チェット・ベイカーが好き。
昔からチェット・ベイカーの歌声が好きでよく聴いている。ソフトで甘い、でもどこか哀しく儚げな歌声と、歌声と同じように優しいトランペットの音色がたまらない。
チェット・ベイカーが歌が上手いのかどうかは意見が分かれているようだが、同じ男性ジャズボーカルの、きっと歌はチェットよりも上手いと思われるフランク・シナトラはほとんど聴かない。(シナトラ好きな方ごめんなさい。)
歌が上手いことと歌が魅力的であることはイコールではないようだ。少なくとも私は、どんなに巧みに歌っている歌手より、音程が狂いそうで狂わない微妙な感じのチェットの危うい魅力に惹かれてしまう。
彼の自伝的映画『ブルーに生まれついて(英題Born to be Blue)』では、イーサン・ホークがチェットを演じていたのだが、弱々しくて危なっかしい感じがなんとも良かった。ドラッグに溺れ、浮気も当たり前でも、いつでも恋人がいるのは想像どおりだが、同じく恋人に事欠かないビリー・ホリデイと同じく、チェットも才能や名声に恵まれていながらも、常に不安や孤独と闘っている。
チェットの歌う、Let's Get Lostという曲がとても好きで、チェットとならどこかの街の闇に一緒に消えてしまっても良いかも、と思ったりしながらうっとりして聴いている。才能があって、輝いていながらも、深い闇を抱えて苦悩している人の音楽や芸術はどうしてこんなに心を掴んでくるのか。今日も満員電車の混雑の中、現実から逃避すべく、チェットの歌声に癒されながら、この記事を書いてみた。
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