロールは、もっとずっと遠く。
だから、アイドルもロックも超越したNAPでさえも、Finallyにとってはステップの一つにすぎない。
この日抱いたあらゆる想いを薪にして、激情をさらに燃やして、私たちは前に進む。
次のステージへ進む。
お前らはどうだ。
ここで満足せず、ついてくる覚悟はできたか?
そう、Finallyは問いかけてきたのです。
まったく、何というグループでしょうか。
MCで言うだけであれば、言い方は悪いですが誰にでもできるでしょう。
まだまだ終わらない。見たい景色がある。
そう言葉にするだけなら容易いことです。
しかし、我々は知っています。
Take the last chance.
これが、今このときが彼女たちにとっての「Final」、最後の挑戦だということを。
だからこそ、ここで立ち止まるという選択肢はないのです。
よくやった、なんて顔をしている暇はないのです。
「覚悟はできたか?」
私は、このレポートをここまで書き終えてようやく、その覚悟ができました。
0326の次のステージは、果たしてどこになるのでしょうか。
順当に考えれば、より規模の大きいライブハウスでしょうか。しかし、予想を超える動きで一段二段飛ばしにステップを駆け上がっていくFinallyのことです。今回のように大勝負を仕掛けるとすれば、その場所も、タイミングも、おそらくは我々の想像できないところになるでしょう。
そして、その時にはまた同じように、私も覚悟のほどを問われるのかもしれません。
だとすれば、6人がエンドロールへ辿り着くそのときまで。
私の答えは一つしかありません。
ついていく覚悟は、元よりできています。
そして今ようやく、Finallyというグループの一度きりの勝負、その歩みを書き残していく覚悟ができました。
共に、最後まで。
解放ーーJuri
この日のJuriは、明らかに普段とギアが違いました。
言うまでもなく、普段から全力の彼女のことです。何十回とLIVEを見ても毎回新しい発見をもたらしてくれるその姿に、物足りなさを覚えたことなど一度もありません。
しかし、バンドの響きと体内のビートを共振させたJuriのダンスはさらにキレを増し、アレンジを入れて遊び、初見時のような新鮮さで眼前の空間を支配していました。
この翌日にはフォロワーと打ち上げと称してHiGH&LOW THE LIVEの円盤鑑賞会をしていたのですが、そこに映っていたEXILEやE-girlsと比べてもJuriのパフォーマンスは何ら遜色がありません。むしろ、この曲を一度踊ってみてほしい、ドームで見たい、と二人して盛り上がったくらいです。
そんな中で、私の頭には一つの仮説が浮かんできました。
BLAZEで見たあの姿こそが、Juriの本来の実力ではないか。
普段の中小規模のステージで、短い出番に、音源で踊っている彼女は、ダンス番長でありながら手枷足枷をはめられているのに等しかったのではないか。
鳥肌が立ちました。
リズムと躍動感の化身であるJuriは、この日初めて身を縛っていた重りから解放され、全力を出せたのです。
次のバンド編成LIVEまでには、またしばらくの時を要するでしょう。
しかし、一度彼女の100%を見てしまった私は、その機会を待ち焦がれずにはいられません。
Juriを超えられる者は、未来のJuriだけ。
彼女こそが、最強リーダーです。
大器ーーAoi
ここに立ってくれたこと、それだけでも奇跡。
OPで並び立つAoiの姿を見たときは、真っ先にそう思いました。
離脱期間のことは既に何度も触れた通りですが、Finallyメンバーにとって怪我でブランクが開くということは、他のグループとは段違いの困難を意味します。
言うまでもなく、その一つがスタミナと集中力を要する全身ダンスの激しさですが、さらに0326に至るまでの期間には新曲連続配信があり、Aoiの不在期間にも2曲がリリースされました。
体力の低下も含め、ワンマンまでの一ヶ月足らずで5人に追いつくにはどれほどの猛練習が必要だったのか……想像すらできません。
本当に、よくぞ帰って来てくれました。
……という感慨は、しかし長続きはしませんでした。
なぜかって?
