
アマプラで、ドラマ『フリーバッグ』を観た。
タイトルのフリーバッグ(fleabag)の意味を調べると、「ノミのたかった動物、薄汚い格好をした人」という意味だった。
このドラマの主人公(アラサーの独身女性)はドラマの中で名前を呼ばれることはないから、彼女の本当の名前は分からないままだが、フリーバッグというタイトルは、どうやら彼女を表しているようだ。
この作品を観て思ったことは沢山あるが、まず最初に感じたのは、あれ、この奇妙な主人公の気持ち私にも分かる、だった。私は物も盗まないし、彼女みたいに性に奔放ではないが、あの生きづらさは私にもあると思う。
思ったことをそのまま言ってしまい場の空気を固まらせてしまうのは、沢山身に覚えがあるし、嫌いな人にはそのまま嫌いだという感情を隠せないところも似ている。
親も彼女に手を焼いていて、いつまでも父親に心配をかけている。ちなみにドラマの中の母親はすでに亡くなっていて、それが彼女の抱える悲しみのひとつになっている。そして親友の死が彼女の人生に非常に大きな影を落とし、彼女の精神を蝕んでいる。
私も小さい頃から何かと両親に心配をかけてきたし、大人になった今もまだきっと心配されている。子供の頃に父親にトラブルメーカー呼ばわりされて腹を立てていたけど、割と当たっていたんだと思う。
個性が強すぎるフリーバッグは、女性はこうあるべきという社会規範からもはみ出していて、何かとトラブルを起こす。フリーバッグが誰かに似てるなとふと思い出したのは、安野モヨコさんの漫画、ハッピーマニアの主人公シゲタカヨコだ。彼女も幸せを掴むためにいつももがいている。
フリーバッグも、シゲタカヨコも、自分の欲望に忠実で、心から誰かに愛されたいといつも渇望しているがなかなか上手くいかない。でも2人ともまっすぐ生きている感じが見ていて気持ちよくて、その不器用な素直さが愛おしくなる。まっすぐにしか進めないから、いろんなところにぶつかるのだろう。
姉のクレアがクズ夫となかなか別れられなくて困っている時にひたすら背中を押すフリーバッグ。変わり者だけど賢いし、優しいのだ。自分の人生は上手くいかないけど、姉が幸せになることを心から望んでいる。
こないだ息子に、「ママは変わり者だけど、いいヤツだよね」と言われた。フリーバッグを見ていると本当に変わり者だけど、愛情深くて優しいから、その彼女に人々が魅了され、このドラマがイギリスで大人気になったのだろう。息子も私を褒めたつもりなのかは分からないけど、私もフリーバッグのはしくれなら、それはそれでまあいいか。
でこぼこでも、はみ出してても、自分に正直に不器用に生きるのは悪くない。これからの自分も女らしさなんてかなぐり捨てて、好きなように振る舞い、生きていこうと自分を肯定できるドラマだった。いろいろモラルに反してるフリーバッグが人間らしくて、人間こうでなきゃつまらないよね、とスカッとする気分になれたドラマでもあった。また自己肯定感低まった時に見返そうと思う。