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家業を継がなかった3人で座談会インタビュー。個性を作る、家業のインスピレーション

「家業エイド」の最大の特徴は、家業があって継いでいる人だけでなく、継がなかった、継いでいないけれど手伝ったり関わっている人も参加していること。今回は、家業を持っているけれども継がずに家業と関わる3名に対談形式でお話を聞きます。参加してくださったのは、加那子さん(以下、か)、エステルさん(以下、エ)、影山 直毅さん(以下、影)。


連続起業家の家業、旅館業。参加メンバーの家業は?

──まずはみなさんの家業とその関わりについて教えてください。

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▲インタビューに参加してくださった、かなこさん

か:私の家業は複雑で、父も母も家業を持っているんです。さらに、母はひとつではなくいくつも事業をやっています。父のほうの家業は高級輸入車の改造。この事業はすでにクローズさせました。もうひとつは、母は祖父が持っていた会社で婦人服の訪問販売とたい焼きやさんをやってます。私自身は大手IT企業で働いていて、母の家業に時々フィードバックをしています。

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▲インタビューに参加してくださった、エステルさん。

エ:私は父の家業は印刷、デザイン、芸術関係の会社。父は他界していますが、会社は未だ営業中で、当時勤めていた人に運営を委託しています。母は父とは別の印刷会社を経営していました。そして私は印刷とは関係のない医療などヘルスケア関係などの会社をやっています。三名それぞれで起業しているという状態でした。私は父の家業も母の家業も手伝っていませんが、自分の家業を子供が手伝ってくれることがあります。

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▲インタビューに参加してくださった、影山さん。

影:僕の家は京都で旅館業をやっています。祖父が創業し、今は祖父の娘である叔母夫婦が経営をしており、その二人には子供がいないため自分の弟が継ぐ前提で家業に入っています。僕は旅館業を継ぎませんが、手伝えるタイミングで手伝うようにしています。自分の仕事は勤め先の会社で新規事業として立ち上げた下北沢のコワーキングスペースを運営しています。

意外と大きい家業の影響

──みなさんの家業が多種多様で濃いお話がきけそうです。まずみなさんに聞いてみたいのが、今のご自身のお仕事や働き方が家業の影響を受けているかどうかです。いかがでしょうか?

か:影響はかなりあると思いますね。自営業を見て育った人と、サラリーマンの家庭に生まれた人ではお金の意識やコミットメントがだいぶ違うなと感じます。その違いを大きく感じたのは新卒で営業職についた時。毎月の営業目標がある中で、「難しそうだけどやってみよう」と私が考えるのに対し、まわりは「無理でもお給料はもらえるしいいや」という温度感でした。親が大変な思いをして経営しているのを見てきた私には持てない考え方でした。

──なるほど。それでもサラリーマンを選ばれたのはなぜだったんでしょう。

か:それはもう大変そうだったので。毎日身を粉にして働いてお金に追われて働くのは嫌だなと思い、いったんサラリーマンになってみようと思いました。

──家業を見ていたからこその選択だったのですね。エステルさんはいかがでしょう。

エ:そういう影響は私には全くありませんでした。父の印刷業は道楽で始めたようなものだったので、その働き方はいろんなところに顔を出して昔のよしみで仕事を受託するというスタイル。むしろ私の方が事業をする欲が強く、19歳の時には教育、物流関係の会社を興していました。

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▲エステルさんの事業の様子。

──すごい。それが今の事業なんですか?

エ:いえいえ。そのふたつはもう黒字で売却してしまって、新しい会社を興しては軌道に乗せたら売る、というのを繰り返しています。今も、子育てが終わったのでこれからは好きな事業をやろうかな、と。

──どんな事業なのですか?

エ:小さな頃の夢はずばり宇宙飛行士!。なので、航空宇宙産業に参入しようとしています。

──ご自身に家業をどんどん作る力があったということなんですね。影山さんはいかがでしょうか?

影:僕はそんなに影響を受けていないんじゃないかと思っていましたが、コワーキングスペースを立ち上げたことがきっかけで、それが間違っていたことに気づきました。例えば、オフィスを居心地よく使ってもらおうと思い切らさず飾っているお花。旅館にはお花が必ず置かれているのですが、知らず知らずのうちに気持ちのいい空間がどんなものなのかが擦り込まれていたみたいです。

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▲影山さんがコワーキングスペースに飾っているお花。

──なるほど。旅館もコワーキングスペースも、居心地を作るという意味では同じですものね。

家業を手伝う側、手伝われる側はどんな気持ち?

