ヘアサロンとそのコンサルティング会社を家業に持つ、杉本光紗さん
家業があって、それを自分に合った形でサポートしたり、進化させたりしている人のことを、僕らはグラフトプレナーと呼んでいる。いったいみんな、どんな活動をして、どんな毎日を送っているんだろう。今回は、ヘアサロンを家業に持ちながら、自身でオンライン秘書サービス「your team.」を立ち上げた杉本光紗(すぎもと・みさ)さんにお話を伺いました。杉本さんが見つけた、自分らしい家業の継ぎ方とは?
美容師の仕事がいつも身近にあった
お父様がリフォーム会社とヘアサロンのコンサルティングを、お母様と弟さんがそれぞれヘアサロンを経営している、事業者一家の杉本さん。小さい頃からご両親に髪を切ってもらったり、七五三にはデパートの子供モデルをしたり、美容師の仕事がいつも身近にありました。ただ、当初は家業を継ぐことは考えず、事務職の仕事をしていました。
「小さい頃から周りの人に『大人になったら美容師さんになるんでしょ?』って言われていて、敷かれたレールの上を歩くみたいで嫌だったこともあり、最初は事務の仕事に進みました。事務の仕事は好きで、長く続けていたんですが、結婚して妊娠したタイミングで将来を考えて。一旦仕事を辞めて、通信教育で美容師免許を取ることにしたんです。」
母の表情が忘れられなくて
それまではご両親から継いでほしいと言われたこともなく、資格も一応取っておこうかなという程度の感覚でした。でも実際にお母様に話してみて、おおきく意識が変わったと言います。
「『美容師免許を取ろうかな』って伝えたときの、母の表情が忘れられなくて。『え!ほんとに?』っていう感じで、ぱっと表情が明るくなったんです。今まで口にしたことはなかったけど、やっぱり嬉しいんだなって。継げるなら継いであげたいっていう気持ちが、そのときに強くなったんです。
そこからは資格を取るために勉強して、美容師の仕事って奥が深いんだなと思いました。パーマひとつとっても、髪を引く角度やテンションの掛け方など、すべてがしっかり合わさらないとうまくかからない。母が簡単そうにやっていることって、難しいんだなと気づきました。」
おおきな壁にぶつかって見つけた、自分なりの事業承継
資格を取ったあと、今時のヘアサロンがどういうふうに経営してるのかを知りたくて、しばらく外のお店で美容師として働くことに。そこでおおきな壁にぶつかりました。
「働いてみたら、手がすごく荒れてしまって……。母のお店を継ぐ気持ちがあって入ったのに、常にあかぎれになっている状態で、どうしても長く続けられなかったんです。そこで家族に相談したら、『技術がなくても経営はできるんじゃない』って言われて。資格も取ったし、1年働いてみてヘアサロンの雰囲気もわかったし、両親もそんなふうに考えてくれるならどうにかなるかなと思って、美容師の仕事を辞めました。」
その後、一旦は事務職に戻ることに。ですが、ご両親の確定申告を手伝ううちに、自分の得意な仕事がお店の助けになることに気づきます。
「小さなお店だと、事務仕事ってどうしても後回しになってしまうんですよね。弟も自分でヘアサロンをやっているんですが、同じ問題を抱えていました。その様子を見て、私は技術的なことはできないけど、ヘアサロンの事務はできると思ったんです。美容師を辞めて、母のお店をどうやって継げばいいのかわからなくて悩んでいたんですが、そういう形でなら、継げるなって。私なりの事業承継のイメージが明確になった瞬間でした。」
キーワードは、”誰かの助けになる仕事”
そこから、家族だけじゃなくて、同じように困っているいろんな人を助けたいと思うようになり、オンライン秘書サービスを立ち上げます。ひとりで小さく始めたサービスでしたが、依頼の多さからニーズを感じ、今では15人の従業員を抱えるまでに。確定申告などの事務作業からチラシ制作、Instagramの運営まで、幅広く全国から依頼を受けています。
「オンライン秘書をしながら、ヘアサロン経営の勉強もしています。今は母も元気に働いていますが、この先、母の体力が追いつかなくなったときに、うまくスイッチできるように徐々に準備をしています。
父や弟のように、ヘアサロンに特化したコンサルティングをするのもいいかなと思っていて。美容師という仕事の性質上、ひとりが儲けられる限度があるので、それを超えるには従業員ひとりひとりが自分でコンサルティングできるようになる必要があるんです。しかもそうなるとお給料も増えるので、従業員のモチベーションも技術もあがるし、姿勢も変わる。弟の話を聞いていると、お店のためというよりは、従業員のためになるんだなって感じますね。弟は、経営者の先輩としてとても頼りになる存在。一緒に何かおもしろいことができたらいいよねってよく話してます。」
家族を支えながら、のびのびと働く
自分らしい働き方で事業を広げながら、家業と向き合う杉本さん。忙しく働く一方で、実は3人のお子さんの母親でもあります。ひとまわり年上の旦那さんが主夫となって、二人で協力しながら家族を支えているのです。
「旦那の定年退職が私よりも12年早くやってくると考えると、生活の基盤は私がつくった方がいいなって、結婚するときに考えたんです。家業もありますしね。小さい頃から母が事業をしているのを近くで見ていたので、女である私が仕事をすることに違和感はありませんでした。旦那がよく子供たちを外に遊びに連れ出してくれるんですけど、家に帰ってきたときに楽しそうにしているのを見ると、幸せを感じますね。」
お母様と一緒に染めたと言うブルーの髪が、とても素敵だった杉本さん。得意なことを活かして自分らしく働く姿に、ヒントを見つける人も多いはず。性別や家業の事業内容そのものにとらわれず視点を変えることができたなら、事業承継はもっと軽やかなものになることを教えてくれました。
(執筆:梅本智子 / 取材・構成:出川 光)
杉本さんの運営するオンライン秘書サービスのウェブサイト:
https://www.yourteam.info/
最後までご覧いただきありがとうございます😊
本記事の内容・表現は、取材当時の"瞬間"を『家業エイド』視点で切り取らせていただいた、あくまで家業を通して皆様が紡いでいる物語の過程です。皆様にとっての「家業」そして「家業との関係性」は日々変わりゆくもの。だからこそ、かけがえのない一人一人の物語がそれを必要とする誰かに届くことを切に願っております。
運営チーム一同より
「家業」にまつわる課題・機会に興味がある
当事者の方、支援する方は覗いてみてください:
『家業エイド』詳しくはこちら👇👇
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?