(現・美深町地域おこし協力隊員)有坂さんにインタビュー

この記事について

美深町地域おこし協力隊員(元・現役)に美深町地域おこしインターンの橋本がインタビュー。地域おこしになるまでの経緯や、地域おこし協力隊員としての活動、また移住について聞いていきます。美深町での地域おこしに興味がある方、地域おこし全般に興味がある方、他の地域で地域おこしをされている現役協力隊員の方、必読です!
インタビュワー:橋本(美深町地域おこしインターン)& 佐久間(美深町地域おこし隊員)


有坂さんについて

茨城県鹿嶋市出身(中学生の時に家族で東京に引っ越す)。大学卒業後、3年間東京にあるIT系の会社に勤
務。2021年から美深町地域おこし隊員として、美深の特産品であるチョウザメの飼育を行っている。

どうして地域おこし協力隊員に?

橋本:どうして地域おこし協力隊員になろうと思ったんですか?
有坂さん:「町おこしするぞ!」と考えたことはあまりなくて、地域おこし協力隊に応募した理由は興味本位でしたね。前職はIT系で、VRやARを作る会社に勤務していました。大学卒業後3年間その会社で働き、自分の中で一区切りがついて「転職活動を始めようかな」と思っていた時、「地域おこし協力隊」の制度があったことを思い出したんですよ。
佐久間さん:「地域おこし協力隊」を知ったきっかけは何だったの?
有坂さん:転職を考えている時に、母親が「リンゴが好きなら地域おこし協力隊で青森にリンゴでも作りに行ったらいいんじゃない?」と言ったことがあったんです。それで、「なんだそれ、無茶苦茶じゃねーか!(確かにリンゴは好きだけど、、)」と思ったんですけど、それがきっかけで「地域おこし協力隊」っていう制度に興味を持って調べ始めましたね。
橋本:どうして美深で地域おこし協力隊をすることになったんですか?
有坂さん:心機一転したかったこともあり、青森まで行くなら北海道に行ってみたいと思いました。あと、馬が好きなので、畜産をやりたかったこともあります。それで、地域おこし協力隊のサイトで北海道の畜産系を検索していたら、見慣れない魚が通り過ぎたんです。紹介ページを見てみたら、「チョウザメを育ててみませんか?」と書いてあって、昔チャレンジのコラムでチョウザメが三大珍味のキャビアを作る魚だと紹介されていたことが急に思い出されたんです。それで、「なんの経験もなくこんな面白いことができるんだ」と思って美深の地域おこし協力隊に興味を持ち始めました。

橋本:なるほど!それは何だかチョウザメとの運命的な再会ですね。それで、すぐに応募をしたという感じですか?
有坂さん:募集を見つけたのが1月の末で、それからすぐに応募して、2月には役場の方とオンラインで面接。すぐ合格の返事を頂いたんですが、冬には引っ越せないので、6月スタートということになりました。なので、ここから4か月間はバイト生活が始まります笑。これを機に色んなバイトをしてみようと思い、競馬場の警備員、コールセンターなど、色々やりましたね。

移住について

引っ越し準備と居宅

橋本:東京から北海道への引越しはスムーズでしたか?
有坂さん:引っ越し代は、支度金10万で丁度間に合ったくらいです。最初東京の引越し会社に見積もりを頼んだ時は30万って言われて「どうしよう、、」と思ったんですけど、北海道を拠点にしている引越し屋さんに再度見積もりを頼んだら、ギリギリ10万円くらいで引っ越すことが出来ました。
佐久間さん:家に下見に行ったりしたの?
有坂さん:直前まで他の人が住んでいたので、どの部屋に自分が住むのか分からなかったんですが、事前に写真で内装は見せてもらいました。実際に移った後は、「こんな家に住めるの?」と感動しました笑。
東京で住んでいた家がすごく狭くて日の当たらない様な物件だったので、ありがたかったです。あと、備え付けのストーブがあることにはびっくりしましたね。

大変だったこと

有坂さん:雪は想像してた以上でした。東京だったら1-2cm積もっただけでニュースになりますけど、こっちは1m60㎝くらい降った雪を除雪するから、すごく高い壁ができるんですよ。防寒着も、どんなものが防寒着なのか最初は分からなくて。周りから「長靴を買え」と言われたから普通のゴムの長靴を買って履いたら足がかじかんで凍死するかと思いました。
それでみんなの足元を見たら、中に敷くクッションみたいなものがあって、「こんなものがあるのか!」とその日に名寄へ行き購入しましたね。
佐久間さん:チョウザメの飼育は、冬場は大変じゃない?
有坂さん:たまに冬場に配管に詰まった氷を出さなきゃいけない時があるんですけど、その時は水から手を抜くと腕が真っ赤になっています。でも直接冷たいのはそれくらいですかね。施設の温度は一定なので、冬のチョウザメ作業はあまり過酷では無いですよ。冬に大変なのは屋根の雪を下ろしたりとか、施設の整備ですかね。施設が広いので。
有坂さん:あと、車の運転は最初すごく怖かったですね。チョウザメの施設付近で練習をしてました。
引っ越した当初は車を持っていなかったので買い物は大変でしたが、車を持ってからは不便することは無くなりましたね。今はオンラインでも何でも買えるので。
一番辛かったのは距離感がつかめなかったことですかね、、(北海道は広すぎる!)実のところ、応募するまで美深の場所をあまり調べていなかった
んですよ。「北海道のどこかだろう〜あわよくば札幌の近くがいいな〜」みたいな感じで応募したものですから、美深に来ることが決まり、場所を改めて見たときはびっくりしました。
橋本:2年経つと、大分慣れるものですか?
有坂さん:活動圏自体が相当広がったので、今は何とも思わなくなりましたね。映画を観にいくのが好きで東京にいた頃はよく駅の近くの映画館に行ってたんですけど、今は映画を観に行くとしたら旭川なので、「旭川まで車で行って、ランチでもして帰ってくるか〜」みたいな。時間の感覚は変わりましたね。
有坂さん:他にも、東京なら即日で仕上がるスーツのクリーニングが1週間かかったり、Wi-Fiの設置に1ヶ月かかったり等々、カルチャーショックみたいなものも最初は結構ありましたが全ては慣れです。