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▲かなさんのお母様が営むたいやき屋さん。

──みなさんの現在の家業との関わり方についてもお伺いしたいです。

か:私はユーザー目線のフィードバックを出すという関わり方が多いですね。母はどんどん事業を立ち上げるけれどITまわりは疎くて、ホームページなどを作らせると「あれ?」というものができてしまうんです。私の本業で得たノウハウをもとに、補助金を紹介したりアドバイスすることが多いです。

エ:かなこさんのお母さんの話を聞いてると、なんだか似ているような感じがしてきました(笑)

──確かに、連続起業家同士ですね!エステルさんと家業の関わり方はどうですか?

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▲エステルさんのお父様が家業を営む様子。昭和天皇が視察された際の写真。

エ:私はもう還暦ですから、父も母も他界していていますが、生前は営業の手伝いをよくしていました。手伝いという面では、どちらかというと私は手伝ってもらっている側ですね。子供たちは中国で育ったので中国語が私より圧倒的に上手なんです。通訳などを子供たちに手伝ってもらっていますが、こちらは頼んでいる側なのでちょっと申し訳ないなという気持ちで、罪悪感がありますね。

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▲エステルさんの中国でのお仕事の様子。

──手伝ってもらう側はそんな気持ちになっているんですね。影山さんは?

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▲影山さんの家業の旅館の内装。

影:僕は最初全く家業に関わっていなかったのですが、この「家業エイド」などの影響で家業に関わり始めました。継ぐ予定の弟へのアドバイスや旅館のSNSの立ち上げなどをやっています。自分が「家業エイド」に影響お受けて踏み出せたように、弟にも何か情報提供ができたらいいなと思っています。

──みなさん何らかの形で家業を手伝ったり、手伝ってもらったりしているんですね。その時のリアクションはどんなものなのでしょう?

か:私の母はすごくカジュアルなので「サンキュー!」みたいな感じです。父は少し前に他界したのですが、こちらの家業はクローズする時にめっちゃ迷惑をかけられたなあと。蓋をあけてみると「このお金何!?」というものが出てきたりして。

エ:お金のことは大事ですもんね。私は用途不明金は作らないようにしているので自分がころっと死んでしまっても金銭面での迷惑はないはず。

──家業を持つ側の責任として明らかにしておくというのもあるんですね。エステルさんがお子さんに家業を手伝ってもらった時はどんな風なのですか?

エ:手伝ってもらってるのに「サンキュー!」じゃ続かないだろううなと思ってしまうのでやっぱり「申し訳ない!」という感じでしょうか。やりたいことがたくさんでてきてどんどん事業にしてしまうから、子供たちに「できないことを引き受けないでよ!」と言われたり。本当、かなこさんのお母さまに共感してしまいます。

か:あはは。

エ:反対に自分が家業を手伝っていた時は、時代が違いますからね。父は大正生まれの人間だったので、男尊女卑的な考えがあり「女の子が家のことを手伝うのは当たり前」という顔をしていました。

──時代によって差があるとは、なるほどという感じです。影山さんはいかがですか?

影:僕が家業を手伝い始めた時には、なにか下心があるんじゃないかと家族がざわついたことがあります。。ちゃんと手伝いたいだけだということを話してからは、感謝してもらえるようになりました。僕自身、最初は正直バイト感覚で手伝い始めたのですが、今では小さな頃の思い出の場所を守るというのがモチベーションになっているので、感謝してもらえれば嬉しいな、という感じでバランスがとれています。

──家業にいきなり継がない予定の登場人物が戻ってくるとざわつくの、あるあるですよね。みなさんの家業との関わり方がだんだん見えてきました。家業との関わり方はいろいろでも、みなさんいい関係を作っていますね。

継がなかったことのメリット、後悔していること

──家業を継いでいる人、迷っている人も「家業エイド」にはいらっしゃいます。みなさんのご経験から、「継がなかったからよかったと思えること」はどんなことでしょうか?

か:家業を外から見て学ぶことができたことです。例えば自分で事業をやることになった時、何をどう考えるべきか、商売とは何たるものなのか、お客様とどう接していけばいいかなどを学ぶことができました。家業を継いでいたら、きっといっぱいいっぱいでこういう視点を持つことができなかったと思います。

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▲かなこさんのお母様が営むたいやき屋さんの、たいやき。

──いいポジションから自営業や経営を学べたということなんですね。エステルさんはいかがですか?

