#15. ボロフスキーのポストカード
ジョナサン・ボロフスキー(Jonathan Borofsky)は私が最も好きなアーティストの一人だ。
今日紹介するボロフスキーのポストカードは、だいぶ前に東京・青山の『ON SUNDAYS(…on Sundays)』で購入したものだ。
詳しい時期はよく覚えていないが、裏面に記載されている郵便番号が3ケタになっているので、1998年以前であることは間違いないだろう。
裏面に「JBO 1」「JBO 2」のような番号が振られていたので、この順番に紹介していきたいと思う。
(日本語訳はカードの裏面に書かれているもの)
【JBO 1】
「I dreamed I was painting the numbers on a clock.」
(時計に数字を書き入れている夢をみた。)
2482888
【JBO 2】
「I dreamed that Salvador Dali wrote me a letter.」
(サルバドール・ダリから手紙をもらった夢をみた。)
「Dear Jon,
There is very little difference between the commonplace and the avant-garde.
Yours Truely,
Salvador Dali」
(やあジョン、
平凡と前衛のあいだにはほとんど違いがない。
それでは。 サルバドール・ダリ)
2487690
【JBO 3】
「I dreamed I was taller than Picasso」
(ピカソより背が高いという夢をみた。)
2175191
【JBO 4】
「I dreamed I was leaving on a trip but I forgot money」
(旅に出るがお金を忘れてしまう夢をみた。)
2178900
【JBO 5】
「I dreamed I could fly」
(空を飛べる夢をみた。)
2009711
【JBO 6】
「I dreamed a UFO landed
Then, it disintegrated before my eyes」
(UFOが着陸する夢をみた。
そして私の目の前で分解してしまった。)
2525054
この『夢をみた』のシリーズは書籍にもなっている。
今ではプレミアムが付いて、1万円以上に。
彼の作品でほかに特に有名なものには、『1から無限へのカウンティング』がある。
1、2、3、4、5……1001、1002、1003……と、1ずつ増える数を紙に何年間も書き続けるという作品である。
ボロフスキーは署名代わりにこの「カウンティング」の数字を使っていて、今日紹介したポストカードにもその数字が記されている。
1987年に東京都美術館で開かれた『ボロフスキー展』で、私は『1から無限へのカウンティング』の実物、つまり「数字が延々と書かれた紙の束」を見た。
『ボロフスキー展』には難解な作品はひとつもなく、いたずらっぽいアイデアが満載の、楽しいものばかりだった。
裏側にモーターがつけられていて、グルングルン回る絵(立派な額縁付き)。
プチプチ(気泡緩衝材)で包まれたままの絵。
天井から吊り下げられた絵からは、ガンガンと音楽が鳴っている。
プチプチ(気泡緩衝材)でできた大きな人型のオブジェのお尻が天井を突き破っている作品もあった。
これは工事関係者が誤って空けてしまった天井の穴を、そのときの思いつきで利用したそうだ。
展示準備のために使っていた備品の前に「作品名プレート」を置いて、作品に仕立ててしまったものもあった。
私はこの1987年の『ボロフスキー展』の図録も、カウンティングの本『Jonathan Borofsky: Counting』も持っていたのだが、この記事を書くにあたって探しても、どこにも見当たらなかった。
これらもまた、この狭い部屋に引っ越すときに捨ててきてしまったようだ。