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大学院は「ゆっくり時間をかけて大人になれる」場所

日本では、大学を卒業してすぐに就職するのがまだまだ一般的だ。
私のnoteを読んでくれている方々も、新卒で就職した人が多いかもしれない。

しかし私は、大学を卒業してからすぐ、大学院に2年間行っていた。
今日は大学院に行くことの良さについて、私なりの目線で書いていきたいと思う。
(あくまでストレートマスター(=大卒ですぐ大学院に進学するパターン)の目線で書いていきます)

研究力=文章力や事務能力の証明になる

文系修士卒は就職に不利などと言われることが多い。
しかし私は、修士卒はある程度の文章力や思考力、事務能力の証明になると思う。

言うまでもなく、大学院生は100ページ近くに及ぶ修士論文を書きあげなければならない。
その過程で、とにかく文章をひたすら書く力や、大量の情報をいかに分かりやすく構成するかという力を、嫌でも身につけなければならない。
修士は博士と比べて取るのは簡単で、「とりあえず書けば審査は通る」とも言われがちだ。
しかし、意味不明なことを意味不明な順序で書くわけにはいかない。
ある程度の論理性や文章力を持っていなければ、修士を卒業するのは難しいと思う。

また、修論提出までには、膨大な事務作業を乗り越えなければならない。
ゼミ発表や学会発表の資料提出、ドラフト提出、調査のアポ取り、膨大な量のデータの整理、教授の手伝い、偉い人へのメール作成 etc…
大学院生というと「好きなことを追求しているだけ」というようなイメージを持つ人も多いかもしれないが、実際は上記のように大量の事務作業を日々こなしている。
さらに、日本の学術界はまだまだ礼儀を重んじる風潮があるので、正しい敬語でのメールや、お世話になった方への贈り物などの礼節ができないと、信頼してもらえない。
その辺は大学院でかなり鍛えられたように感じる。

まだまだ文系修士卒は就職に不利などと言われることが多い。
しかし、大学院を卒業するのにどのような能力が必要なのかを分かっている人事であれば、それを能力の高さとして評価してくれると思う。
(特に教育業界では評価されやすいと感じます)

研究者の世界が垣間見える

また、少しでも「研究者になりたいかも」と思っているなら、まず大学院に行ってみることをおすすめする。
なぜなら、学部生と比べて、研究者の世界がより近くで見られるからだ。

学会とはどんな雰囲気なのか。
研究者のコミュニティでの作法は何か。
大学の先生たちがどんな生活をしているのか。
大学の授業をするとはどういうことか。
論文を投稿するとはどういうことか。 etc…

これらのことを間近で見ながら、自分の進路について考えることができる。

ちなみに私は大学生の時、研究者になる道にも関心があった。
しかし、大学院で実際に研究者の世界を見てみて、「研究者よりも教員になりたい」と思った。
というか、「現場で生徒と向き合った経験なしに研究者になるのは違うな」と思ったのだ。
いずれ研究の方に進むかもしれないし、教員で一生を終えるかもしれない。
それはまだ分からないが、一旦「教員をやろう」という決断ができたのは、研究者の世界をしっかりと知れたからだと思う。
そういう意味でも、大学院に行って良かったと思っている。

ゆっくりと社会に出る準備ができる

もう一つ個人的に良かったと思っているのが、大学院に通っている間に、「社会に出るぞ」「働くぞ」という心の準備ができたことだ。

多くの人は学部を卒業したタイミングで就職する。
もちろんそれを主体的に選んでいる人もいると思うが、「みんなが就職するから」「レールを外れるのが不安だから」といった理由で就職している人も多いのではないだろうか。
そういう人たちの中には、「働くぞ」という心の準備ができていなかったり、自分なりの「働く理由」を見つけられずに、社会に出てしまった人もいると思う。

少なくとも私は、学部を卒業する段階で、働くための心の準備は全くできていなかった。
大学時代に夢中になっていた活動があって、将来のことをじっくり考える余裕が全くなかったからだ。
そのため、大学院に在籍しながら、将来について考える時間をじっくり取ることができたのはとても良かったと思っている。
大学院時代は、「自分は何がしたいのか」「どのような働き方が理想か」などをじっくり考えたり、様々な働く大人の姿を見たり、興味のある本をひたすら読んだりしながら、社会のこと、自分のことをたくさん考えた。
その経験が、今の教員としての実践に、とても活きていると思う。

機能としては「ギャップイヤー」と呼ばれるものに近いのかもしれないが、大学院のメリットは履歴書に空白を作らずにギャップイヤーができるところにあると思う。
しかも、もう一度「新卒」カードを使うことができる。

日本ではギャップイヤーの認知度はまだ低い。
そのため、履歴書に空白があって、「世界一周してました」などと言うと、「おもしろいね」と言ってくれる会社もあるだろうけど、不真面目な印象を持ってしまう会社も一定数いるはずだ。

そのため、働く心の準備ができていない大学4年生にとっては、大学院に行ってじっくり将来を考える時間を取り、それから就職活動をするというのも悪くない手だと思う。

あとがき

このように、私にとって大学院時代は、様々なスキルを育てながら、自分の将来についてじっくり考える期間だった。
そのおかげで、少しずつ「働くぞ」という心の準備を整えることができたと思っている。
感覚としては、大学院時代に「ゆっくり時間をかけて大人になった」という感じだ。

いきなり就職するのも素敵なことだが、学生と社会人の間のクッションとして、大学院という選択肢も悪くないと思う。

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