百万石メモリーズ 第七景「奇岩胎内めぐり那谷寺・女人救済の遊郭串茶屋」
百万石メモリーズについて
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様「珠姫(主人公:たまひめちゃん)」が前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現代の加賀百万石を訪れる。 加賀百万石の各地にあるパワースポットや歴史的な場所を巡る物語。
この物語は、第一景から第十二景まであります。今回の話は第七景となります。
「百万石メモリーズ」全12章
■第一景 珠姫のお寺天徳院・白蛇龍神の金澤神社
■第二景 珠姫が通った子宝観音院・金沢城鬼門封じの五本松宝泉寺
■第三景 殿様の眼病治した香林坊地蔵尊・縁切りと縁結び貴船明神
■第四景 百万石まつりの尾山神社・十二支巡り願掛け香林寺
■第五景 希望が見える富樫城址・三天狗が守る前田家の裏鬼門
■第六景 利常の小松城址と浮宮天満宮・大聖寺の金龍山実性院
■第七景 奇岩胎内めぐり那谷寺・女人救済の遊郭串茶屋
■第八景 白山信仰の白山比咩神社・金運の金劔宮
■第九景 入らずの森気多大社・隠し砦の妙成寺五重塔
■第十景 海流が交わる聖域珠洲岬・日本海を守る須須神社
■第十一景 化け鼠と戦った猫墓法船寺・夢枕に立った白蛇養智院
■第十二景 船出の大野湊神社・浄化の霊山医王山寺
第一景は無料でご覧いただけます。
第二景から第十二景までは、各話後半部分が有料(1話100円)になっております。
今後グランゼーラ公式noteでは、毎月1日と15日に順次配信してまいります。
一挙に最終の第十二景までご覧いただきたい方は、下記の電子書籍ストアにて販売中です。
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百万石メモリーズ公式サイトはこちら→https://www.granzella.co.jp/contents/book/
登場人物紹介
・珠姫(たまひめちゃん)
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様で、この物語の主人公。
前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現在の加賀百万石の様々な場所を巡る。
・タケチョ
徳川家康公の前世の記憶を半分抱え、輪廻転生した。
孫である珠姫が心配で、豆狸の姿に変身して旅に同行している。
著者:麻井 紅仁子
編集・イラスト:ほんだしょうこ
第七景
奇岩胎内めぐり那谷寺~女人救済の遊郭串茶屋
「さぁ!次は那谷寺にまいりますよ」
「ケイスケその那谷寺は利常様とどんな関係があるの?」
「利常様は小松を隠居の場と決め、築城にあたって加賀藩きっての名工たちを連れてきたことはお話しましたよね」
「はい。だから小松には素晴らしい職人や名工がいて発展したと」
「その時、お城だけではなく貴重な寺院に多く手を入れ再興されたのです。
小松の有名な『お旅祭り』を行っている兎橋神社などもかつては城内にあり、利常様が整備拡大されたものです」
「そういえば博物館でみた城下の模型にも兎のつく橋や門がいくつもあったわね!」
「なかでも那谷寺は創建が奈良時代と古い寺。最澄が開いたといわれ、その歴史は千三百年にもなる社ですが、安土桃山時代に火災にあいその時期は荒廃していました」
「そこを利常様が…」
「鷹狩りの途中偶然見つけられたそうです。ゆえに利常様は那谷寺中興の祖※1 として崇められております」
「へぇ、それで利常様の肖像画があるのね!早く行きましょう。ねぇ、はやくぅ~」
「唯一と言われる利常様の肖像画で那谷寺の宝物の中でも貴重な品です。僕は何度も拝見しておりますが、かなり晩年のお顔だと思いますよ」
「貴方の父上はそれはそれは素敵な殿だったの。あの銅像みたいじゃないの。さっ!早くいきましょう」
利常の手で小松は大きく発展いたしましたが特に那谷寺は多くの名人職人の手をもって本殿はじめ護摩堂や鐘楼などすべての建造物や庭園までその復興は見事なものでございますよ。
両側に杉の木を植えたため、杉の木街道とよばれる参道には利常公お手植えの杉もございます。
「なんだかとても体も心も軽くなったような気がしませんこと?」
「それはきっと、那谷寺本殿の『いわや胎内くぐり』の参拝体験をされたからでしょう。生きているもろもろの罪を洗い流し再び母の胎内より白山のように白く清く生まれ変わり出直すことができるといわれておりますから」
「さすがリョウスケさん良くご存じなのね」
「いえ、ご本尊の前に置かれた紙にそう書いてありました!」
「まあ…リョウスケさんたら、ふふふ。あっ!この建物ね新しい十一面千手観音様」
「姫様、金堂華王殿の前にある細長い…そうそう!そこにお手を添えてみてください」
「こうですか⁉」
「はい、その細い塔から、建物の屋根のなかに紅白の紐が伸びてますよね?」
「ええ。お屋根の軒下から建物のなかに…」
「今、観音様のお手とつながっていますよ!」
「えっ⁉どういうことなの?」
「では、どうぞ中にお入りください」
リョウスケのあとをついて入った金堂華王殿にはそれはそれは、大きな観音様がお立ちになっております。
しかも、その合掌された御手にはなんと紅白の綱がむすばれているではございませんか。
「まあ…!こういうことだったのですね‼」
「はいこれで衆生と観音様は結ばれます」
「なんて素晴らしいの!どんな悩みもあの千のお手で支えていただけそうで心が強くなるわね」
「で、いかがでしたか、利常様の肖像画は」
「肖像画よりもその横にあったお箏!驚いたわぁ。上杉謙信から加賀藩に譲られたって書いてあったけど、べっ甲螺鈿飾りの見事な楽器だったわ。弾いてみたかったなぁ…」
「母上は箏の名手でしたからねぇ。気になりましたか」
「それに『萬暦五彩草花龍文瓶』も素敵だった。口の部分にも龍や雲が配されていて」
「いえ、宝物のことではなく肖像画の」
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