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三日に一回の髭

髭を剃ったことがあるだろうか。髭だ。
顎の周りや唇の上。意外にも下唇の下にも生えてくる。近年、自分が小さい頃とは比べ物にならないくらい街中には「脱毛」の広告が日常の景色となっている。海外のスポーツ中継を見ている時に頭はツルツルなのに髭はモジャモジャの選手を見るとテンションが上がるのは僕だけだろうか。

さて、本題に入ろう。「髭」を意識し始めたのは小学生5年生あたりだろうか。同級生に背は小さいが、年齢の割に髭が濃い友達がいて、今思えば小学生すぎるのだが、安直に「髭」というあだ名をつけていた。そして一年程経ってから自分にも髭が生えてきた。

さて、この髭をどう剃るか。もっと小さい頃に父親と一緒にお風呂に入っている時に剃っているのを見たことはある。風呂場には父親のカミソリとカミソリ用のジェルは常に置いてある。さて、使って良い物なのか。両親に絶対にバレないようにカミソリを恐る恐る手に取ってみる。まだ生え始めて間も無い、産毛が少しだけ濃くなったくらいの髭にカミソリを当ててみる。少し肌の上を滑らせると髭が剃られていた。空き巣よろしく、カミソリを元に置いてあった向きと位置で置き直して僕の初めての髭剃りは終わった。

中学に上がってから「髭を剃れば剃るほど濃くなっていく」だとか、部活の先輩から「髭の剃り方がまだまだ均一じゃ無いな」と言われたり、髭だけじゃなく、膨張し続けている眉毛を少し整えたりもした。そして髭を剃るたびに少し大人になった自分を感じた。

今では父親とお揃いの電動シェーバーと、鼻毛剃り機まで使い、三日に一回は剃らなければ鏡で見ると「髭生えてますよ」と控えめな主張を感じ取ることができるほどになってきた。なるほど。少しめんどくさい。「脱毛」ブームの原因が少しわかる気がする。

そして初めは産毛のような柔らかい毛であったが、小さい頃に父親の髭で頬ずりをして、「ジョリジョリするー!」と遊んだような枝毛にどんどんとなってきた。そして今日、久しぶりに風呂場で髭を剃った。先輩に均一じゃ無いと言われたが、電動シェーバーという文明の産物にあやかっているので、髭剃りの腕前は成長していない。まだまだ下手くそで、髭の剃り残しもある。

毎回剃り終わると必ず唇の上を撫でる。あの頃に感じた「ジョリジョリ」が今は自分の顔にある。
大人になっているんだなと三日に一回思う。

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