がまくんとかえるくんと私
あれは確か、小学校2年の国語の教科書。マイペースな「がまくん」としっかり者の「かえるくん」のお話、『おてがみ』はなぜか強烈に印象に残っている。
私の実家には『がまくんとかえるくん』シリーズの作者、アーノルド・ローベルの絵本がいくつもある。小さい頃、何度も母親に読み聞かせてもらったり、自分で読んだりした。
彼の描くやさしい動物たちとストーリー(そして今思えば素晴らしい翻訳も)が大好きだ。展覧会が開催されるとなれば行くしかない。アートディレクションは菊地敦己だし。
「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念 アーノルド・ローベル展
会場は立川にあるPLAY!ミュージアム。2020年にできたばかりの「絵とことば」がテーマの美術館だ。
展覧会はアーノルド・ローベル初期の絵本原画やラフスケッチから始まる。ロサンゼルス生まれNY育ちの彼は美大を卒業した後、家族を養うために広告業界に入った。しかし絵本作家の夢を諦めず、ポートフォリオを出版社に持ち込みデビューした。
詩や物語の挿絵を担当したり、お話から自分自身で考えたり。54歳で亡くなるまで、100冊もの本を世に送り出した。
…100冊。すごい数だ。1冊の本になんと数百の挿絵が描かれていることもある。100冊のうち、およそ70冊が挿絵担当で、ローベルは挿絵を描くとき、本の内容に合わせて絵柄を変えていた。絵本作家としてだけではなく、イラストレーターとしての器量にも驚いた。
細かくハッチングで描かれた挿絵の一部
ふたりはきょうも
展示の後半はお待ちかねの『がまくんとかえるくん』シリーズ。
大きく印刷された『おてがみ』がトンネルのように続く。久しぶりにひらがなの多い文章を目で追い、少し鼻の奥がツンとした。
原画だけでなく、絵本のレイアウトやセリフなど、編集者とやりとりを重ねた原稿が沢山展示されていた。これが一番感動した。慣れ親しんだ物語を、英語で読むのも新鮮で楽しい。
編集者は物語の流れやキャラクターの設定を鋭く指摘していることもあれば、「かわいい!」「この表情大好き!」と惜しみなく褒めている。この一言で創作のモチベーションは保たれる。絵本を出版するまで、文章もイラストも練りに練られていることがひしひしと伝わってきた。
おはなしばんざい
絵本の展覧会は本当に癒される。自分の幼少期を思い出しつつ、前向きになれるから。
誰でもがまくんのようにネガティブな日があり、かえるくんのようにテキパキ動ける日があるはず。絵本の短い文章を見つめ、ゆっくりと反芻して、自分の内側を探る時間が心地いい。
ちなみに今回は展示されていなかったけれど、私は『こぶたくん』シリーズがお気に入りだ。こぶたくんとその家族の日常が描かれたほっこり物語。特に、こぶたくんが雨の日に妹のアマンダとお母さんと一緒にオートミールクッキーを作るお話が大好きだ。
ちょっと疲れたとき、この絵本をお試しあれ。
展覧会は2021年3月28日(日)まで、立川のPLAY! MUSEUMで開催中。
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