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Gram Graph scenes from 420 アーティストトーク

2024年7月20日に、写真家:菅梓さんに司会をしていただいてアーティストトークを開催しました。

写真展 Gram Graphは、どのように生み出されたのか、どうして大麻草なのかなど、写真だけではお伝えしきれないこの写真取材に関するバックグラウンドについてお話をさせていただきました。

当日お話したことに加筆してまとめてみました。
少し長くなりますがどうぞご一読ください。

Gram Graph scenes from 420 Photo Exhibition at Manu Coffee KUJIRA Exhibition details.

展示内容
メインビジュアル1点 A2プリント9枚に分割
24名のポートレート写真 A2プリント
マヌコーヒークジラ店の展示内容をまとめたZINE発行
QRコードからインタビュー記事へ

note Gram Graph
https://note.com/gramgraph/

Gram Graph scenes from 420 ZINE Manu coffee KUJIRA edition.
https://tetragraph.com/collections/photoframe/products/zine_gramgraph_scenesfrom420


使用機材
Canon Eos5Dmark2 、mark4
CONTAX Carl Zeiss Planar T* 25mm F2.8/CANON LENS EF 50mm F1.4

プリント
Epson SC-PX1VL 顔料インク10色
サイズ:A2
用紙:ピクトリコプロ セミグロスペーパー 厚み 295μm
額装:広松木工 A2、A3、A4、KG
パネル:ハクバ ワンタッチパネルボード 黒 厚み7mm
 

Manu Coffee KUJIRA

はじめての海外はどこでしたか?

友人に誘われて何も考えずアメリカへ
22歳の時に初めてパスポートを使って旅をしました。
日本からロサンゼルスの空港にたどり着いてすぐ日本へ帰国する留学生の方からコンパクトカメラをもらって、そこから自分の人生の中にカメラという機材を手に入れ写真を撮る生活がはじまりました。

前半は、一人でグレイハウンドバスの周遊券を使いあちこちウロウロした後サンフランシスコに到着。海の見える丘の上にあるユースホステルが安い上にロケーションも良かったのでしばらく滞在していました。

ホステルの外にちょっと古びた黄色いスクールバスが停まっていました。
共同のキッチンでこのバスに乗ってるという若い旅人たちと出会って仲良くなります。お互いこれまでの旅について話をしていると、どうやらあのスクールバスは個人所有のもので、色々な国の人たちがこの車でバンライフをしながらメキシコを目指しているとのこと、好奇心を刺激する話に興味を持ち、食事の後少しだけバスの中を見せてもらいます。

旅が進むにつれて改造を重ねるスクールバス
カリブ海のコスメル島を目指し20人ほどの旅人が乗車

結局、自分の好奇心には勝てず、ちょっとお邪魔するつもりが、そのまま一緒にバンライフをしながら陸路でメキシコを目指すことになりました。この旅の話はとても長くなるのでまた別の記事でご紹介できればと思います。

今回の写真展でメインビジュアルとして壁画のように展示させてもらった写真はこのバスと出会った場所で、2015年に再び訪れた時写真に収めたものです。

SAN FRANCISCO

今回の写真作品「グラムグラフ」という名前について、これは造語ですよね?


はい、アメリカでは普通重さを表示するのにオンス(ounce)やポンド(pound)が使われますが、大麻草の販売ではなぜかグラム(gram)が使われていたので、大麻草をめぐる風景を撮影したいと思ったことからグラムグラフ(Gram Graph)と名前をつけました。

2014年から3年間、写真を撮りに再びアメリカを訪れていますが、前回の旅からどのようなつながりで渡米したのでしょうか?

バスで一緒だった 友人の訃報
バスに乗っていた人たちとは帰国後も何人かと連絡を取り合っていました。ある日、日本でも旅仲間として交友のあった一人のご家族からメールをいただきます。友人が過労から鬱になり自ら命を絶ったという連絡でした。

ボジティブで常に明るく前向きな友人だったので、突然の連絡に思いもよらず大きなショックを受けました。と同時に、同じ時期自分の家族も鬱状態だったため、病院から処方される薬の他に鬱の症状を改善させられる方法はないかと色々な方面から調べていくことになります。