Aoiが、あまりにも楽しそうだったからです。
あるいは、あれこれ余計なことを考えてしまった私などよりも、遥かにLIVEそのものをエンジョイしていたかもしれません。
歌い、飛び跳ね、笑う。
「後ろを向いて踊りたい」というほどにバンドメンバーとの共演を楽しみにしていた彼女は、その全身から喜びを溢れさせながら、2部のラストまでを走りきりました。
大物です。
しかし、Aoiの凄さはそれだけに留まりませんでした。
1部終了後の特典会で彼女のところを訪れたときのことです。
「最初は超緊張してたけど、めっちゃ楽しかった!ソールドできなかったのは残念だけど、うちらならもっともっとやれると思った!」
疲れてるとかいないとかいうレベルではありません。
念願叶ってこれだけのことをやってのけて、その上まだもう一公演が残っているというのに、既に彼女はさらなるビッグステージへの自信をつけつつあったのです。
大物どころか、超大物です。
芸能活動の休止にはしばしば「充電期間」という言葉が使われますが、Aoiはどうやらその規格外の大容量にめいっぱい充電をして帰ってきてくれたようです。
最年少にして、最大の器。
あれもこれも話し足りないといった様子ではしゃぐAoiの笑顔を思い出すたび、そんな言葉が浮かんできます。
繚乱ーーHaruna
「最初見たときはかわいさ担当だと思ってたけど全然違った!めっちゃカッコよかったし、5ヶ月で歌も進化してるのがわかった!」
昨年秋以来、今回がFinally3回目となった女性からの声です。
私もかつては、Harunaの魅力をそのように理解していました。
6人の中では一番王道アイドルらしい、スマイルが可愛らしい美少女枠。可憐な一輪の花……。
今は、その頃の自分に冷水をぶっ掛けてやりたい気分です。
しかし一方で、Harunaの魅力とは何か?と聞かれると、未だに一言では表せません。
どんなパートも歌いこなす安定感?
トークに行けば一瞬で嫌なことを忘れさせてくれるキャラクター?
屈託のない笑顔から真剣な眼差しに変わる表情?
そのどれもが正解ですが、恐らくそれだけでは不十分です。
上に挙げた一つ一つは、Harunaというアーティストを構成する要素に過ぎず、その全てを内包するのが彼女なのです。
一輪の花ではなく、一人で百花繚乱の色彩を見せることのできる引き出しの多さ、幅の広さ。
バンドワンマンで披露された曲の多彩さは、すなわちHarunaの多彩さでした。
特に、君エールやリナリアの落ちサビのようにまっすぐ綺麗に声を伸ばす歌い方は、特筆すべき彼女のストロングポイントです。
この日が初披露となったファイターでは、大サビ前半にてその集大成と言うべき歌声を聴かせてくれました。
カッコいいも可愛いも併せ持ち、外部アーティストが書いた曲も納得のクオリティで歌い上げるHarunaは、初めて見た観客にも強烈な印象を残したに違いありません。
紅炎ーーRinka
周りの空気が揺らいでいると錯覚するほど、桁違いの気迫。
リードボーカル2人のうち、この日のRinkaから感じた熱は、事前に上がりきった期待のハードルを容易に焼き尽くすほどでした。
長きにわたるアイドル活動の中で、ずっと目標にしていたものの一つがバンド編成LIVEだと語っていたRinka。
リレー配信でもひときわ熱い想いを伝えてくれた彼女の感情は、詞の一言ずつ、一音ずつに凝縮されて私の心に届きました。
これは後日インスタで明かされた話ですが、彼女が自分なりの歌い方を確立して真に自信を持てたのは、なんと今回のワンマンに向けた5ヶ月連続リリースの開始後だったそうです。
きっと、悩み苦しみながら試行錯誤を続けてきたことでRinkaの地金は既に完成しており、そこへ新たにやってきた外部からの刺激が最後の1ピースとなったのでしょう。
実際にFinallyデビュー時の音源と比べても、彼女の歌い方はグッとLIVEライクなものになっており、そのパワフルさは段違いです。
あえて露悪的な言い方をしてしまえば、Rinkaよりも生まれつき声量と音感があったアイドルや、声質自体に恵まれたアイドルは、他にもいるかもしれません。
しかし、聴き手の心を共鳴させるという点において、その人たちがRinkaを上回ることは、絶対にありません。
彼女の武器は、いわば彼女の歩んできた歴史そのものです。
先達のアドバイスを謙虚に聞き、実践するひたむきさ。
歌詞の隅々にまで意味を持たせ、それを余さず伝えようとする工夫。
瞬きや呼吸一つに至るまで神経を行き渡らせ、自分のパート以外でも決して途切れることのない集中力。
