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百万石メモリーズ 第五景「希望が見える富樫城址・三天狗が守る前田家の裏鬼門」
百万石メモリーズについて
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様「珠姫(主人公:たまひめちゃん)」が前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現代の加賀百万石を訪れる。 加賀百万石の各地にあるパワースポットや歴史的な場所を巡る物語。
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この物語は、第一景から第十二景まであります。今回の話は第五景となります。
「百万石メモリーズ」全12章
■第一景 珠姫のお寺天徳院・白蛇龍神の金澤神社
■第二景 珠姫が通った子宝観音院・金沢城鬼門封じの五本松宝泉寺
■第三景 殿様の眼病治した香林坊地蔵尊・縁切りと縁結び貴船明神
■第四景 百万石まつりの尾山神社・十二支巡り願掛け香林寺
■第五景 希望が見える富樫城址・三天狗が守る前田家の裏鬼門
■第六景 利常の小松城址と浮宮天満宮・大聖寺の金龍山実性院
■第七景 奇岩胎内めぐり那谷寺・女人救済の遊郭串茶屋
■第八景 白山信仰の白山比咩神社・金運の金劔宮
■第九景 入らずの森気多大社・隠し砦の妙成寺五重塔
■第十景 海流が交わる聖域珠洲岬・日本海を守る須須神社
■第十一景 化け鼠と戦った猫墓法船寺・夢枕に立った白蛇養智院
■第十二景 船出の大野湊神社・浄化の霊山医王山寺
第一景は無料でご覧いただけます。
第二景から第十二景までは、各話後半部分が有料(1話100円)になっております。
今後グランゼーラ公式noteでは、毎月1日と15日に順次配信してまいります。
一挙に最終の第十二景までご覧いただきたい方は、下記の電子書籍ストアにて販売中です。
・Apple Books
・Kindle
・Google Play Books
・Rakuten ブックス
百万石メモリーズ公式サイトはこちら→https://www.granzella.co.jp/contents/book/
登場人物紹介
・珠姫(たまひめちゃん)
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様で、この物語の主人公。
前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現在の加賀百万石の様々な場所を巡る。
・タケチョ
徳川家康公の前世の記憶を半分抱え、輪廻転生した。
孫である珠姫が心配で、豆狸の姿に変身して旅に同行している。
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著者:麻井 紅仁子
編集・イラスト:ほんだしょうこ
第五景
希望が見える富樫城址~三天狗が守る前田家の裏鬼門
「珠姫様、お久しゅうございます」
「内記ね、このお道具使わなくてもわかるわよ。あなた、お声が昔と同じだもの」
「ハハハハ!それはありがたいです」
「おい!内記」
「おおっ!上様ですか?しかしまぁ…秘書から事前に聞いていなければ到底わからぬところでした、ハハハハ」
「笑うな、お前に言いたいことがあるのにこの姿ではどうも威厳がなくていかん」
「上様もお声がそのままですから」
「お前、まだ加賀に、しかも市長になってるとはよほどこの地が気に入ったか」
「大学をでて一時は東京で勤務していましたが急に金沢のことが頭から離れなくなり帰郷しました」
「そうか、それで市会議員に出て、とうとう市長にまでなったということだそうじゃないか」
「はい。支援者の方々と話すうちに少しずつ自分がメモリーズだと得心した次第です」
「政治家になるにしたがって興津内記だったころの記憶が蘇ったの?」
「はい。姫、それもこれも徳川と前田を結ぶために健気な日々を送る姫の過去世の記憶のせいかもしれませんね」