鬱の根本原因は「疲れ」と言われています。体もそうですが精神的な疲れが蓄積していくことで気持ちが落ち込み次第に動けなくなっていく状態。休息のための睡眠や食事について考えながら、漢方薬や東洋医学の視点も含めて海外の情報を中心に調べていったのがきっかけで、大麻草が目に止まります。

大麻草は医療用に留まらず、文化や歴史を紐解くアイテムとしても面白い植物だなと感じながら読み漁っていきます。文化歴史の面から、法律の面から、戦争の面から、社会学の面から、犯罪学の面からなど、医療や薬物以外の側面も非常に多くの情報がありました。

シャーロット・フィギー が生んだ CBD 文化

2013年8月、アメリカのCNNで、コロラド州にすむてんかんの中でもドラベ症候群を患うシャーロットちゃんの闘病生活を追うドキュメンタリー番組「WEED」が放送されました。この番組がきっかけとなって大麻草のカンナビノイド成分の中でもCBDに世界中から注目が集まるようになっていきます。

この報道がきっかけとなって、日本でも大麻取締法には抵触しない方法での大麻草の茎と種から抽出した成分の一部CBDの輸入が始まりました。今ではたくさんのCBDショップができてあまり珍しくなくなってきた大麻草由来製品ですが、当時は非常に画期的なことだったと記憶しています。

茎と種から抽出したCBDの輸入で一気に日本にも医療大麻という言葉が認知されていきます。しかし、法的にあいまいなまま販売を続ける販売店や、リサーチ不足から個人輸入で逮捕者が出るなどの問題も出てきました。勢いがあり過ぎたことも重なって大麻についてしっかり議論する間もなくCBDが一人歩きしていきます。

主作用と副作用
人間の口に入るものには、主作用(有益)と副作用(害)があると考えられています。そのバランスによって人体や社会にとって害になるものかそうでないかの線を引いていきます。

最も評価の高い世界五大医学雑誌の一つ『ランセット』(英語: The Lancet)では、アルコールやたばこ、そしてコーヒーなどの法的にも社会的にも許容されているアイテムも平等に「薬物」として並べて「薬剤特異的死亡率」「薬物関連死亡率」「薬物特異的障害」「薬害」「依存」「薬物特異的精神機能障害」「薬物関連精神機能障害」「財産の喪失」「人間関係の喪失」「傷害」「犯罪」「環境破壊」「家族の逆境」「国際的被害」「経済的コスト」「地域社会」「国際的被害」など細かく比較した表を公表しています。

THE LANCET

それに対して日本では、警察による「検挙率」を前面に出していかに大麻草が危険な薬物であるかに焦点を当てることに突出しており、薬物を判断する上で大切な依存性や致死率や社会的影響などは脇に置かれた状態になっていると言えます。

各国が目安にしている「麻薬に関する単一条約」は、医療や研究などの特定の目的について許可されれば各国の裁量を認めています。この条約が制定された歴史的背景に、戦争と絡んで密売する側を厳しく取り締まることに重きを置いた流れを知ることが必要です。

日本では厳重に「危険な薬物」として管理されている大麻草に対して、一歩海外に出てみると、かなり印象が違ったという経験を持つ人は少なくないと思います。なぜそのようなことが起きているのでしょう。

ハーム・リダクション
亡くなった友人と出会った場所を再び訪れたいと思ったのは、2度目のサンフランシスコ行きが決まった時でした。

海外の薬物事情は、逮捕して犯罪者にすることではなく、保護して医療や福祉へ繋げて治療を施す方向へ向かっています。完全合法化や非犯罪化に繋がるハーム・リダクション政策は、国際社会での共通認識になりつつあります。

その一方で日本は、良くないイメージを流布することにお金をかけて、深く薬物について考えたり語り合ったりできないような雰囲気を広めてしまっているように思います。青少年への薬物教育もこのおかげで薄く浅いものになってしまっています。海外の同年代の子どもたちと薬物の話をする場合において、情報の格差が生じている状態と言えます。

犯罪にしない、アンダーグラウンドにしない選択もある
「薬物」というキーワードから掘り下げていくにつれ、実は政治の都合によって法律の線引きがされている歴史が多いことを知りました。

