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運送会社を家業に持つ、羽場貴洋さん

家業があって、それを自分に合った形でサポートしたり、進化させたりしている人のことを、僕らはグラフトプレナーと呼んでいる。いったいみんな、どんな活動をして、どんな毎日を送っているんだろう。今回は、福島で約100年続く運送業を家業に持つ、羽場貴洋(はば・たかひろ)さんにお話を伺いました。

プロフィール
お名前 :羽場貴洋(はば・たかひろ)
家業:運送業
現在 :継がずにサポート中


子供の頃は家業のことを秘密にしていた

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福島県船引町で、お父様が運送会社を経営している羽場さん。バスやタクシーを使ってお客様を目的地まで届ける仕事を、曾御祖父様が創業した当時から続けています。

「父が会社を継いだのは40代の頃で、私はそのとき10代でした。事業がうまくいっていたおかげで、実家は少し裕福で。昔は、父が母とよく一緒に旅行に行っているのを見て、自由に好きな国に行けていいなと思っていました(笑)。ただ、小中学生の頃は友達に『おぼっちゃん』って呼ばれるのが嫌でしたね。自分で働いてお金を稼いでも、実家の力なんじゃないのって言われるのが嫌で、隠していた時期もありました」

お父様とは昔からとても仲がよく、何でも話せるような関係でした。家業を継ぐと聞いたときも、少し不安がありましたが、応援する気持ちがおおきかったと言います。

「サラリーマンと家業の仕事を並行していた頃があったので、家業に一本化したら年収が減ってしまうんじゃないかという不安はありました。でも、継ぐか継がないかはっきり決めないといけないタイミングだったし、父の判断ならいいだろうと。結果、全く問題はありませんでした。私が当時中学生か高校生だったので、一家では戻らず、父だけ福島に戻る形になりました。実は私は、サラリーマン時代の父の仕事の都合で北海道と神奈川で育ったので、福島にあまり知り合いがいなくて。祖父母の中では、この先私が家業を継ぐことが当たり前になっているんですが、正直なところそういった点でも難しさを感じています」

いい会社を潰すのはもったいない

おじい様やおばあ様からの期待はありつつも、ご両親からは「家業のことはいいから、やりたいことをやれ」と言われ、大学卒業後は証券会社を経て、東京にあるコンサルティング会社へ。自由に就職先を決めたものの、現在の会社に転職したのは、ご自身がいつか家業を継ぐかもしれないと考えたからでした。

「証券会社に勤めていたとき、配属先の福岡で、地場産業をやっている経営者の方々とよく話をしていたんです。そしたら彼らの中でも同じように、後継者問題があがっていて。『息子がいるけれど継ぐかわからない』という話をたくさん聞くうちに、自分の家業のことも重ねて考えるようになりました。しかも、後継者問題を抱えている会社に限って、いい商品をつくっていたり、素晴らしい取り組みをやっていたりするんですよ。そういう会社を潰しちゃうのはもったいないと感じたんです。それで、実際に自分が家業を継ぐ可能性があるなら、数年でも経営スキルを学べる会社に行った方がいいんじゃないかと思い、転職しました。今は、戦略やITなど、オペレーション分野のコンサルティングを行っている会社で働いています。仕事をしながらも、どこか頭の片隅では家業について考えています」

地方だからこそ抱える問題がある

家業と関わりつつも、継ぐかどうかはまだ決めてないと言う羽場さん。地方でやっている事業だからこそ抱える問題がありました。

「すごくいい仕事なんですが、必要としてくれる人たちがどんどん減ってきているのが現状です。地方なので、人口の減少とともに利用する人が少なくなってきていて、このまま福島で会社を続けたとしても、いつか絶対に立ち行かなくなる日がくる。父も、このままじゃまずいと感じていて。将来を見据えて、全く新しいことをするのか、会社の機能自体を都心に持ってくるのかなど、これからどうすべきかを一緒に考えています。もし私が継ぐとしたら、事業をアップデートする必要があるとは思いますね」

アイディアを活かして未来へつなぐ

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今は、地元の観光業や産業と提携して体験コンテンツをつくったり、宅配サービスと連携したりなど、今後取り組んでみたいアイディアを練っている最中。本業でいろいろな会社を見てきた経験が活きています。

「参考にできそうなものの考え方や新しいビジネスモデルの引き出しは、おそらく多いですね。ただ、これからは、実際に経営したときのフェーズごとの考え方を学ばないといけない。コンサルティングの仕事って、基本的にクライアントの社長や副社長といった上層部を相手にするので、彼らと対等もしくはそれ以上の経営スキルや視座が必要なんです。そういう点からも家業の役に立つだろうとコンサルティングの道に進みましたが、やっぱり実際に自分で経営するのとは訳が違うので、その辺をどうにか学びたいです」

現在は家業を継ぐ道、継がない道、どちらに進んでも大丈夫なようにキャリアを積み上げていますが、羽場さんの最終的な目標はゆっくり海外で過ごすことだそう!観光業が盛んなハワイで支社を立ち上げるのも楽しそう、だなんてお話も膨らみました。感染症の時代にあっても、子供たちを始めとする地域の人たちに笑顔を届けてきた、羽場さんの家業。新たな世代のアイディアを乗せて、未来を目指して走り続けます。

(執筆:梅本智子 / 取材・構成:出川 光)
写真提供:羽場様



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本記事の内容・表現は、取材当時の"瞬間"を『家業エイド』視点で切り取らせていただいた、あくまで家業を通して皆様が紡いでいる物語の過程です。皆様にとっての「家業」そして「家業との関係性」は日々変わりゆくもの。だからこそ、かけがえのない一人一人の物語がそれを必要とする誰かに届くことを切に願っております。

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