「ええい、もうよいわ。何にせよ、結果徳川と前田は戦にはならなかったのだから良しとするか」
「はい。こう申してはなんですが、隙あらばという徳川の思惑や策略、前田のどろどろの胸の内よりも姫様の誠が皆を動かしたというところでしょうか」
「まさかお前までが懐柔されるとはなぁ…」
「懐柔とはちがいますぞ。徳川の譜代※1でもない私を信頼し珠姫様のつけ家老にまで取り立ててくださいました。この、ご恩は忘れてはおりません。ゆえに私は徳川に不利益なことは断じてしていません。姫をお守りするうちにこの方こそ私が命を懸けてお仕えしたい方と悟りました」
「なるほど…たまは俺よりも上だったということか?」
「上下とはちがいますなぁ。姫にはそれだけ特別な、なんといいますか損得や駆け引きではない無垢なお心とでも申しましょうか」
「ううーむ、俺にはなかったものというか…。にしても良くも俺を裏切ったものよ」
「はいはい、タケチョもういいでしょ。内記に逢えて本当に嬉しいわ!」
「はい自分もまさかまた姫様にお目にかかれるとは!夢のようでございます」
「あれほど申し付けておいたのにお前は加賀の動静を知らさぬようになりおって」
「もう~タケチョったらしつこいのねぇ。最初はせっせと江戸のタケチョに前田の内幕を知らせてたでしょ?天守が焼けた時だって即ご注進※2~!って」
「そんなこともございましたなぁ」
「じゃが、五箇山の煙硝蔵※3爆発の時などいくらこちらから問い合わせてもなしのつぶてじゃったぞ!」
「幕府にたてつくことを利常様がお考えでないことを確信しておりましたゆえ」
「お前、利常に惚れたな?」
「はい、利常様は本当にご立派な殿でした。天性の聡さと快活な明るさ、その上、底知れぬほどの豪胆な気質を兼ね備えておられました。自分は今でも、利常様こそが戦国最後の武将と確信しております」
「あの鼻毛利常が内記ほどの男をそこまで言わしめる男であったか」
「あら!鼻毛のことは、たまが利常様の身を思って申し上げたのよ」
「なに、あの鼻毛はお前の入れ知恵とな?」
「江戸の爺は疑り深いから、熱病のせいでおバカになったふりをあそばせってね‼」
「ハハハハ‼殿は姫のお心にそったふりをされておられましたが、鼻毛くらいではどうにもならぬほどご自分が幕府に睨まれ警戒されていたことをご承知でしたよ」
「あらそうだったの?なぁんだ、つまらない」
「でも姫さまのご意見に従う優しいふりをされその一方では幕府にとんでもない揺さぶりを何度もかけてました。それはもう大胆な行動を」
「そうよなぁ…確かに家光の頃には。
あれは小心で、大所高所からものを見れぬところがある気質だったしな」
「はい、でも、決して幕府転覆などということは毛ほども考えておられませんでした」
「家光は、ギリギリで仕掛けてくる利常がさぞや恐ろしかったであろう」
「さすが上様、恐れながら家光様は少々狭気な面がございましたゆえ、何がきっかけで事が起きるかもわかりませんでした」
「たしかになぁ」
「ゆえに、御三家は別として、加賀だけは特別な家であることを世間や幕府に認めさせねばならないと利常様はお考えの上で傍若無人なおふるまいはしました」
「しかしあの家光をも抱え込むとは大した男だ利常は」
「でも、決して改易※4につながるようなことはせず計算ずくで動いておられました」
「ねぇ。タケチョ。あなた死ぬ前に利常様に『お前を殺しておきたかったけど秀忠がかばうので助けてやったのだぞ。その莫大な恩を忘れるでないぞ~』っていったでしょ?」
「そんなこと言うたかなぁ…」
「死に際まで悪役ぶらなくても上様のお心は良く分かっていたと、利常様は懐かしそうにおっしゃってたわ」
「たしかに…伏見ではじめて十三歳の利常におうた時、すでに、その眼力は只者ではない輝きをもっておったわい」
「大切な母上を人質にしてまで利長様が守った領国です。御自分を認めてくださった利長様のためにも、利常様は民を一番に考え守り抜いたのでございます」
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