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『絆光記』感想

私たちは、光について語らなければならない

ルポライター「白紙の文書/イルミネの特集記事」より

本編

オープニング「停電」

早くも今回のテーマが「言葉」であることが示される

ある時は自身の考えを書き連ねるため、
ある時は互いに情報を伝達するため、
ある時は好きや感謝を相手に伝えるため、
言葉にはいろいろな形がある

そして、もう1つのテーマである「光」と「闇」

突然の停電でスマホの明かりを頼りにブレーカーを目指すイルミネだったが暗闇を照らしていたスマホ(光)を落としたり充電が切れたり、何やら不吉な予兆が垣間見える


余談だけど

プロデューサーが「光を与える存在」として描かれてるの良いよね


第1話「カーテンのリアリズム」

何やら勧誘を受ける真乃と

困っている女性を助ける灯織と

声を荒げる男性を目撃するプロデューサー

これから向き合うことになる「闇」を抱えた人たちが現れる

社会に対する不満だったり他者と比較することで生まれる劣等感だったり、誰しもが持ちうる負の感情はカーテンという薄布一枚隔てたすぐ隣に現実として存在している

そういった人たちにとって「光」は眩しすぎるのかもしれない


第2話「ナラティブⅡ」

ここでキーパーソン、ルポライターの登場

タイトルの「ナラティブ」とは語り手自身が紡いでいく終わりのない物語を意味し、以降はルポライターの視点も交えながら物語が進んでいく

イルミネの光に魅せられた者として、何かできることはないかと奔走するプロデューサーと

共演したアイドルから引退を告げられるめぐる

彼女もまたイルミネの光に魅せられた者の一人ではあるが、皮肉にも浴びる光が強いほど、生まれる影もより濃くなる


第3話「ナラティブⅢ」

引退するアイドルにかける言葉が見つからなくて、

困っている女性にかけた言葉が正しいとは限らなくて、

訴えかける女性にかけたい言葉がわからなくて

言葉をかけて欲しいのかも曖昧で――

それでも

「言葉」が持つ力を信じて、想いを1つに前に進んでいこうと決意する3人

一方で、ライター仲間と口論するルポライター

夢と現実のギャップに苦しむ彼もまた「闇」を抱えていることが窺える

そして、とうとう邂逅するイルミネとルポライター

「光」と「闇」が出会ったとき何が起こるのか


余談だけど

昼の光では無理でも夜空に浮かぶ星のような光なら、と さりげなく期待を持たせる文章力がすごい


第4話「ナラティブⅣ」

プロモーションの一環で、地域ワークショップに参加して同世代の人たちと交流を図るイルミネ

その様子をルポライターは「退屈でお行儀のいいやりとり」と揶揄するが、

インタビューを通じて、3人が「言葉」を探していることを知る

奇しくもそれは

ルポライターの信条と同じであった


余談だけど

ここ、最高にシャニマスしてる


第5話「そういう世界」

イルミネの頑張りの甲斐もあって好調な滑り出し、のように見えたが……

映画は賛否両論の嵐、その勢いは宣伝隊長であるイルミネにも波及する

一方で、ルポライターも苦しんでいた

自身が信条とする「言葉」とイルミネが探している「言葉」の板挟みに、

自分よりも真摯に誠実に「言葉」に向き合うイルミネの姿に苛まれていた


第6話「汎光」

仕事抜きに、正直な感想を話してほしいと提案するプロデューサー

めぐるも

真乃も

灯織も 嘘なく好意的な感想から言葉を発していて、

でもその言葉が言葉通りに受け取ってもらえなくて――

3人の言葉を受けて、プロデューサーも応える

そうしたうえで

言葉は、言葉

常にアイドルたちに寄り添い真摯に向き合ってきたからこそ、否定的ながらも同様に真摯に向き合うルポライターの「言葉」に救われた

たとえそれが本人の意思とは異なっていたとしても

意思を持たない言葉だからこそ まっすぐ伝わらないこともあって、意思を持たない言葉だからこそ 思いを超えて伝わることができる

一方で、ルポライターは

