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iDeCo拠出上限の引き上げか?試算で見る影響~最終章~
第1章では、iDeCo(個人型確定拠出年金)の受け取り方法として、「一括受け取り」や「分割受け取り」の基本的な選択肢をご紹介しました。それぞれのメリット・デメリットを整理しましたが、今回は「一括 + 分割」という方法を詳しく解説します。
この方法は、退職所得控除や公的年金等控除を組み合わせて活用できるため、税負担を抑えながら柔軟な資金管理が可能です。しかし、活用するには注意すべきポイントも多いため、具体的な試算を交えながら検証します。
「一括 + 分割」とは?
「一括 + 分割」は、iDeCoの資産を一部を一括で受け取り、残額を分割で受け取る方法です。この方法のポイントは以下の通りです:
1. 退職所得控除を最大限活用
一括受け取り部分を退職所得控除の範囲内に収めることで、課税額を最小限に抑えます。
2. 公的年金等控除を活用
分割受け取り部分については、公的年金等控除を活用し、年間の税負担を軽減します。
試算条件
以下の条件でシミュレーションを行いました:
退職金:60歳時に1,000万円受け取り。
iDeCo総資産額:2,518万円。
一括受け取り部分:1,060万円。
分割受け取り部分:1,458万円。
退職所得控除:勤続38年分 → 2,060万円。
年収(60歳~65歳):500万円(給与所得控除後:356万円)。
老齢年金(65歳以降):年額144万円(月額12万円)。
分割期間:5年、10年、20年。
試算結果:税負担総額(所得税 + 住民税)
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注意事項:知っておきたい「一括 + 分割」のポイント
「一括 + 分割」を選ぶ際に、以下の注意点に留意してください
1. 分割の年数や金額は任意に決められない
分割受け取りの年数は金融機関が提示する選択肢(例:5年、10年、20年など)の中から選びます。また、分割金額は選んだ年数に基づいて自動的に決まるため、任意で調整することはできません。
2. 手続きが複雑
一括部分と分割部分を設定するため、金融機関への詳細な手続きが必要です。特に退職所得控除や公的年金等控除を最大限活用するためには、正確な計算が求められます。
3. 分割期間中の税制変更リスク
長期間の分割受け取りを選んだ場合、税制が変更されるリスクがあります。例えば、公的年金等控除の縮小や所得税率の変更などが考えられます。
4. 受け取り途中のライフイベントに対応しづらい
分割受け取り期間中に急な資金需要が発生しても、iDeCoの資産は予定どおりの金額しか引き出せません。
「一括 + 分割」のメリット
1. 税負担を分散できる
一括受け取り部分で退職所得控除を最大限活用し、分割受け取り部分で公的年金等控除を適用。
2. キャッシュフローの柔軟性
初期にまとまった資金を確保しつつ、老後の生活費として安定的に分割受け取りが可能。
3. 資金の長期的な管理が容易
分割期間を長くすることで、資産の早期枯渇リスクを回避。
結論:どの受け取り方が最適か?
試算結果と注意事項を踏まえると、以下の選択肢が見えてきます:
1. 税負担を最小化したい場合
一括受け取り(106.25万円)が最適。もっと言えば一括+5年分割。(分割額が1年あたり60万円未満になるように)
2. 初期資金の確保と税負担のバランスを重視したい場合
一括 + 分割(20年分割:298.4万円)が適しています。
3. 老後資金を安定的に活用したい場合
分割期間を長く設定(20年分割)することで、年間の負担を軽減できます。
今後の展望:税制や年金制度の変更
今後の税制や年金制度の動向は、iDeCoの受け取り方法に大きな影響を与える可能性があります。
退職所得控除の縮小
現在、20年目以降の控除額は70万円ですが、これが40万円に減少する可能性が議論されています。おそらくこれは実現されてしまうと思います。
そのかわり19年ルールをやめて欲しいですけどね。中途退職した身には、この19年ルールが地味にきついです。
iDeCoの一括受け取りを先にすると5年後に退職所得控除が元に戻るが退職所得控除が10年戻らないという形に変更されましたね。
中途退職者のどれだけの人が退職所得控除を使いきれていると思っているのか・・・
年金所得控除の拡大
現状、2040年問題に向けて年金財源が不足しているのではないかと考えます。そしてその打開策がないのではないかと推測します。
政府は年金受給を少しでも遅らせるため、老齢年金の繰り下げ受給の推奨ならびに年金所得控除額を引き上げることを考えるかもしれません。例えば、70歳以降の控除額を増やすことで、年金の繰り下げを促進するということを考えても不思議ではありませんよね!?今回の退職所得控除の改悪で、財務省がiDeCoを優遇するつもりが全くないことがわかったので、控除額を増やすということにはならないでしょうね・・・
もっとも最悪なシナリオは、控除額が増えるどころか、iDeCoがあるんだから老齢年金の受給開始を70歳からにしよう!となることでしょうね。
それまで働くか、このiDeCoの給付で凌ぐかという感じになるかもですね。
健康寿命が男性で72歳くらいと考えた場合、iDeCoをしていない人は、一生涯働くために生まれてきたみたいになるでしょうね。
退職所得控除について税務署に問い合わせてみた!
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退職所得控除より退職金が少ない場合、この計算式に当てはめて退職所得控除を使用したものと考えて、次回退職するときはこのときの残年数を加算することができるのか?
これはNOでした。2か所以上就業期間が重複していることが前提で、その重複期間がこの式に当てはめて退職所得控除を使用した期間と見なすという回答でした。
では、iDeCoは重複期間と考えるのではないの?その場合はどのような考え方になる?という問いには、「iDeCoのことはわからないのでiDeCoの方で聞いてください。」だそうです。
税金をきちんと申告して支払えという割にはこのような回答です。そして、申告を間違えると追徴や過怠税等を平気で徴収してきます。
本当に税務署職員や税理士は、回答の仕方と回答する態度が時代遅れだなと思います。
だから税金を1円たりとも払いたくないと思うんですよね。
話しは逸れてしまいましたが、このような予想を立てると悲しいかなどこまでいっても団塊ジュニア世代は、結局報われないですよね。
政府の失策のツケを払わされる世代なんですよね・・・
世代の人数は多いので、もっと声を上げないと生涯「忘れられた世代」になってしまうのでないでしょうか。
まとめ
結局、「一括受け取り」が最も税負担が少ないという結論になりましたが、「一括 + 分割」は、退職所得控除と公的年金等控除を組み合わせることで、税負担を分散しながら老後資金を効率的に管理することができます。
今回は、iDeCoのみを「一括+分割」で考えましたが、退職金自体も会社からと中退共等と合算の場合、そちらも「一括+分割」という方法を取り入れると、さらに節税効果が見込まれる可能性があります。
ただし、分割年数や金額が任意に決められない点や、税制変更リスクがある点に注意が必要です。
iDeCoの受け取りは、税負担だけでなく、ライフプランや資金需要に合わせた選択をすることが重要です。
この記事が、その判断の参考になれば幸いです!