ミニ論文を書いてみよう

 こんにちは、あるいは、こんばんは。
 文系大学院生のアーニャます。

 今回は、私が学部生におすすめする「ミニ論文」についてお話してみたいと思います。
 これは、学部生の早い段階で大学院への進学」や「研究やってみたい」と思い始めた学部生や場合によっては高校生の方々に、試してみてほしいものです。
 個人的に思うのは、本を読んだり論文を読む「勉強」だけではなくて、一次資料や歴史史料、データを読み込むことや、さらにそれらをまとめて文章化してゆく「研究の流れ」を、早いうちに体験してほしいと思っています。

 つまり、「インプットだけではなくて、自分でアウトプットをすること、さらに、”研究の手法に則ったアウトプット”をしてみること」が大事なのだろうと思います。

 「ミニ論文」はその一手法で、「勉強」から「研究」へ移行する体験を早いうちに経験してみてほしいと思います。

研究や大学院に興味を持ったら…

 私個人の体験談として、「大学での座学」「研究」や「研究論文を書く」までの流れは少し乖離があるように思います。
 誤解を恐れずに言うと、「授業を聞いて面白かった」、「本を読んでみて気になった」という経験が、即座に「研究に向いている」とイコールにならないのではないかと思っています。

 これは私個人の体験として、「座学の授業が嫌いで殆ど出席しなかった人間が、気が付いたら独学で勉強を初めて、大学院の博士課程まで進学してきた」という体験談も、そこにはあるのかもしれません。

 大学院進学も、大学入試や高校入試と同じく、早いうちに計画をして試験対策や研究計画をたてて動いたほうが、もちろん準備は早くできます。
 しかし、大学院で行う「研究」「論文執筆」は、学部1,2年生までの座学での勉強とは異なる戦い方になります。

 すくなくとも、「成績が良いから大学院向き」、「悪いから大学院もダメ」とはならないと思っています。

 では、どこで判断するか。

 それは、一般には「学部4年生になって、卒業論文の執筆と研究をして、実際に研究を体験してから、大学院を考える」ということになるのかなと思います。
 基本的にはそれで問題ありません。「就職か大学院進学か」を悩みながら、卒論に取り組んで、就活もしながら、大学院進学に舵を切るという選択は大いにあり得ると思います。

 ただ、それ以前の学部3年生までのうちに、「自分は研究してみたい!」「大学院進学を考えたい!」と思っている方もおられると思います。

 しかし、卒論を書くまでの間は「研究」ではなく、「自分で興味ある内容について、本を読むのが好き、人と語り合うのが好き」という状態だけで、「大学院進学を…!」と考えたりするのだと思います。

 もちろん、ご自身の「好き」「興味関心」が間違っているはずはありません。ただ、大学院では「研究」、さらに論文執筆をしなくてはいけないので、ちょっと違った方面の能力を使います。

 そこで、その興味関心や熱意をもって自主的な「”研究”の練習」をすることをおすすめしています。それが「ミニ論文」です。

「ミニ論文」とは

 「ミニ論文」とは、私が勝手に言っているだけなので、一般に通じる言葉ではありません。
 もしかして、ゼミに入った後に、2年生終わり、3年生終わりに課題レポートのようなものを課される方もおられるかもしれません。分かり易く例えれば、それが「ミニ論文」であるとも言えますから、それで代替して考えてもらっても構いません。

 先ほど書いたように、本を読んで「勉強」することから、「研究」へと移行する過程を、自分でも体験してみるということです。

 そして、大事なことは「ミニ論文を書くこと」よりも、「ミニ論文を書くまでの過程と、それを書くこと」すべてが、研究の練習になります。

 簡単な構成はこんな感じです。

(はじめにやること)
・一次資料、史料、データの収集
・先行研究の収集

(ミニ論文の内容)
①論じるテーマの概要
②先行研究まとめ

→このテーマについて、誰が何を論じているのか
→どこが欠けているか、足りない観点はあるか(自分が考察するポイントを見出す)
③一次資料、史料、データの読み込み)
データや史資料をもとに、自分の考えを述べる
※脚注のつけかたや章、節のつけかたはしっかり論文形式で
※文字数はあまり関係ない
※ひとつのテーマで起承転結をつけて、数千字~最大で2万字くらい(学会誌に投稿する論文もだいたいこれくらいが目安)
※もし可能なら、教員や先輩に読んでもらってコメントをもらう

 以上、簡単に「ミニ論文」の体裁について書いてみました。

 大事な点は①と②です。④になると、本格的に卒論と同じようになっていきます。まずは①と②、③が終えられられただけでも、充分卒論研究や今後の研究の下準備として完成できます。
 ①も、ただウィキペディアを丸写しすればよい、というものではないことはご理解いただけるでしょう。概要を説明し、間違いのないように書くだけで、実は概要書や専門書、専門的な辞書を用いて書く必要があります。
 ただしテーマは自由ですから、必ずしも卒論の内容とイコールである必要もありません。

 

大事にしてほしいこと


 「ミニ論文」ですが、おそらく、すぐに書き始められるはずはありません。
 ここで、大事にしてほしいポイントとして3点あります。
 1点目は、「論文の書き方のルールを覚えて、そのルールに沿って書くこと」。
 私のいう「ミニ論文」と、授業のレポートやゼミでの課題レポートと違う点はここかもしれません。できうる限り、論文と同じ体裁で書いていくことが重要です。
 このルールはどのように身に付けるか。
 「論文の書き方」の指南書のような本は巷にあふれています。それを読んでも構いませんし、ご自身の専門分野の研究論文を読んで、その書き方を真似てみるのもよいと思います。例えばcinii(CiNii Research)などで論文を検索すると、インターネット上でPDFファイルが公開されているものがあったりします。