ハームリダクションとは、そもそも薬物に手を出す根本原因は政治の問題でもあり、社会的弱者となって精神不安から逃れるために薬に手を出している背景があることに注目をして、日常生活のクォリティもケアの対象として保護が必要だと考えられている薬物政策です。犯罪者として逮捕されメディアに晒され社会的な立場を奪い取られながら治療をしない現在の日本のやり方で果たしていいのだろうか?という疑問が生まれます。

医療大麻政策の経験が豊富なカリフォルニアに実際行ってみることで、人々の表情からその実情が見えてくるのではないか、そう思うようになりました。2014年その一歩を踏み出しカメラを持ってアメリカに渡ります。


たくさんの人たちのポートレート写真を撮られていますが、どういった経緯でこの方達と出会い写真を撮影することになったんですか?


調べていくうちに、日本で発信される情報は海外で発信される情報に比べて非常に解像度が低いと感じてきます。なぜそんなことが起きるのでしょう。

カリフォルニアの医療大麻
カリフォルニアは、世界に先駆け医療用として大麻草を解禁したエリアとして非常に有名でした。アメリカではいったいどのように患者に処方されているのか実際この目で確かめてみたいと2014年10月渡米します。

22歳でアメリカを旅した時は、何も考えずに行きたい方向へなんとなく流されるように歩いた旅でしたが、今回は「この記録をまとめて写真集にしたい」という目的ができたので、その企画をひとつひとつクリアするために逆算しながら組み立てた旅となりました。

事前にリサーチや準備ができる部分と、現地へ行ってからじゃないとできない部分に分けてアメリカに渡ります。

私たちの企画を伝えて賛同してくださった人たちから色々な情報をいただき、現地へ行ってからは人から人へ伝達していく中でたくさんの人たちのお世話になりながら、手探りでインタビューの方法を見つけていきます。

2014年にお世話になったのは、オークランドにある大麻草について学べる大学(オークステルダム大学)や、バークレーのアメリカ最古の大麻草専門薬局(バークレーペイシェントグループ)とコンタクトを続けながら、賛同してくださる人から人へのご紹介で撮影を進めていきます。2015年に2度目の渡米をしてインタビューを重ねました。2016年には、バークレーのディスペンサリーの一角をお借りして写真展示をさせていただくこともできました。

バークレーペイシェントグループの運営するディスペンサリー

具体的にどんな方法で取材をしたのか教えてください

インタビューを受けてくださる方への承諾書
写真集にまとめるという目的があるので、インタビュー内容、顔、名前が出ても大丈夫かどうかを一人一人確認してサインをいただきました。

医療従事者の方に作っていただいたインタビューシート
あまり長期滞在はできなかったので、シンプルでもポイントを抑えたインタビューシートにしました。医療従事者の友人に作成してもらい、痛みの表現を10段階にするなど分かりやすい文面で、初対面のインタビュアーも回答しやすかったようです。

写真の方向性を決め、広角の単焦点1本に統一して撮影
アメリカを訪れた時、あまりの広大さに写真に収まらないという経験をしました。ロスの空港でもらったコンパクトカメラは、35mm相当のレンズでした。被写体を含め背景にも印象を持たせた撮影にしたかったので、フィルム時代に使っていたCONTAXの25mm単焦点レンズにアダプターをつけてEOS5Dシリーズに装着して撮影しました。

25mmの単焦点レンズ1本と、予備でいつも使っている50mmの単焦点を持っていきました。ボディは現地で不具合があっても対応できるよう2台。

 Canon Eos5Dmark2 、mark4
 CONTAX Carl Zeiss Planar T* 25mm F2.8

どらさんはよく「大麻草」と呼ばれてますが、普通は「大麻」って言うんじゃないですか?

「大麻」とは法律用語
「大麻」という呼び方が日本では広く知られていますが、これは法律用語です。正式には「大麻草/カンナビス」が植物としての状態を指します。

マリファナ、ヘンプ、インドではガンジャ、チャラス、隠語として使われるポッド、ウィード、グラス、420など、アンダーグラウンドだからこそ様々な呼び方がたくさん生まれてきました。

日本でも、茎と種から抽出したものであればCBDが輸入できることがわかって、この10年間、難治てんかんの患者さんたちを中心に大麻草から抽出されたCBDを試される方達が増えてきました。

