死にゆくときに聴きたい「激ウマ」スキャット:Pink Floyd 『The Great Gig in the Sky』
自分が死んでいくときに聴くならどんな曲がいいだろう、と考えることがある。
『The Great Gig in the Sky』は私のその候補曲のひとつだ。
ピンクフロイドのファンでなくてもジャケットを一度は目にしたことがあるであろうこのアルバム、『The Dark Side of the Moon』に収録されている。
日本語の曲名が『虚空のスキャット』とされているとおり、冒頭部分のナレーションを除けば、この曲にはいっさい歌詞がなく、歌唱は「スキャット」だけである。
アルバムではクレア・トリー(Clare Torry)さんというシンガーが歌っていて、メロディーはレコーディング時の彼女の即興だったという。
その即興の作曲について正当な報酬が支払われていないという理由で訴訟にもなったが、のちに和解し、現在(2005年以降)は作曲者のクレジットにクレア・トリーさんの名前も併記されている。
もちろんアルバムのクレア・トリーさんの歌声もすばらしいのだが、私は1989年のヴェネツィアで行われたライブのバージョンのほうがさらに好きだ。
女性シンガーの3人ともが鳥肌が立つほどの「激ウマ」で、とりわけ最初のパートを歌っているRachel Furyさんの歌声を初めて聴いたときには、強い衝撃を受けた。
その割れたような声は、絶叫あるいは悲鳴のようにさえ聞こえる。
女優としてはRachel Brennockという名前で活動し、歌手としてステージに上がるときにはRachel Furyという名前を使っていた。
この後まもなく引退してしまったことから、よけいにこのステージでの姿が輝いて見える。
続く2人の黒人女性は、Durga McBroomさんとLorelei McBroomさんの姉妹。
私の人生にピッタリな曲を選んだら、『笑点』のオープンングテーマのような感じになるのかもしれないが、せめて死ぬときに頭の中で流れる曲くらいは、これくらい壮大でドラマチックなものにしていみたい。
ということで今日の1曲は、ピンク・フロイドで『The Great Gig in the Sky』、Live in Venice 1989。
※Weblio辞書では「激ウマ」は「とても美味しい」を意味する俗語とされているが、ここでは「とても上手い」という意味で使った。
トップ画像:YouTube/Pink Floyd - The Great Gig in the Sky [Live] [Venice 1989]
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