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インパクト雇用とは?        ~人的資本経営との関係を整理~  (後編)

#2インパクト雇用による採用側のメリットとは?

前編では「インパクト雇用」について説明をいたしました。

インパクト雇用とは、一般的な採用方法では就労の機会が得にくい人々(シングルマザーや障がい者など)を雇用対象にすることで、会社や組織に変革をもたらす、あるいは社会貢献を目指す、新たな雇用の形です。

続いて、人材を生かした企業経営が注目されていること、その具体的な取り組みを紹介しました。

後編では、インパクト雇用の対象であるシングルマザーが抱える課題や、インパクト雇用による採用側へのメリットについて、お話しいたします。


シングルマザーの経済的自立を阻む課題

「就労の機会が得にくい人々」は企業に貢献できない人材ではなく、方法次第でいくらでも活躍できる人々だとグラミン日本では考えています。

グラミン日本がシングルマザーの自立を応援しているのは前編でも触れたとおりです。シングルマザーの方々は、貧困によって経済的自立が困難になっている割合が圧倒的に高いという現状があります。

たとえば、中学2年生の子ども持つ約2700世帯を対象に行った調査「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書」(内閣府)(参考文献[1])によると、等価世帯収入が中央値の2分の1未満の世帯は、対象者全体だと12.9%だったのに対し、母子家庭に絞ると54.4%に急上昇します。(等価世帯収入が中央値の2分の1未満というのは、大多数の世帯よりも貧しい状態を表しています)

参考文献[2]23ページより引用

これは「家事や育児は女性の役割」とする日本社会が以前より抱いている「固定概念」に由来するものだと、私たちは考えています。

仕事との両立をあきらめざるをえず、正規雇用から非正規雇用に働き方を見直したり、退職をしたりするのは、多くが女性です。また、仮に正規雇用を継続したとしても、子育てで時短勤務になるなどして実質的にキャリア形成が難しくなることもあります。結果として、結婚をしていたとしても男女の間には大きな賃金格差が存在し続け、シングルマザーの貧困率の高さにつながっていると考えています。

企業が望む能力や経験が不足している、家庭を理由に仕事に穴をあけられるのは困る―そうした考えが主流の一般的な採用制度のもと、十分な賃金が得られる雇用の獲得に彼女たちが苦戦するのは、言うまでもありません。

雇用側にもウィンウィン

しかし、彼女たちは本当に企業が望む能力がないのでしょうか?たしかに「リスキル・学び直し」など自分で何か努力をしなければ、即戦力になるのは難しいかもしれません。

けれど、きちんと学ぶ機会があったり、家庭との両立がしやすい在宅勤務を広げたりすれば、話は変わってくるのではないでしょうか。

実際にグラミン日本では、他団体と協働しITスキルやライティングスキルを学べる場を提供しており、それを生かして正社員として雇用される実例も出てきています。

企業側から見ても、採用対象を広げたことで、人手不足の解消につながった事例などがあります。このほか、開かれた企業風土に対する外部からの高評価、多様性がもたらす新たな発想による企業価値向上など、雇用側にとっても多数のメリットが期待できます。

また、インパクト雇用のスキームで雇用された人々の仕事への姿勢や成果、定着率などは、これまでの採用対象者と比べて大きな差はないとされています。

たとえばデロイト トーマツ コンサルティングの「インパクト雇用で実現する人的資本経営」(参考文献[2])で挙げられている、顧客管理サービス提供企業「CCI Global」の事例では、経済的に恵まれていない人々などに人材育成プログラムを提供して雇用した人材と、従来の雇用方法で採用した人材を比較しています。結果、個人に課せられた目標の達成率がそれぞれ99%と104%であったことや、定着率についてはインパクト雇用採用者の方が高かったことなどが示されています(11ページ参照)。

またデロイト社自身でも、シングルマザーとその下にスタッフをつけたチームへインパクト・ソーシングを行った結果、既存の職員は関連業務に割く時間を削減でき、戦略・企画業務により注力できるようになったとしています(15ページ参照)。

グラミン日本が推進する「デジタル就労支援プログラム」でもインパクト雇用での実例がでてきています。具体的な事例は別の機会にご説明いたしますが、このようにインパクト雇用は採用側である企業、雇用側のシングルマザーにとってメリットがあるスキームであると、グラミン日本は考えています。

インパクト雇用を通じた企業の支援

まとめ

・シングルマザーは経済的自立が難しい割合が圧倒的に高い。これは「家事や育児は女性の役割」という家族のありかたに由来すると推測される。

・採用対象を広げたことで人手不足の解消につながるなど、インパクト雇用は企業側にもメリットがある。

・インパクト雇用と従来の雇用方法で採用した人を比較すると、成果や定着率に大きな差はないとされている。

最後までお読みいただきありがとうございました。続編の記事では、私たちが考えるインパクト雇用の概念や、詳細な雇用事例、関連セミナーのレポートなどをお届けしていく予定です。ご期待ください。

参考文献

  1. 内閣府(2021)「令和3年 子供の生活状況調査の分析報告書」https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12772297/www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/r03/pdf-index.html

  2. デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(2023)「インパクト雇用で実現する人的資本経営 企業価値向上に不可欠な人的投資」https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/dtc/impact-hiring-sourcing.html



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