車中泊の旅で見た青い空:ムーンライダーズ 『トラベシア』
車中泊をしながら日本を一周し、すべての都道府県で路上ライブをした友人がいる。
彼に誘われて、私はその旅の最後の一ヵ月に同行した。
もう30年も前の話だ。
彼が路上で歌うのはすべてオリジナル曲だったが、車の中で、あるいは誰もいない河原で、ほかのアーティストの曲を歌ってくれることもあった。
その中で特に私が好きだったのは、ムーンライダーズの『トラベシア』だ。
素人の感想ではあるが、彼の歌はムーンライダーズの鈴木慶一さんよりもずっと上手かった。
正確にいうとこの曲はムーンライダーズのオリジナルではなく、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)さんというブラジルのアーティストのもので、原曲は『TRAVESSIA』という。
ポルトガル語の歌詞をDeepL翻訳で自動翻訳してみたところ、ムーンライダーズの歌詞とはだいぶ内容が違っているようだった。
この曲を聴いていつも思い出すのは、友人の力強く伸びやかな歌声と、旅の日々に見ていた青い空だ。
その後、彼はメジャーレーベルからデビューしたものの、誰もが名前を知っているような有名なミュージシャンにはならなかった。
今は音楽教室を経営している。
彼は高校時代からの親友であったが、あるときから険悪な関係になってしまい、もう長いこと会っていない。
しかし、あのような旅に同行させてくれたことへの感謝の気持ちは、今でも変わることがない。
余談ではあるが、以前の記事で書いた「美人ミュージシャン」とニューヨークで居候させてくれた友人S君は、ムーンライダーズに2020年に加入したドラムスの夏秋文尚さんと知り合いであるらしい。
人生は思わぬところでつながっている。
ということで、今日の1曲はムーンライダーズで『トラベシア』。
ミルトン・ナシメントさんのオリジナルバージョンはこちら。
トップ画像:Pexcels/Vedad Colic