春一番の日に。

どうも、杉崎シュンペーターです。

たまには恋の話をしよう。

あれは一目惚れだった。

高校三年生の時に、中学時代の同級生が進学した高校の文化祭に行った。

校門の前で待ち合わせした友達の案内で、教室に入るとその子がいた。

窓も開いてないのに僕の周りに風が吹いた気がした。

一目惚れだった。

その子はそんなに高くない僕よりもずいぶんと背が低く、華奢だった。

けれども笑顔は誰よりも輝いていて、目立っていた。

友達と仲が良かったのでその子とお話しすることが出来た。

声も、話し方も好きだった。

友達そっちのけでその子と話してた。

少し寄ってすぐ帰る予定だったのに、結局他校生がいてもいい時間のギリギリまで居座った。

そして出ないとイケない時に勇気を出してメールアドレスを聞いた。

連絡先交換に成功した。

それからは時々メールをしてはドキドキしていた。

何度か遊びに誘ったけど高校三年生で受験生だったので断られてしまった。

それはそうか、当たり前だよな。

養成所と1人暮らしの資金を貯めるためにフリーターになることを早々に決めていた自分は受験とは無縁だったので、受験勉強で大変なその子を邪魔したくなかったので暫くの間、連絡するのは我慢した。

そして月日は過ぎて春になる。

久しぶりに連絡すると、その子は晴れて志望校に合格していた。

僕はと言うと、暇だったので冬の間に自動車教習所に通い詰めて車の免許を取得していた。

なのでメールでドライブに誘った。

オーケー楽しみと返事が来る。

ガッツポーズ。

免許取り立てで心配されたけどなんとか親を説得して車を借りて行ったその子とのドライブは最高だった。

恋人同士が南京錠を付けるスポットに行ったけど南京錠を付けてくれなかった以外は最高だった。

それから卒業までは時間もあったので沢山遊んだ。 

僕の家からその子の家まで車で二時間くらいかかる遠い場所だったけど、その時間もめちゃくちゃ楽しかった。

その子に借りたクイーンのアルバムを聴きながら向かうとあっと言う間だった。クイーンも大好きになった。

そんな恋人みたいな頻度で遊んでた僕とその子だったけど、僕は告白はしてなかったのでいつまでもあいまいな関係じゃイケないな、男らしくハッキリ言葉で伝えてその子の喜ぶ顔が見たい!と本気で思っていた。

そしてその時がくる。いつものように車で迎えに行ってドライブをする。クイーンは最高だ。楽しい時間はあっと言う間、いつの間にか夜だ、帰る時間。いつもならその子を家の近くで降ろして別れるけど、今日はそれじゃダメだ。ずっと仲良くしてるけどちゃんとハッキリしなきゃ、でもいざ言おうと思うと結構緊張する。勇気を出して伝える。好きです、付き合って下さい。言えた。良かった。あとはその子からの返事を聞くだけだ。きっと笑顔で喜んでくれるだろう。と思ってたのに返事がない。ずっと黙ってる。見たことない難しい顔をして下を向いている。あれ?おかしいな。ちょっとどうしたの~!?ちゃかす感じで聞いてみる。沈黙に耐えられなかったから。その子は押し黙ったままだった。

そしてかなり長めの沈黙の後、今は進学先のことで頭が一杯だから付き合うとかは考えられないんだ。と答えが返ってきた。詳しく聞いてみるとその子は医療系の専門学校に進学が決まっていて国家資格を取得するための勉強はとても難しいから恋愛をする気はないとの事だった。

そうか、それなら仕方ない。すごく真面目な子なんだな。と納得して、僕は変なこと言ってごめんね、と謝った。その子は少し困ったような笑顔をして車を降りていった。

そして僕はクイーンを聴きながら二時間運転して家に帰った。その日は凄く風の強い日だった。

それからその子には会ってない。

数ヶ月後に中学時代の同級生達と久しぶりに遊んだ。
大学に進学した奴、就職した奴、フリーターしてる奴、色々いたけど、そこにはあの子と同じ高校に行ってた友達も来てた。一時期はキューピッドと呼んでいた友達だ。そいつに聞いたらあの子は専門学校で知り合った同級生と付き合い始めたそうだ。

だからかは分からないけれど、僕は数年前の映画『ボヘミアンラプソディ』は見れなかったんだ。

いいなと思ったら応援しよう!

GRahAMBox
GRahAMBox(グレアムボックス)です。 あなたのそのお気持ちがただただ嬉しいです。