漬物屋を家業に持つ、中野 百合子さん
家業があって、それを自分に合った形でサポートしたり、進化させたりしている人のことを、僕らはグラフトプレナーと呼んでいる。いったいみんな、どんな活動をして、どんな毎日を送っているんだろう。今回は漬物製造業を家業に持つ、中野 百合子さんを紹介。
山口県岩国市にある漬物屋300年の歴史を持つ漬物屋さんを家業に持つ中野さん。無添加保存料無し自然発酵の手作りの漬物屋で、一般的な漬物よりも乳酸菌が100倍なのが特徴です。卸先の6割がスーパー。残りは、紀伊国屋や阪急百貨店などの高級スーパー、業務用として飲食店、などの卸しと本館で販売しています。漬物屋には築170年の本館があり、工場見学も出来るようになっています。
家業に入った中野さんは新規事業に取り組んでいます。おうちでぬか床を楽しんでもらえるキットを作るため、パッケージを考えたり、ぬか床の研究開発や分析、オンラインサポートの仕組みづくりをしています。もともと東京で働いていた中野さんが山口の家業に入ったのには、家業ならではの理由があったといいます。
「社会人になってから初めて迎えるお正月に実家に帰ると家庭に不穏な空気が流れている事に気づきました。帰る場所の形が変わってしまいそうな状況下でこのまま私が東京にいるのはどうだろうと思い始めて家に戻ってやるべきことをやろうと決めました。回避したいことを回避させるために。母親には『せっかく大学も出たのに勿体無いし、漬物屋の仕事は辛いからやめておきなさい』と帰ってくることを反対されました。」
しかし一度覚悟を決めた中野さんは山口県へ帰り、家業をまず手伝うことにします。
「いつの間にか家族もあたたかい形になりました。父も母も幸せであることを願っています。でも最近はその気持ちも私の押し付けだと気付いて、無理にこうしようああしようと提案するのをやめたんです。これから先は自分自身が何をやりたいかという所にフォーカスして自分自身がやりたいことで力を発揮していきたいと思っています。だから新規事業をはじめました。」
「家業に入ったからといって、誰かの為にとか、親が言うからとか、家業だからとか、制限をつけてしまうと苦しくなるので、まずは家業について学んでみる、好きになってみることを私は大切にしています。その上で自分の思いを込めてこの世の中に何を提供するのかしたいのか考えています。今はとてもワクワクしながら仕事に取り組めています。」
家業を手伝う時、家族のためだと気持ちを押しつけずに自分のやりたいことにフォーカスしながら家業を捉え直すこと。そのおかげで家業とのいいバランスを見つけた中野さんのお話、どんな家業にも共通する大切な考え方なのかもしれません。
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本記事の内容・表現は、取材当時の"瞬間"を『家業エイド』視点で切り取らせていただいた、あくまで家業を通して皆様が紡いでいる物語の過程です。皆様にとっての「家業」そして「家業との関係性」は日々変わりゆくもの。だからこそ、かけがえのない一人一人の物語がそれを必要とする誰かに届くことを切に願っております。
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