セッションB ソーシャルセクターが担う公共サービスのつくりかた
こんにちは!日本GR協会の中山です。今回は、今年4月に開催した日本GRサミット2024のセッションB「ソーシャルセクターが担う公共サービスのつくりかた」の報告です。
セッションの目的
経済合理性が作用しづらい福祉や教育の領域を中心とした社会課題解決は行政の独壇場でしたが、1998年のNPO法制定などを追い風に、非営利プレーヤーとの協働が進むようになりました。
実際、公平性と手続きを重んじる行政では手の届きにくいような社会課題が、NPOなどの活躍によりスピード感やきめ細かさを持って解決されるようになっています。
こうしたソーシャルセクターが創り出している公共サービスは今や福祉領域に限らず広がってきています。その新しい公共サービスの作り方を、その道のリーダーたちに共有していただきました。
登壇者(敬称略)
佐藤大吾 NPO法人ドットジェイピー理事長
廣田達宣 株式会社issues 代表取締役
陶山祐司 Zebras and Company 共同創業者
伊藤和真 株式会社PoliPoli 代表取締役/CEO
トップランナーが経験した公共サービスづくり
廣田達宣(ひろた・たつのり)
issuesは、市民が直面する生活課題を、地域の政治家にオンラインで相談することができるサービス。
issuesで進んだ政策の一つに「小学校の欠席届のオンライン化」がある。これまで学校にいけない日は紙の欠席届を書いて、それを近所の子に預けて学校に提出してもらう必要があった。そうした現状に保護者からは「ただでさえ朝の時間帯は忙しく、我が子が休まないといけないという状況において欠席届を誰かに託すという行為は負担だ」という声が多く寄せられた。
欠席届のオンライン化の実現には1年程度の時間を要した。とはいえ、GIGAスクール構想など「時代の波」が後押しをしてくれたのも事実だった。
伊藤和真(いとう・かずま)
政策共創プラットフォーム「PoliPoli」を通してこれまで多くの政策を実現することができた。
数年前に話題になった「生理の貧困」もその一つ。最初は同じような課題感を抱く数百名が全国にバラバラに存在していたが、PoliPoliを通して繋がって一つの大きな声になった。そこに専門家の専門知識が加わり、寄せられた声に共感する政治家も集結した。最終的には国会でも取り上げられて、報道の力も相まって一大ムーブメントになった。
政策実現のためには、同じ課題感を抱く人たちが仲間となって動くことが重要。「生理の貧困」のようなムーブメントは再現性があると断言できる。
陶山祐司(すやま・ゆうじ)
自身の経済産業省での経験や、民間の一員として活動する中で行政は「意見集約の仕組みを作り上げて、デザイン思考などを用いて政策を形にする」ことを苦手としていることが分かった。
また、「世の中に必要な制度や政策をつくりたい人」と「そうした人を応援するためにお金を出してくれる人」が組み合わさって、n=1や2の新しい取り組みを作っていく。そしてその取り組みと裏付けとなるデータをもって行政に提案していくスキームが必要とされているとも感じる。
行政が苦手とする分野に対して、前述のような取り組みをソーシャルセクターとして廣田さんも伊藤さんも関わっていてすごい。
佐藤大吾(さとう・だいご)
社会課題を見つけ、政策に反映していくことが行政の役割といえますが、そもそも”その社会課題が見逃されている”こともある。だからこそ、まずは政策の「種」と言える「社会課題を抱える人達の声」を集める手段が今後は重要性を増してくる。
登壇していただいた廣田さん、陶山さん、伊藤さんはその手段を提供するフロントランナーと言えます。
次回はルール・メイキングのスペシャリスト達のセッション
いかがだったでしょうか?前回のレポート公開から随分と時間が経ってしまい申し訳ないのですが、読者のみなさんが今回のセッションからも何か感じ取っていただけると幸いです。
個人的には、①「政策の種」となる声を集めるサービスの提供に努める廣田さんと伊藤さんから「実例をもとにした話」をお聞きできたこと、②行政と民間の両方を経験した陶山さんから政策形成過程で「行政と民間が補い合える具体的な部分」、③社会起業家として長年、政策形成に関わってきた佐藤さんから「政策形成において今後ソーシャルセクターが担うべき役割」について伺うことができ、大変刺激的な時間でした。
次回は、ルール・メイキングのスペシャリスト達が登壇したセッションについてお伝えします。お楽しみに!
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