最近では成分が一人歩きし過ぎて、例えばCBDから別の成分を作り出しては販売して悪影響が出たら取り締まるというようなケースが増えていて、イタチごっこが繰り広げられているように思います。

北カリフォルニアの農園

カリフォルニアでは、オーガニック野菜の延長にある「自分の手で栽培することができるオーガニックな漢方薬」という位置付けをしている人が多かったので、末端の利用者が自分で栽培できることが認められていて、生薬としての認識が土台としてあるところが、日本と大きく違うところでした。

黒人差別やヒスパニック差別のために使われていたマリファナという呼び方をはじめとして、政治的に人種差別の道具として大麻草の取り締まりが悪用されてきた背景もあります。

もともと雑草で地球上あちこちに生えていた植物です。人間の都合で刈り取られ分解され成分だけにさせられ高値をつけて売買される、なんだか植物としてのリスペクトが感じられない方向性に待ったをかけたい気持ちもあり、法律用語の大麻とは別に、種子から成長する一年草の植物として区別するために「大麻草」と呼ぶようにしています。


まだ日本では「大麻」とひとくくりにしてますね

情報の解像度について
そうですね、非常に情報の解像度が低い状態だと思います。大麻草は、栽培の仕方によって成分を変えることができ、現在では品種改良の技術も加わってひとくちに「大麻」ということが言えなくなくなるほど細かい成分分析・表示が可能になっています。日本で「大麻」という法律用語だけを報道で使用しているところにも、情報としては粗雑な感じがしています。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月、日本ではじめて医学の世界に日本臨床カンナビノイド学会が誕生しました。国内外のカンナビノイドについて臨床・研究データを中心に積み重ねていく学会と言われています。立ち上げの時に取材でお邪魔させていただきましたが、大麻草について、医療の専門家の先生たちが集まって有効な情報交換を行う場ができたのだと感じました。

カリフォルニアの住民投票のおもしろいと思ったところ
2016年のトランプ大統領が選ばれる国政選挙の陰で、カリフォルニア州では嗜好品としても完全に合法化する法案が住民投票にかけられ、可決します。コロラド州の方が先に嗜好品までの合法化が実現していましたが、カリフォルニアのこの住民投票は世界中へ大きくインパクトを与えたと思います。この後各地で合法化や非犯罪化が勢いを帯びて進んでいきます。

この住民投票でおもしろいところは、大麻草の合法化で得た税収を可視化して教育や啓蒙活動や研究に使うと約束しているところです。

税収の使い道を可視化するということは、その地域や国が何を目指しているのかを見える化するということに繋がります。
そこが非常におもしろい取り組みだなと思いました。

薬物とは、政治的な都合により線引きがされるものでもある
大麻草についての歴史を調べていくと、薬物における法律の線引きというのは非常に作為的な面もあり、時の政権の思惑や政治的な流れによって簡単に線引きを変えることができるものであることを知ります。

日本の場合、第二次世界大戦後GHQからの支持で大麻の禁止政策を押し付けられ大麻取締法が作られていきますが、当時の国会でもそれまで農作物として国が奨励していた大麻草の栽培をいきなり禁止するということになり、非常に困惑していたという話もあります。

現在日本では大麻と呼ばれて非常に厳しい形で禁止政策が行われていますが、戦前はぜんそくの薬として薬局にも売られていたり、戦時中は強いロープや生地を作るため国策として国民に麻畑を奨励していた時代もありました。覚醒剤は戦時中から使われており戦後もヒロポンという名前で売られていました。

薬物における法律的な線引きというのは必ずしも「人体に害があるかどうか」ということだけではなく、時の権力者の思惑が入り込む余地があるものだということは頭に置いておく必要があるのだと思いました。

ダメゼッタイでは決して改善しない
残念ながら日本では「ダメゼッタイ」という標語で何も考えることなく押さえつけている感じなところがあり、あまり人々に薬物について語らせようとしていません。議論できる場も空気も少ない気がします。戦争のために資金調達しやすい道具として薬物が非常に密接な関係であることをあまり学べてないと思います。

今回写真展をして良かったなと思った点は、ママ友や普段大麻草について話をしたことのない友人たちが、明るい表情で闊達に情報交換しにきてくれたことでした。そしてその数は決して少なくなかったことでした。