堪えきれなくなり衝動的に走り出した結果、足を痛めて診察に来ていた

えっ


「闇」の中でようやく向き合った自分

その「光」はどんな色をしていたのだろうか

意思を持たない言葉だからこそ まっすぐ伝わらないこともあって、意思を持たない言葉だからこそ 思いを超えて伝わることができる

彼もまた、イルミネの真摯に向き合う「言葉」に救われていた


エンディング「前書き」

その願いは、

その望みはきっと、

紡いだ人の思いを超えて伝わるから、

それぞれの「言葉」で、

必要とされるその時まで、

形なき「言葉」だったとしても、


探し続けよう

だから、ルポライターも

プロデューサーも 真乃も 灯織も めぐるも

私たちも、ずっと語り続けていこう


【王と蚤】

コミュ1「興じたい」

友人と映画の試写会を見に来ためぐるのファンだったが、

映画の感想で意見が対立してしまう

議論がヒートアップしていく中で、

応援しているアイドルに勧められて出会った映画を観たという一連の体験まで含めて楽しめたと主張するファン

楽しい基準や価値観は人それぞれだが、新たな付加価値を生み出せたのは めぐるが発した「言葉」の力によるものなのかもしれない


コミュ2「通じたい」

偶然、ドーダンで再開するめぐるとルポライター

相変わらず天敵ではあるものの、肯定的に受け取れるようになった様子

「闇」ではなく「光」が生み出す陰の中であれば共存できるのかもしれない


余談だけど

ここ好き

ここ好き

この3点リーダー、無限に味がする

ここ大好き


感想 "闇を照らす光に紡げる言葉とは"

今回、テーマとなった「言葉」「光」と「闇」を軸に語っていく

何かを形で伝えることの難しさ

勧誘してきた女性に何と言葉をかけて良いのか分からなくて、助けた女性にかけた言葉が意図せず相手を苦しめてしまって、引退するアイドルにかける言葉を見つけることができなくて、映画の感想がまっすぐ伝わらなかったことに困惑して、イルミネの魅力をもっと伝えられないか悩んで、リメイクした映画で伝えたいことがあったはずで

身近な例でいえば そんなつもりでSNSに投稿したわけじゃないのに誤解されて口論になったり炎上したり、と

日常生活の中にも言葉に関する擦れ違いはいくつも存在する

何かを言葉という形にして そのままの意味で伝えるのは難しいけれど、意思を持たない言葉だからこそ 思いを超えて誰かを救うこともあって

不確かゆえに、独り歩きして悪意にも希望にもなる

まったく「言葉」ってやつは、厄介な隣人で 神出鬼没な救世主だよ

声を発するだけが「言葉」じゃない

ただ必ずしも形にして相手に伝える必要はないのかもしれない

アイドルを引退してマネージャーになった子のように「光」が生み出す輝きによって自ら救われてくれる人もいれば、ルポライターのように「光」が生み出す陰の中で生きていける人もいる

それはきっと、形なき「言葉」として思いを超えた結果なのだろう

だからこそ 私たちはこれからも相手に寄り添い 真摯に向き合い、私たちなりの「言葉」を探し続けていかなければならないと心に刻もう

最後に

ルポライターは自分よりも「言葉」に真摯に向き合う3人の姿に苛まれ、暗闇の中でようやく逃げていた自分を顧みることができて、「光」を肯定的に受け取れるようになったが

もし「光」を受け入れることができなかったとしたら

あるいは救われることを望まない「光」が届かない深淵だったとしたら

その時こそ「闇」を肯定する存在が必要になってくるのではないだろうか

まるで彗星のごとく突如現れた、あの子たちのような存在が――


『くもりガラスの銀曜日』『はこぶものたち』等から続く普遍的で正解がないテーマに真摯に向き合うイルミネの懸命な姿に強く心を打たれたし、また283プロ全体が大きく動くと明言されている中で期待が高まる6周年の一発目にふさわしい内容の素晴らしいシナリオでした

最後までご覧いただき、ありがとうございました

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