![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/166146290/rectangle_large_type_2_b561ae21504036b5c2e313b0afad997f.png?width=1200)
銭湯
昼下がり
銭湯に行こうと彼の家を出る。
まだ日差しの残る時間。
銭湯の入り口で、「だいたい1時間後に」と言って
男湯と女湯にわかれる。
まずは…と体を流していると
さっきまで彼に触れられていた余韻が残っている。
少し体が熱くなった。
湯船に浸かって「ふーーー」と
気持ちよさと幸せの混じり合った一息。
湯船から上がって髪を乾かしサッパリしたところで時計を見ると、約束の一時間をすでに過ぎていた。
慌てて外に出ると、銭湯の軒下で長椅子に座っている彼がこちらを向いて、笑顔で「行こっか」と
手を繋いでくる。
冷えた彼の手。
私は両手でそんな手を包み込み「はぁぁぁ_」と息を吹きかけた。
イタズラっぽく上目使いで彼を見上げると
恥ずかしそうで、でも嬉しそうな彼の顔。
手をつなぎながら、くっついたり離れたり。
陽が傾き出したオレンジの空の下を
家に向かって歩き出した。