カンナビスの種類が数値化されたパッケージ

カリフォルニアを取材してどうでしたか

オーガニックな漢方薬という取り扱い
ちょうどカリフォルニアで医療大麻を使用していた時代と、完全合法化になって誰でもルールを守れば犯罪として取り扱わなくなった時代の空気を見ることができました。とてもエキサイティングなタイミングだったと思います。

医療大麻だけの時代は、病院で大麻治療を必要とする患者であることを示す処方箋(ライセンス)を取得してから、ディスペンサリー(大麻薬局)で購入できていました。薬剤師のような役割のバドテンダーという人たちが患者の症状に合わせた商品をどのように使ったらいいのか詳しくアドバイスをしてくれますしアフターフォローも行います。

ディスペンサリー(大麻薬局)では、栽培のための苗が売られていて、自分で作れるオーガニックな薬として苗からの栽培も非常に人気があります。

合法化してからバッドトリップが激減した
厳しい法律があることそのものが「害」であったとディスペンサリーの広報担当の方はおっしゃいます。精神的な不安が増幅されてバッドトリップに入ることがわかっているので、法改正後から「逮捕されない」という安心感がバッドトリップを減らしたと考えられているようです。

また、いつでも摂取できることが社会で当たり前になっていくとコソコソするストレスが減って余裕ができるので、以前のように隠れてガツガツ摂取することはなくなり、マナーを守って生活の質を向上させる目的で大麻草製品の接種を楽しむ人たちが増えているようでした。

バークレーでお世話になったディスペンサリーでは、大麻草製品を販売することと共にマナーブックを作ってお客さんに上手なコントロール方法を啓蒙する努力も行っていました。

バークレーペイシェントグループの運営するディスペンサリー

カリフォルニアの中でもサンフランシスコを取材したのはどうしてですか?

旅の続きとしての再訪
黄色いバスに乗った22歳の自分が見たサンフランシスコは、まだヒッピーカルチャーが残されていた時代でした。そこで見たフラワームーブメントから生まれたチルドレンたちが成長して力をつけて現在の新しい概念を塗り替えているように見えていました。既成概念にとらわれない哲学を生み出し発信してきたエリアとしてリスペクトしていました。

友人の突然の旅立ちはとても大きく私にショックを与えましたが、薬物について情報の解像度を上げるその流れの中で訪れた場所がサンフランシスコだったというのはラッキーな偶然だったと思います。

当時、カリフォルニアは完全合法化に向けて勢いのある時期でした。日本で得られる情報も西海岸からの発信が多かったので、知らず知らずのうちに自らサンフランシスコを目指していたのかもしれません。

フィッシャーマンズワーフからの勘を頼りに
賑やかな海沿いの繁華街を海岸沿いに抜けると、海の青さと芝生の緑が鮮やかに目に飛び込んでくるエリアが見えてきます。海岸沿いに少し小高い丘の上を目指すと、見慣れたあの建物は同じ姿でそこにありました。

再訪して分かったことは、あの時宿泊していたホステルが、フォート・メイソンで軍事病院として使われていた施設だったことでした。

*フォート・メイソンとは、第二次世界大戦中、164万人以上の軍人が行き来する乗船港であり本部だった場所。現在では緑豊かな公園として保存され、隣接するフォートメイソンセンターは、パフォーマンス、イベント、展示会に 140 万人以上の訪問者を集める芸術文化の発信場所となっている。

ほとんど変わっていない外観
以前病院だったことを示す壁画
海が見える丘の上に建っていて大砲台もある

サンフランシスコ周辺はどちらへ取材に行かれましたか?


バークレーペイシェントグループ
 バークレーにあるアメリカ最古のディスペンサリー

オークステルダム大学
 オークランドにある大麻について学べる大学

北カリフォルニアの農場
 サンフランシスコ市内から片道3時間ほどの郊外

大麻製品の見本市
 各メーカーの最新の大麻製品を見ることができる見本市


カリフォルニア以外にはどこか行かれましたか?

コロラド州デンバー
 
カリフォルニアより先に完全合法化したエリアの今はどんな感じかデンバーを訪ねてみました。冬の寒い時期だったので雪景色を楽しめました。この時の写真もたくさんあるので、順次まとめていきたいと思います。

デンバーのディスペンサリー
大麻草を材料に加えたお料理教室

コロナがあったり物価上昇や円安が世界情勢を大きく動かそうとしてますが、今後このシリーズで取材したいところはありますか?