エ:うーん。私は、継いでおけば良かったなと後悔しているところが少しあります。経済的なことだけ考えれば継がなくて本当に良かったけれど、父の仕事を振り返ってみると、後世に残すべき取引先がたくさんいたことが身に染みてきて。印刷という形に残るものに名前を刻むという家業の意味を考えたら、継いでおけばよかったと思うこともあります。私がいまやっている事業は、形はあるけれど消耗品なので、歴史的な書物や印刷物の持つ価値を考えると、そんな風に思ったり。

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▲エステルさんのお父様のお写真の数々。

──なるほど。今は継がなくてよかったと思っていても、考え方が変わることもあるのかなと私自身思わされました。影山さんはどうでしょうか?

影:僕は兄弟の中に継ぐ立場と継がないけれど関わろうとしている立場があることで、ひとりが継ぐ以上のパワーを出せているように感じます。自分が経験したことや身につけた技術を家族に還元できることが幸せなことだというのも最近わかってきたし、ストレートに愛情表現できない分、手伝うことで愛情を示せているかな、って。

ちょっと雑談!濃い目のアフタートーク

──今日は濃いお話をたくさん聞けました。やっぱり三人集まっていただくと色々なお話が聞けますね。

か:本当に。ひとりでインタビューを受けることは多いのですが、複数人集まって話すと「こんなこともあるのか!」とわかって面白かったです。家業エイドっぽくて。

エ:世代を超えた情報交換でしたね。かなこさんのお母さんには共感してしまいました。自分が普通なんだと思えたのは初めてで、それだけでも今日は収穫でした。

影:僕はふたりのお話しに勇気づけられてしまいました。もっと軽い気持ちで踏み出していきたいなと思えました。ちょっと僕から質問してみてもいいですか?かなこさんのお母さまや、エステルさんは隣接した事業を別の会社で立ち上げているんですか?

エ:私は全く異業種ですね。同じような事業なら事業部を切り分ければいいんだけど、全く違うので別の会社をやっているという感じ。

か:私の母も全く異業種の起業です。たいやき屋を始めたのも驚くようなきっかけで。商店街のお祭りに参加していたらたいやき屋をやることになって、楽しくなっちゃって起業した、という。

エ:私も上海のジャパンフェアでたこ焼き屋さんをやったら大当たりしちゃったんですよ。どこにビジネスチャンスがあるかわからないから、チャンスがあったらやればいいんですよね。

か:私たちがちょっと石橋を叩きすぎてるのかもしれないですね。

影:確かに〜!

か:私からもちょっと質問です。みなさん「家業エイド」のおすすめの使い方、ありますか?

エ:私はこの間女子会に参加したのが楽しかったですね。私まで若返ったような感じ!

か:いいですね〜!影山さんは?

影:僕は自己紹介ですね。いろんな家業が紹介されていて、たまに時間をとって熟読してます。「こんな家業もあるのか」と驚いたりして。

か:確かに、家業って本当にさまざまですもんね。

エ:最後に私からも質問しようかな。私は家業をやっている身としての質問なんですが、何歳までやってていいかな、というのを聞いてみたい。生涯現役のほうがいいのか、早く辞めてよねって思っているのか。

影:うちの祖父は84歳でまだまだ元気にやっています。現場にはいかないけれどオーナーをしている。続く限り働くことが元気につながることもあるんじゃないでしょうか。

か:親が楽しんでくれているのが一番ですから、何歳まででもやってもらいたいなと私も思います。経営判断ができなくなったり、代表を降りる判断ができなくなった時祖父の時は少し大変な思いをしましたが、そういうのがなければ好きにやってもらえるといいな。母に対してもそう思っています。

エ:そうなんだ!普段聞けないからこういうことが聞けてよかったです。

──こういうお話からも、子供の目から見ても親が家業を楽しくやってくれているのは嬉しいものだということがわかりますね。今日のお話全体を通しても、継いでいなくても家業に関わったり、手伝ったりすることが自分にも、家業、ひいては家族にも素敵な影響を与えることがわかりました。みなさん、今日はありがとうございました!

(お写真の提供:みなさま / 文:出川 光)


最後までご覧いただきありがとうございます😊

本記事の内容・表現は、取材当時の"瞬間"を『家業エイド』視点で切り取らせていただいた、あくまで家業を通して皆様が紡いでいる物語の過程です。皆様にとっての「家業」そして「家業との関係性」は日々変わりゆくもの。だからこそ、かけがえのない一人一人の物語がそれを必要とする誰かに届くことを切に願っております。

運営チーム一同より

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