驚くに決まってる、発作について
こんにちは、我が家の猫は飽きもせずに昆虫を見ています。虫さんのほうはストレスを感じているかもしれないですが、これだけ楽しそうにしているとにゃんこの見えるところに虫さんの籠を置いてあげたくなってしまう 毛玉好きの獣医です。
今日は、この季節に相談が増える、発作についてお話しいたします。
みなさん、【発作が出ている犬】なんて、見たことありませんよね。もちろん私もこの仕事に就くまでは、生で見たことがありませんでした。
(いわゆるてんかんによる発作とは違いますが、授業で狂犬病のビデオを見たときに 衝撃を受けたことを覚えています。)
初めて生で見たのは、働き始めたフレッシュな1年目のこと。しかもお昼休みにドアを叩き急患でやってきました。
ドアを開けて入って来た飼い主さんの腕の中には、白目をむき、泡を吹いて、足をバタバタさせる犬がいました。
(O_O) !!!
飼い主さんから犬をあずかろうとするも、どこを持っていいかわからずあたふたする私を見て、動物看護師さんが代わりに犬を抱きかかえてオペ室へと連れていきました……獣医師1年目、まったく役に立たなかったわけです(;_;)
と、これが私と発作の苦い思い出ですが 多分8割がた、はじめて発作のコを見たらパニックになると思います。(。・ω・。)
で、特に 【てんかん】 と呼ばれるものでは、初めての発作で亡くなる事は可能性として低いですが誤った対処をしないように、少しの知識を身に付けていただくといいかなと思います。
実は発作の種類には、私が初めて出会ったような全身性の明らかな発作の他に焦点発作と言って焦点が合わずぼーっとしている様に見えるものや、部分発作と言って体の一部だけが発作になったり意識は残ったまま硬直して動けなくなったりするだけのものもあります。
それらの発作は、そこから直接重症になる事は無いので今回は詳しい説明を省きますが、これらの発作も後で述べるようなチェック項目を記録しておいてもらうと後の診断に役立つと思います。
発作の原因に関してはたくさんあるので、また後で詳しく説明するとして 今回は初めて発作があった時にどのように対応し、どのような時に急いで病院に連れて行けばいいかについてお話ししようと思います。
多くの場合、初めて起こる発作は時間にして30秒から40秒程度でおさまることが多いです。
発作の前に不安な様子でウロウロしたり、暗い隅っこにかくれたり、抱っこをせがんだり もしくは発作の後に意識はあるもののぼーっとしてしまうような時間を含めると、1時間から長くて半日くらいになることもあると思いますが、ここで言う発作の時間とは意識がなくなり手足をバタバタさせている時間のことをさします。
まず、発作のコをみたら
飼い主さんがパニックにならないことが1番大切です
そして1番難しいです。(-᷅_-᷄๑) というか無理?
◉まず、人間の場合は舌をかまないようにタオルを口に入れるなどと言うことを昔聞いたことがありますが、危険ですのでタオルなどを口に入れる事はしないでください!意識がないので、物と飼い主さんの手の区別もつきません。間違って噛んでしまう場合にはかなり強い力で噛むことがありますので気をつけていただいた方が良いかと思います。
◉発作が起きている場所が高い所や危ないところであれば動物を移動させる必要がありますが、床や地面などの比較的安全な場所であれば、周囲のものを避け少しスペースを確保した後はあまり触らないほうが良いです。
◉次に、早く意識が戻って欲しくて名前などを大きな声で呼びかけたくなりますが、外からの刺激は発作を長引かせる原因になることがありますので、大きな声はかけず静かに見守ってあげるのが正解です。
◉もし可能であれば、発作の様子を動画に撮ったり、発作の続く時間を図ったりすることが診断の一助としては望ましいです (が、初回でできる事はまずないと思います。)
◉ウンチやオシッコを垂れ流してしまう場合もあるので、気をつけてください。
◉全身をガタガタさせるような発作がおさまった後は、その子が望むようであれば抱いてあげたりするのは構わないと思います。汚れている場合は拭いても良いですが、お風呂などは刺激が強いのでやめてください(病院のスタッフはウンチまみれでも全然平気です)
(ちなみに、発作の最中は動物本人は意識がありませんので苦しいといく感覚は無いそうです。見ている方はとても可哀想に思ってしまうのですが。)
◉発作が短時間でおさまった場合は、落ち着いた後に電話で動物病院に連絡。
多くの場合は当日中に再度発作がない場合には、後日 話を伺いに来ていただくだけで十分のこともありますので、急いで動物病院に駆け込む必要がないこともあります。
もし、様子を見てくださいと言われても心配しないでください。
それよりもまずいのは、急いで病院に運ばなければいけないタイミングを逃すことです。
大きな発作が続く場合に様子を見る飼い主さんは少ないですが、初めての発作でも 例えば脳に大きな出血があったり熱中症だったり、中毒だったりなど発作が続く場合もありますのでその場合は救急で動物病院に担ぎ込む必要があります。
大きな発作の状態が、30分以上続く場合 もしくは1つの発作が終わらないうちに新しい発作が次々と起きてしまう場合(てんかん重積と言います)は、お薬を使って発作を抑える必要があります。
この状態が続くと、わかりやすい言葉で言うと脳死のような状態になってしまったり、亡くなってしまうこともあります。
が、30分続いてから病院に行くのでは遅いので、5分から10分たっても発作がおさまらない場合はかかりつけの動物病院に連絡し、移動する必要があります。かかりつけの病院がやっていない時間帯であれば、最も近い救急の病院に担ぎ込む必要がありますので、日ごろから救急の場合はどこに連れて行くか考えておくのが良いかと思います。初めてだと駐車場や入り口、先生などわからないことが多いので不安もあるかと思います。ワクチンや健康診断の機会に一度診察を受けつつ雰囲気を見にいくのもいいかもしれないですね。
あと、以前熱中症か何かの記事でもいいましたが、事前に1本電話を入れることで処置の準備が整いますので ただ黙って駆け込むよりも救命率が上がります。とにかく連れて行かなくてはと言う気持ちはわかりますが、状況を説明し準備を整えるためにもぜひ病院には1本電話を入れてることをお勧めします。
あともう一つ、救急の場合はいつでもそうですが動物病院に連れてくる道中の車の運転は気をつけてください。かなりパニックになった状態ですので、交通事故に遭われたり駐車場で車をぶつけたりすることが多いものです。
で、病院に着いて聞かれることで、意識しておいて欲しいことは
1.発作の起きた時に何かなかったか(何か食べてしまった、強く頭をぶつけた、なども含みます)
2.初めてかどうか
3.2回目以降の時は、前回からどのくらい経っているか(複数回ある場合は、カレンダーに印をつけて頻度を教えてください)
4.発作の続いた時間
5.発作の様子、発作の前後の様子
そのほかは持病の有無や年齢、避妊去勢などが診断に関わってきます。
動物病院までいけば、あとは診断治療を先生から聞いて、すすめていくので安心です。
台風が近づいてくるこの時期、気圧の変化か気温の変化か、発作は増えやすい傾向にあります。
はじめての発作は、てんかん だと3歳から5歳と若くして起きます。まだ病気をするとは思っていない年齢かとは思いますので 準備も整わないうちに ということが多いかと思いますが、若いうちから少しずつ知識を増やしてもらうと より安心ですね。
なにより、何事もないことが一番ですね、みなさんのウチのコが健康で、この知識が全く役に立たないことを祈ります。
以上、湿気に弱い 毛玉好きの獣医でした。
(まだマガジンにまとめきれず…)