老人ホームに行ってみたいです。
大麻草は高齢者の間でも使われていて、ディスペンサリーから高齢者福祉施設への納品もしていると聞いたので、ちょうど今母の介護をしているのもあって、アメリカの施設で高齢者にどのように使わせているのか、それによって何がどう変わったのかなど、お訪ねして色々お話聞いてみたいです。

ヨガ教室や大麻草を使ったレストラン・お料理教室もあり、文化としての広がりも非常に伸びていますので、今はいったいどんなことに大麻草の活用がされているのか気になります。

またコロナの自粛期間中、大麻草を求めてたくさんの人たちがディスペンサリーに並び「これは必要なものだ」と口々に言っていたようで、どのように必要だったのか詳しく具体例をリサーチしてみたいです。

配送アプリの開発をはじめとしてIT企業の参入もメジャーになりました。投資家の間でも「グリーンラッシュ」と呼ばれるほど大麻関連株への投資やビジネスが加熱していました。今は少し落ち着いた頃でしょうか。その後カナダ、ドイツ、タイなどアメリカに追随する形で緩和政策に向かっていますので、国を超えた投資家の動きも活発になっているようで、そちらも気になります。

あとは、もちろん良い面ばかりではありませんから、解禁によって新たに見つかった問題点について少しずつリサーチしています。

情報の解像度は大きく3つに分けられる

「情報の解像度」という言葉を幾度となく使ってきましたが、写真にも解像度があるように情報にも解像度があるように思います。
大きく分けると下の3つになるでしょうか。

1、実際自分の目で見て耳で聞いて直接手に入れた情報(一次情報)
2、他者の思考や編集が加えられた情報(新聞、テレビなどのメディア、知り合いからの伝聞/二次情報三次情報…)
3、あるのに知らされない情報(隠蔽)

自分が触れている情報は、1〜3のうちどれだろうと常に考えます。

あるのに知らされない代わりに別の情報を大騒ぎさせることで見えないようにする手法もあります。情報を発信する側も受け止める側も、メディアリテラシーの教育がまだまだ足りないのが日本の現状なのかな、と感じることはしばしばあります。

アメリカに行ってみて直接見ること話すことの大切さを実感しました。
インタビューさせていただいたみなさん表情は明るく、ドローンとしたイメージはまったくありませんでした。朝から大麻成分を吸ったり食べたりしながらも、仕事や勉強にキビキビ対応している様子はすべてのインタビュアーに共通していました。

ゲイトウェイドラッグと呼ばれていた時代はすでにカリフォルニアでは常識ではなく、むしろイクジットドラッグ(依存性が高く危険を伴う薬物から抜け出すための薬)としての実績を積み重ねているようでした。

最後に

撮影開始から実に10年が経ってしまいました。
この間、日本でもカリフォルニアの実例を参考にしていくのだろうと思って見ていましたが、昨年末の法改正では製薬会社が管理する製剤について研究からスタートする方向で医療用の門戸は開かれたように見えました、しかしアントラージュ効果の見込めない製剤が不人気となり大麻草そのものを流通させることを選んだアメリカの失敗した部分がそのまま日本に来日したようにも見えます。

また、ハームリダクションという側面からは逆行する線引きが作られました。医療用として考えるならば、ランセットが公開しているグラフを子どもたちの教科書に載せてもいいのではないだろうか、と考えたりもします。今回の法改正が時代の都合による政治的な判断でなければいいなと思います。

患者の希望する選択肢の安全性を確保しながら広げていけるものになる方向で法改正が進むことが望ましいでしょう。今回の法改正は一時的なものに留めて、引き続き情報の解像度を上げた議論が必要だと個人的には考えます。

アーティストトークでお話ししたことをテキストにまとめるつもりが長くなってしまいました。何かのご参考にしていただけたら幸いです。

ZINEに収められた写真の下にQRコードがあります。それを読み込んでいただけると今回展示させていただいた人たちのインタビューを読むことができます。ぜひみなさんのお手元へ届きますように。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

あまみやどら

note Gram Graph

Gram Graph scenes from 420 ZINE Manu coffee KUJIRA edition.


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