#19. アメリカのトイレットペーパー
アメリカのトイレットペーパーの個別包装紙である。
ニューヨークで居候をしていたときに、あやうくゴミ箱に捨てられそうになっていたところをもらい受け、日本に持ち帰ってきた。
これを見ていると、配色、フォントの選び方、イラストの使い方、装飾のテイスト、インキのムラなど、あらゆる点で「アメリカっぽいなあ」と思う。もちろん、いい意味で。
ぱっと見では赤と紺の2色印刷に見えるが、よく見るとインキは3色使われている。
3色めは中央の「SAFE FOR SEPTIC SYSTEMS(浄化槽システムに安心)」の水色である。
さらに「紺の網点」や「水色のベタの上に紺の網点」を使って階調を増やしている。無造作なようでいて、意外によく考えられている。
以前、翻訳会社のDTPの仕事をしていたことがある。
そのときに欧米から送られてくるDTPデータを見て感じたのは、「雑だけどデザインをわかっているな」ということだ。
データとしてはさほど丁寧には作られていなくて、ときにはあきれるほど雑なのだが、配色のセンスだとかデザイン感覚だとかといった「肝心な部分」はきちんとツボが押さえられてられていて、自分もずいぶん勉強になった。
「トイレットペーパーの包装紙をわざわざ日本に持ち帰ってくるなんて変な人」と思われるかもしれないが、まあ、そんなことを考えたりしながら、この紙切れを愛でている。