高齢女子、旅先で倒れる
お邪魔します。凜です。
一昨年の暮れの頃、じじ様が入院中のときのお話。娘のバリキャリが「気晴らしに旅行に連れていってあげるよ」と一言。
その頃は必要な物資を病院に届けたり、お茶を注文したりとバタバタが続いておりました。旅の準備をしながらお家のことにも追われて忙しない日々が続き。なんとか旅の準備を終えて、新幹線に乗り込みました。
「何かおかしい……」
新幹線の中で、何やらお腹の調子に異変が。しかしその時は「まあ大丈夫でしょう」など気楽に構えておりました。
それでもお腹の様子は治ってはくれず、目的地に着いた頃にはもう何も食べられません。娘が美味しそうに食べているお饅頭もおばあさんは我慢。その時もまだ「下痢かしら」「ちょっとお腹の調子が悪いのよね」程度に思っていたのです。
しかし翌日になり、歩けなくなるほどお腹の調子は悪化。これは旅行どころではないと病院へ伺いました。薬をいただき、おばあさんはただずっとじっとして何もできません。
申し訳なさでいっぱいなおばあさんとは裏腹に、娘はテキパキとしています。「もっと着やすい洋服がいいんじゃない?」とホテルから車を走らせ、一番近い百貨店で洋服を買ってくれました。
「似合うからこれにしよ」「サイズはいいよね?」
気持ちが嬉しくて、床に涙がこぼれ落ちそうになったことは、娘には内緒です。
その晩は、解熱剤を飲んで眠りました。本当は3日目には帰る予定でしたが、おばあさんはトイレにこもりっきり。新幹線で家に帰ろうとすると小1時間ほどかかります。
いつもはそっけない娘もさすがに心配そうな面持ちで、わたしの顔を覗き込んで言いました。
「お腹大丈夫?」「何かあっても困るよね。今夜から2日ほど、ここに泊まろう」
タクシーで向かった先のホテルは、何やら豪華な風貌。ホテルのロビーからは、斜め前に大学病院の緊急搬送口。
「ここなら安心よね」と娘はにっこり。
そう、娘は万が一に備え『冬のボーナス』を投げ打って、病院から一番近い、今までに泊まったことのない高級ホテルを取ってくれていたのです。
娘は、知らないところで親を守ってくれる大人になっていました。
子どもは知らない間に大人になっています。
親は年を取って、子どもみたいになっていくんですね。
無事お腹の調子は落ち着いて、帰宅しました。相変わらずチャキチャキと、お布団をひいて、お風呂も焚いてくれる娘。
そしておばあさんが早速眠ろうとすると……
なんとひいてくれたお布団は、毛布が裏返しでした。
「せっかくひいてくれたのだから」と、その晩は裏返しの毛布のあたたかさに包まれながら眠った、おばあさんでした。
今日もお尋ねいただきありがとうございました。
※この記事は過去のツイートをもとに作成いたしました。