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百万石メモリーズ 第四景「百万石まつりの尾山神社・十二支巡り願掛け香林寺」
百万石メモリーズについて
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様「珠姫(主人公:たまひめちゃん)」が前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現代の加賀百万石を訪れる。 加賀百万石の各地にあるパワースポットや歴史的な場所を巡る物語。
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この物語は、第一景から第十二景まであります。今回の話は第四景となります。
「百万石メモリーズ」全12章
■第一景 珠姫のお寺天徳院・白蛇龍神の金澤神社
■第二景 珠姫が通った子宝観音院・金沢城鬼門封じの五本松宝泉寺
■第三景 殿様の眼病治した香林坊地蔵尊・縁切りと縁結び貴船明神
■第四景 百万石まつりの尾山神社・十二支巡り願掛け香林寺
■第五景 希望が見える富樫城址・三天狗が守る前田家の裏鬼門
■第六景 利常の小松城址と浮宮天満宮・大聖寺の金龍山実性院
■第七景 奇岩胎内めぐり那谷寺・女人救済の遊郭串茶屋
■第八景 白山信仰の白山比咩神社・金運の金劔宮
■第九景 入らずの森気多大社・隠し砦の妙成寺五重塔
■第十景 海流が交わる聖域珠洲岬・日本海を守る須須神社
■第十一景 化け鼠と戦った猫墓法船寺・夢枕に立った白蛇養智院
■第十二景 船出の大野湊神社・浄化の霊山医王山寺
第一景は無料でご覧いただけます。
第二景から第十二景までは、各話後半部分が有料(1話100円)になっております。
今後グランゼーラ公式noteでは、毎月1日と15日に順次配信してまいります。
一挙に最終の第十二景までご覧いただきたい方は、下記の電子書籍ストアにて販売中です。
・Apple Books
・Kindle
・Google Play Books
・Rakuten ブックス
百万石メモリーズ公式サイトはこちら→https://www.granzella.co.jp/contents/book/
登場人物紹介
・珠姫(たまひめちゃん)
江戸から加賀藩に嫁いできたお姫様で、この物語の主人公。
前世の記憶を半分抱えて輪廻転生し、現在の加賀百万石の様々な場所を巡る。
・タケチョ
徳川家康公の前世の記憶を半分抱え、輪廻転生した。
孫である珠姫が心配で、豆狸の姿に変身して旅に同行している。
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著者:麻井 紅仁子
編集・イラスト:ほんだしょうこ
第四景
百万石まつりの尾山神社~十二支巡り願掛け香林寺
「カオリ、ここが政重の屋敷跡なの?」
「この蔵品館がというより、周辺一帯ですね。美術館や歴史博物館、護国神社やコンサートホールなど全てが、本多政重のお屋敷があった場所です」
「利常様は政重を大事にしてたものねぇ。当初は徳川のスパイ疑惑で苦労したみたいだけど」
「最初は徳川の家来、その後いろいろ回って前田への士官を二回したそうです。利長様時代にも二年ほど勤めたようです」
「奴はもともと俺の重臣、本多正信の次男坊でな。そうだ、あの前田慶次とよく似た正義感溢れる男だったわ」
「あら~!珍しいタケチョが褒めるの?前田慶次は利家様の甥っ子でしょ?」
「ああ、奴を見込み、前田への二度目の奉公を持ちかけた利常に惚れたのであろう。それからは命懸けで利常の片腕になった」
「利長様がタケチョのしつこい嫌がらせにご自分の隠居領地二十二万石返還を申しでた時だって直談判したそうね。
政重はタケチョの重臣だった自分の父上や兄上の力をかりて結果チャラにしたと聞いたわよ」
「まあな、どうだ俺も太っ腹じゃろう。奴に免じて返還話はなかったことに…」
「またぁ。ズル狸のタケチョには何か計算があったんでしょうけどね」
「おいおい、どうしてでも俺を悪者にするのか」
「冗談よ。誰が何を言おうがタケチョの本当の優しさはたまが一番知ってるから。あの時代タケチョが天下を取ったからこそ今の日本があるんじゃない。人の心も評価もみんな裏と表があるものよ」
「政重はあの時の褒美に加増され五万石の家老になったんじゃったな」
「あら、利常様が十万石にというのを政重がどうしてもと固辞したのよ」
「その時利常が与えたのが、この『村雨の壺』ゆえに五万石の壺と言われ、拝むと立身出世するといわれているのだなハハハハ。
しかしなぁ一万石以上の家老が八人もいたというのはさすが百万石だ」
「加賀八家のことね。たまの孫の五代藩主が制定したそうよ。そうだ、兼六園だってその孫が作ったのよ!」
本多蔵品館に展示されている本多家の家宝『村雨の壺』の前でワイワイ話していると少し片足を引きずりながら駆け寄る細身の紳士が。慌てて秘密のお道具をかざす珠姫でした。
「まあ!噂をすれば政重ですね!元気そうで」
「いや~もう歳ですから、今日は姫にお目にかかれると思って精いっぱいめかし込んできましたぞ!」
「おい。政重、久しいのう~。俺だ。家康じゃ」
「おおっ!大御所様、ぷっ、クスクス…」
「笑うな、失礼な奴じゃなぁ!」
「申し訳ございませぬ…しかし…やはり…ムフフフ」
「おい、それよりその足はどうした?お前の親父は関ヶ原で膝を痛めて、それからずっと片足を引きずっておったが、今歩いてきた姿が瓜二つじゃったぞ!」
「いえ、昨日ゴルフでちょっと」
「ならばよいが、お前の父正信という参謀がいなければ、徳川の天下も、その後の繁栄もなかったかもしれんわ」
「ありがたきお言葉。父が聞けば…」
「いや、『いさめてくれる部下は、一番槍の勇士にまさる値打ち』そのもので俺には大事な家臣…いや友であったわ。
しかし、人の縁とは誠に不思議なもの。お前が加賀に落ち着き利常の懐刀になるとは」
「と言いますと?」
「知らなかったのか?お前は、父正信がこの加賀にいたとき誕生したことを」
「初耳でございます」
「正信は一時期俺の碌を離れ行方が分からなくなった時期があるのじゃが、その時、この加賀で織田信長と戦っていたと俺は思っている」
「なぜでございますか?」
「ヤツは熱心な一向宗徒であったからたぶん加賀尾山御坊にこもっての戦に参加していたのだろう。俺に迷惑をかけぬよう密かにな…」
「その間に産まれたのが私と?」
「ああ、その後妻を亡くし、三河国の大久保を通して俺のところに戻った時には、幼い息子を二人抱えていたわ」
「では、私の原点はこの加賀だったのですか。なんと…感無量です…!」
「うむ。俺はそう睨んでいる。で、現世ではお前は何をしているのだ?」
「野菜生産者と消費者を結ぶ会社を営んでいます」
「おお、加賀野菜か?」
「もちろん加賀野菜も扱っておりますが生産者の苦労に報いるには、全国ネットワークが大切と考えております」
「なるほど…さすが本多政信の息子だのう。やつも国中に情報網を持っておったわ」
男二人の小難しい話に退屈になってきたのか珠姫があくびを噛みころしているのを見たリョウスケが、すかさず声をかけてまいりました。
「玄関に車を回してありますので、そろそろ今夜の会食場所に移動をお願いいたします」
「まぁ。なんて素敵なコーディネーターなの!さすがリョウスケ、気が利くわね‼」
「おい、政重この社は?なにか感じるぞ」
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