そして、音楽活動を続けられていることへの感謝と、音楽そのものへの大きな敬意。
ひとりのアーティストとしての厚み、人間性の厚みが、そのままRinkaの歌の厚みを作っているのです。
私は以前から、彼女自身が作詞した走れをRinkaのテーマ曲のように感じていましたが、この日の同曲はまさに彼女のための時間でした。
Rinkaが生きてきた時間を乗せたこのパートは、燃え上がった炎のごとく、今も私の記憶に強く焼きついています。
怪物ーーMeg
女性アーティストを「怪物」と呼ぶのは、果たして正しいのでしょうか。
あれほど佳麗なひとを形容するには失礼すぎるというご指摘は至極ごもっともです。
しかし、「怪物」を封じられてしまっては、私の貧困な語彙ではMegのことを表せなくなってしまいますので、どうか今だけはご容赦ください。
Finallyの楽曲はそれだけでも幅広いとはいえど、グループの性格上、どうしてもカバーの薄い範囲は出てきてしまいます。その一つが、情念を濃く表すタイプのラブソングです。
しかしMegのポテンシャルは、そんなジャンルも容易にモノにしてしまいます。その底知れない力の一端は、過去にDiVAのレポで絶賞した通りです。
0326にフルパワーを出したMegもまた、表現力云々を凌駕した物語の語り部として、その力を存分に発揮してくれました。
先述した通り、その極致が2部ラストのリナリアです。
魂を触媒にしてひとり絶唱するMegの姿。
現地ではあまりの衝撃にただ涙を流すだけでしたが、今振り返るとむしろ一種冷静な感想が浮かんできます。
BLAZEもMegには狭かった。
TinaやJuriのようなダンスの躍動感を活かすステージの広さという意味ではありません。
Megだけが持ちうる、絶対的な存在感。
それを完全に展開するには、BLAZEのステージと演出すらもまだ不足していたように思えます。
では、動員規模がより大きい会場ならばそれに足りるのでしょうか?
否。O-EASTやZeppといった会場を思い浮かべるに、それでは答えとして不十分です。
Megのオーラをフルに広げるには、横に広がったステージを正面から続く客席から観るという、「面」では不十分です。
そうではなく、より広い角度から、斜めや横も含めた「周」からスポットライトと視線を集めてこそ、そしてその全方位に向けて歌を響かせてこそ、Megというアーティストは真価を発揮できます。
ゆえに、私はしばらくの間はMegが歌う姿を見ても「狭い」という身も蓋もない感想を持ち続けてしまいそうです。
それがなくなるのは、「周」に向けて思いきり歌えるステージに立ったとき。
武道館。アリーナ、ドーム。
きっとその日初めて、私はMegの真の底力を知ることができるのでしょう。
無限ーーTina
最推しです。
最推しという言葉でも到底物足りず、最愛と呼びたいのをいつも我慢しているほど、私にとっては絶対的な存在です。
私は、彼女がデビューしてから今日までの歩みを知りません。
これほどのスター性を持つに至るまでの道のりを知りません。
もちろん、そこに凄まじい努力があったことだけは間違いないでしょう。
それでも、つい思わずにはいられないのです。
Tinaは本物の天才だと。
進化する天才、努力する天才という形容はよく耳にしますが、彼女をそう呼んでいいのかも分かりません。
ただ確かなのは、初めて見たときから半年にも満たない期間で、Tinaは全てのスキルを大いに進化させてきたということです。
いえ、スキルだけではありません。
天性の華。
他人がどれだけ欲しても手に入らない素質そのものを、彼女は思うままに成長させています。
光線のようにまっすぐ全観客を貫く歌声は、会場が広ければ広いほど遠くへ。
私の大好きな、目を伏せて想いを振り絞るように歌う表情だけでなく、逆に目を見開いて聴き手一人ずつに向き合うような仕草までも身につけて。
バンドのグルーヴ感が加速すればするほど、ダンスは激しくエネルギッシュに。
背中を向けて静止する姿は、彫像のごとく。
どれだけ計算しても、努力しても、ほとんどの人間にはできないでしょう。
ステージの上でそれをやってのけるだけでも、本物の天才です。
ならば、その才能をさらに進化させていくのは、天才を超えた天才でしょうか。
しかし、彼女は超が二つ三つ付く天然……もとい、感覚派です。
もしもTinaが、私が挙げたような一つ一つを強く意識せず、その心のおもむくままに翼を広げているだけだとしたら。
私は最推しのことを、どう称えればいいのでしょうか?
