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秘仏御開帳

同志Aからのお題:直筆サイン

お寺に秘仏があるように、わが家にもいくつかのお宝がある。先に書いた大林宣彦監督のサイン入り「時をかける少女」ブルーレイをはじめ、戸田奈津子さんや関根勤さんのサイン本などなど。中でも思い出深いのが、40年近く前に拝領した藤子不二雄先生の直筆サイン色紙だ。

当時小学校高学年だった私は、祖母からもらったお小遣いを貯めては、街の目抜き通りの向こう側にある穴場的な書店にいそいそと通っていた。文具や事務用品に押され、本は脇に追いやられていたが、右奥の棚に「仮面太郎」「ひっとらぁ伯父さん」「藤子不二雄自選集」など、「てんとう虫コミックス」ではない藤子作品群がひっそりと並んでいるのを発見したのだ。宝の山! これを買わずにいられようか。 

ある日、近所に住む年下のR君と、新宿の藤子スタジオあてにファンレターを送った。「のび太の恐竜」の続編が読みたいです、と書いたっけな。その際、図々しくも「サインをください」と、色紙と切手を貼った返信用封筒を同封したのだった。恐ろしや小学生の勢い。色紙はそのままのサイズでは返信用封筒に入らなかったので、はみ出た部分をハサミでガシガシ切り落とすという奇策を講じた。大胆にも程がある。

しばらく経って、藤子スタジオから大きな封筒が届いた。中に入っていたのは、先生のサイン色紙だ。中央には色鮮やかな手描きのドラえもん。我々が送ったあの色紙ではなく、新しい色紙で!

浮かれに浮かれて、御礼の手紙を書きそびれてしまったことが、悔やまれてならない。F先生は没後25年を迎えるが、復元なった「トキワ荘」にも足を運ばれるなど、ご健在のA先生にはいつか直接、サインの御礼と色紙および不義理のお詫びを申し上げたいと願っている。

…と、書いたところで単純なことに気づく。またファンレターを送ればいいのか。今度は切り落とし色紙は入れずに、手紙だけを。

もちろんキャラクターコーナーにあふれる藤子便箋で。初老にキャラグッズもないが、色紙の四隅を落とした分、私も角が取れたということで、A先生の許しを乞いたい。

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