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【比較】流星子と水谷麻衣子の違い

幽霊事件シリーズは先発の星子ひとり旅シリーズとかなり差別化した形で企画が作られているようです。

こちらでもある程度取り扱いましたが、特にはっきりと出るのが主人公の造形です。かなり意識して「かぶる部分を極小にした」ように見えます。こうして並べてみると結構がっつり違います。

スポーツ好き少女 vs 文学少女

流星子は合気道部に所属していて、本人のアクションシーンもあります。逆に水谷麻衣子はミステリ好きで推理小説研究会の会誌で自分も文章を書いたりしています。スポーツはスキー以外は特に堪能であるという設定はないようです。

ショートヘア vs ロングヘア

見た目で一発で区別がつきます。アクティブに動く星子はショートヘア、おとなしい印象の麻衣子はロングヘアです。

スポーティ vs ガーリッシュ

星子はパンツスタイル、キュロットスカートなど動きやすい服も割とあります。麻衣子は親友の中田美奈子との差別化の必要もあるのでしょうが動きやすい服を着る必要がある時以外は基本的にスカート、ワンピースです。

一人旅 vs 複数人旅行

シリーズ名が星子ひとり旅シリーズというだけあって、途中で同行者が現れることはあっても序盤は一人旅です。麻衣子は基本的には複数人での旅行で、時折一人で移動するシーンが入る感じです。

貧乏旅行 vs それなりにリッチ

高校生の星子とアッパーミドル階級の大学生の麻衣子では、かなり旅行の快適度が違います。星子は状況によっては片道分の旅費しかない時すら思いきって出かけてしまいます。

喧嘩っ早い vs 悪口は基本出ない

星子は宙太と口喧嘩も多めで、他の相手とも喧嘩したりします。親とも争ったりします。麻衣子は恋のライバル醍醐玲子以外に対してはあまり生々しい形容はしないし喧嘩もありません。

義侠心 vs 探偵能力

ミステリとしてはとても重要な部分です。星子は困っている相手がいると見捨てられずに飛び出していくことが頻繁にあります。麻衣子はシリーズが進んでいくと、事件を解決した経験を頼られて出向くことが増えていきます。

当事者 vs 探偵役

星子は事件に巻き込まれてその結果いろいろ調べていき真相に辿り着くことになりますが、麻衣子は途中にも何が起こったのか検証し、謎を解いていきます。

惚れっぽい vs 一途

ある意味一番大きな差と言える部分です。星子は旅先で出逢う素敵な男性に、下手すると気付かず殺人犯にさえ憧れたりしていますが、麻衣子は第一作目『清里幽霊事件』で好きになった恋人、日下千尋以外にときめく様子はありません。

割と恋される vs あまり恋されない

星子は自分も惚れっぽいですが、助けたり関わった相手に恋されることもよくあります。麻衣子は小柄でスレンダーな美人という設定はあるものの、恋人の千尋以外で麻衣子を好きになった男性は後輩の高科啓一だけです。

そして最後にさりげない差について気が付きました。

ミステリを読まない vs 研究会に入るレベル

実は星子ひとり旅シリーズを通して、星子がミステリを読んでいる描写はありません。いつも連れ歩くペットの猫ゴンベエと三毛猫ホームズを較べていた箇所はあった気がするので、もしかしたら三毛猫ホームズは読んでいるかもしれませんが、それ以外のミステリ作品は読んだかもと推測するレベルにも出てきません。(小説を読まない訳ではなく、時折小説について語っている箇所があります)
麻衣子は推理小説研究会であれこれ活動をしている時に、いろんな作品を読んでいる描写があります。かなり真面目にサークル活動しているようです。

こうして見ると、思った以上に設定的に違っています。
幽霊事件シリーズの刊行開始が星子ひとり旅シリーズの刊行開始から三年離れていることを考えると、かなり意図的にかぶり要素を外していったのだろうと思います。

星子は初期設定だと田園調布に住んでいる設定だったのが、友達のリツ子の設定にシフトされ、下北沢在住という設定になっています。東京のお嬢さん学校に通っている設定はそのまま継続しているので、家庭の経済力、育ちの部分ではそこまで違わないはずですが、この二人、同じクラスにいても嫌い合うことはなさそうではあるものの、あまり友達にもならなそうです。界隈が違っている気がします。

こう並べてみると、当時「女の子が主人公のトラベルミステリはみんな好きなんだーっ!」という人はともかく、主人公のタイプがかなり違うので星子派、麻衣子派はある程度分かれたんじゃないかと思います。

当時それぞれのシリーズを追いかけていた読者の方々はどちらだったでしょうか?

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館山緑(granat)
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