ひとまずはただ一言、最大限の愛と敬意を持って。
無限の天才。
そう呼ばせてください。
覇道ーーおわりに
「まだ見つかってないだけ」。
Finallyがこの日見せてくれたパフォーマンスは、チケットが売り切れていないのがおかしいとしか思えないものでした。
その事実に対する説明は、「まだ見つかってないだけ」。それしかありません。
私が最終的に動員できた人数は、全部で24人。昼夜合わせてチケットは33枚でした。
その誰もが口を揃えて、期待を遥かに超えていた、感動した、なんで今まで知らなかったんだろう、といった感想を残してくれています。
Finallyには知名度だけが足りない。初めてLIVEを見た日からそう思い続けてきましたが、今回改めて「観てもらえさえすれば勝ち」という持論に間違いはないという確信を強めました。
それでも、複数枚特典を付けたり投げ売りをしたりせずに各部5000円というチケット価格を貫いた彼女たちの姿勢を、私は心から尊敬しています。
実力以上の大箱に立たせて経験値を積ませる、あるいは箔を付ける。そのためにチケットを激安価格、あるいは無料でばら撒き、赤字は事務所が吸収する。
好みはどうあれ、そういった方法論は大いにアリだと思いますし、それが結果的にグループへ成長を促すこともあるでしょう。
しかし、Finallyはその道を選びはしませんでした。
一つには、彼女たちが無所属のセルフプロデュースグループだという事情もあるでしょう。大手事務所のように先行投資的な戦略を取り、赤字リスクを引き受けることは困難です。
そのこと自体もリスペクトに値しますが、私はもう一つFinallyからのメッセージを受け取りました。
それは、自分たちが信じられる良いもの、格好良いものを突き詰めていけば、自然と結果はついてくるという信念です。
言うは易く行うは難し。
ですが、その志を貫く姿に共鳴したからこそ、あれほどに実力者揃いのバンドメンバーが集まり、そして大勢の観客を感動させたのでしょう。
アイドルらしいか、アイドルらしくないか。
そういった定義や区分はFinallyにとってもはや意味をなさないということは、過去の記事でもたびたび語ってきましたが、その問答を超えた一つの答えをこの日は見ることができました。
王道だの、邪道だの、そういった枠を飛び越えて、ただ己が信じるままに突き進む。
その道は、覇道です。
時代を問わず、英傑が勇躍していく様を間近で見届けられることは、およそ常人にとって最大の誉れでした。
ましてやその物語を綴ることは、自らが戦場に立つことのできない者にとって至高の名誉であり、生涯を懸けるに値する大任だったことでしょう。
即ち、覇道の軌跡を書き残すこと。
我、天命を得たり。
この凡夫の身には余りある喜び。それを今一度噛み締めて、本稿を締めくくりたいと思います。
最後になりますが、0326に参戦された全てのお客様ならびにFimillyの皆様、遅ればせながらお疲れ様でした!
この記事がわずかでもあの日の思い出を補完する助けになれば幸いです。
そして関係者の方々、バンドリーの皆さん、何より6人のメンバーへ。
総力をあげて最高の一日を創り上げてくださったことに、今一度心から感謝いたします。
本当にありがとうございます!
最後の最後の最後に、24人の愛すべきバカ野郎どもへ。
みんながいたから、楽しかった。
みんなと観られたから、嬉しかった。
呼びかけに応じてみんなが集まってくれたこと、喜んでくれた顔、一生忘れません。
愛してるぜ!!!
完!!!!
ソールドアウトできなかった話のときは胸が締めつけられるような思いだった。俺が今日集められたのは23人、チケットが32枚。死に物狂いで思いつくこと全部やってこの数字だけど、もっともっと増やしたい。だから、どうか悲しまないで。みんなの実力はこんな数字じゃ到底測れないから。
ソールドアウトできなかった悔しさは痛いほど伝わってきたけど、それでもみんなからはポジティブなメッセージが聴けて嬉しかった。本当によかった。
今日のLIVEは、誰が何と言おうがどんなアーティストよりも素晴らしかった。これを超えられるとしたら、未来のFinallyしかいない。
俺の推しは最強だ。
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