美深の良いところ

有坂さん:雪は降りすぎ!とイヤになることもありますが、美深の除雪はすごくきれいで、ほかの街へ行くとその違いがわかります。
北海道に住んでいて自分に合うと思うことは意外に多くありました。
美深は人が良いですね。こっちに来る前は「田舎=排他的」っていう勝手なイメージがあったんですけど、実際は普段の挨拶から会話に弾むくらいフレンドリーな人が多くて。美深に引っ越して来たばかりの時、「今日から北海道住むんですよね」ってスーパーのレジの人に話したら、「ええ!美深に
ようこそ。よく来たね!」と言ってくれて「あぁ、あったかいな」と思ったのをすごく良く覚えています。町役場の方々もみんな心配してくれますね。
佐久間:美深は、助けてくれる町だよね。
有坂さん:チョウザメ館から近いので道の駅に行くことが多くて、一年通して品揃えを見ているんですが、やっぱり安いんですよね。東京に住んでいるとスーパーに色んな地域の野菜や果物が年中並んでいて、あまり季節感を感じることが出来ないんですけど、道の駅で旬の野菜が安く売られていたり、ジャガイモとかが箱でどーんって売ってたりするのを見ると、地産地消というか、地域柄を感じられて面白いですね。「友達に送ろうかな!」なんて思っちゃいます。

道の駅びふか

地域おこし協力隊員の仕事について

橋本:チョウザメの仕事って、どんなことをしているんですか?
有坂さん:水槽の掃除、餌やりなどのチョウザメの飼育をしています。
その他、飼育環境を良くするために外水槽の蓋や施設内の棚を作ったり、敷地が広いので草刈りをしたり等と、施設の整備もしていますね。
あと、チョウザメの魚肉も捌きます。去年は毎日10匹くらい捌いてホテルに卸していた時期もありました。基本的に毎日やることはルーティン化されていて、月毎にすることも大体決まっています。一大イベントは7月上旬に行うキャビアの採卵で、それから冬にかけてまたずーっとキャビアを作っ
ていきます。
橋本:チョウザメ飼育のやりがいは何ですか?
有坂さん:やっぱり、キャビアを作ることですかね。チョウザメは10年経たないと卵を持たないんですよ。しかも初年度の卵は小さいから大体流します。その3年後にまた卵を持つので、最初のキャビアが採れるまでに13年かかる。なので、キャビアが採れる時は「よく育ったな〜」という思いがしますし、自分が育てていたものが商品になった時の喜びはとても大きいです。

チョウザメの稚魚

あと、自分個人としてはチョウザメの魚肉を活用してカマボコとかハンバーグとかを作って、「もう少し味変えたらいいんじゃない?」とか感想をもらいながら試行錯誤することも楽しいです。忙しい時期とそうでない時期が結構くっきり分かれていて普段の業務もルーティン化しているので、その中で自分のやりたいことを探せるとチョウザメは楽しいと思います。

地域おこしをやりたいと思っている人へのメッセージ

”3年間は準備期間”

有坂さん:字面に囚われて、地域おこしを高尚なものと捉えない方がいいと思いますね。「3年の間で何かを成し遂げよう!」と思わず、その3年間は人付き合いとかを構築して地域に溶け込む努力をする「準備期間」と思った方が良いと思います。本当に地域おこしをしたいなら、その3年後からが本当のスタートなのではないかと思います。自分にあった地域で自分のやりたいことをするのが大事。「わくわくすること」が何より大事だと思います。

今後の進路について

”美深に将来戻って来るっていう選択肢は、いつもどこかにある”

有坂さん:来年任期が終わったら東京に帰ります。美深に滞在するマイナスな要素は一切無くて、「何のしがらみもなければここにいてもいい」というくらい美深は僕にとって良い町でした。
しかし友人から東京で会社の立ち上げに誘われ、そこに挑戦したいと思ったんです。会社を1から起こす機会にはなかなか出会うことができないし、「わくわく」しました。1人ではできないことなので、この機会に一緒にやってみたいと思いました。
でも、自分が関東で事業をして、その次のステップで何かする時に、その舞台が美深になることは全然あると思います。
橋本:なるほど。そしたら、有坂さんにとって美深は「第2の故郷」みたいな感じなのかもしれませんね。
有坂さん:そうですね。人間関係を含め、既にベースが構築されている美深に将来戻って来るっていう選択肢は、いつもどこかにあると思います。

チョウザメ担当の仲間と地域おこし協力隊仲間と一緒に



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