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銭湯

昼下がり
銭湯に行こうと彼の家を出る。
まだ日差しの残る時間。
銭湯の入り口で、「だいたい1時間後に」と言って
男湯と女湯にわかれる。
まずは…と体を流していると
さっきまで彼に触れられていた余韻が残っている。
少し体が熱くなった。

湯船に浸かって「ふーーー」と
気持ちよさと幸せの混じり合った一息。

湯船から上がって髪を乾かしサッパリしたところで時計を見ると、約束の一時間をすでに過ぎていた。

慌てて外に出ると、銭湯の軒下で長椅子に座っている彼がこちらを向いて、笑顔で「行こっか」と
手を繋いでくる。

冷えた彼の手。
私は両手でそんな手を包み込み「はぁぁぁ_」と息を吹きかけた。
イタズラっぽく上目使いで彼を見上げると
恥ずかしそうで、でも嬉しそうな彼の顔。
手をつなぎながら、くっついたり離れたり。
陽が傾き出したオレンジの空の下を
家に向かって歩き出した。

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