 特に、「横書き」なのか「縦書き」なのか、「脚注」「文末脚注」なのか「参考文献」方式なのか等は、その専門分野によって大きく異なります。ご自身の専門分野の研究論文を読んでみてください。脚注の参考文献をどのように記載するかもルールがあると思います。

 例えば歴史学(日本史)だと「縦書き」で、「文末脚注」、さらに脚注の書き方は以下のようになります。

・単行本 
(1) 著者名『著作名』(出版社、出版年)〇〇頁
・論文
(2) 著者名「論文名」(学会名『学会誌名』〇巻〇号、刊行年、ページ数)
・学術書の中の1論文
(3) 著者名「論文名」(編者名『著作名』出版社、出版年、ページ数)


※あくまで一例です。書き方には他にもあります。

 2点目に、「関連する文献を、ありとあらゆる手段で探し出して読むこと」です。②と③に関連する点がこれにあたります。
 まずは大学図書館での検索が手っ取り早いでしょう。
 続けて、ネット上で先ほど紹介したCinii(CiNii Research)や、Google Scholar(Google Scholar)などの検索のほか、国会図書館サーチ(国立国会図書館サーチ(NDLサーチ))なども有用です。

 複数挙げている理由は、検索にヒットしなかった文献が、別な検索ではヒットする可能性が大いにあるからです。
 また、古い文献やマイナーな研究誌に掲載されている場合は、ネットでの検索は難しく、「読んだ本(論文)の参考文献欄」から、その存在を探し出すこともあります。

 少なくとも、このテーマについて論じられている文献を徹底的に調査して、まとめることが論文執筆の第一歩です。

 たまに「研究者はオタクっぽい」と言われて、ムッとすることがあるのですが、一番「オタク」要素を発揮するのは、この文献調べかもしれません。

 こうした「文献の調べ方」に際して、まずあたるべき文献や辞書などは各専門分野ごとに異なります。
 難しければ、教員や先輩に尋ねてみてもいいでしょう。
 「文献を調べて、収集する」という行為も、今後研究をしてゆく上では基本的な行動になります。
 「ミニ論文」にまとめる以前の行動ですが、「研究」の一過程として大事なポイントとして、体験してみてほしいと思います。

 簡単なネット検索だけを行って「発見できなかった」と書いてはいけません。もし本当に発見できなかったとしたら、それは、そもそも「研究が難しいテーマ」なのかもしれません。


 3点目に、④に至る過程が、実は一番難しいところです。②までは機械的にでも埋めてゆくことができます。
 しかし、自らデータや史料、一次資料を読み込んだ上で、「先行研究に何が欠けているのか」「新たにどんな観点を追加できるか」という点が、自らの「研究」を生み出すポイントになってきます。
 思い浮かばないときは、「読み込み」が甘いのか、それとも「ひらめき」が足りないのか。

 個人的には、いろんなインスピレーションがアイディアにつながるので、なんだか芸術作品を生み出している感じがします。


私の体験談

 私は、今現在、歴史学の研究をしています。
 大学院も文学研究科に進学をして、今現在も研究を続けています。
しかし、学部生時代は「法学部法学科」に所属していました。
 周囲が法曹や公務員を目指す環境下で、憲法学や行政法、国際法、地方自治法…といった授業の単位をとるなかで、自分が興味をもった「歴史学」はほとんど独学で勉強をはじめました。

 そうした自主的な勉強のまとめとして、大学4年生のはじめころに書いたものが、「ミニ論文」でした。

 歴史学の入門書、概説書を読み、最後は大学生向けの教科書を読んである程度の知識を詰め込む。
 その後は、面白いと思うテーマについて関連する文献を探してゆきます。
 まず、一次資料を入手します。
 もっとも基礎的な文献がどれなのかを調べるところからスタートします。わからなければ、研究論文の脚注を探して、そこに引用されているデータや資料が、「どの文献から引用されているか」ということを手掛かりにすることができます。
 私の場合もそうで、単行本の参考文献欄→参考文献欄の著作→引用されている史料、論文と資料を探し、読み進めていきました。

 最終的には、「①概要」、「②参考文献まとめ」、「③一次資料収集と読み込み」までは行い、内容としては、「③一次資料(歴史史料)の内容を解読して、紹介する」程度のものを書きました(だいたい1万3000字くらい)。
 どんな内容を書いたか、よりも、論文と同じ体裁で文章を書いたことが、後々論文を書いてみる練習になりました
 もちろん、論文と同じ体裁で文章を書くために、多くの論文を読んで、自分で見よう見まねで、書き方や、論文を書くまでの考え方を学んだことも大きな経験でした。

おわりに

 今回は「ミニ論文」について、書いてみました。
 各分野に通じるように、普遍的に書こうと思うとちょっと難しいところがありますね。
 それに、説明が足りないところも結構あるように思います。今後修正や追記をどんどんしてゆこうと思います。

 「勉強」と「研究」は違う、ということについて少しお話しました。
 冒頭にも書きましたが、大事なことは、インプットだけではなくて、自分でアウトプットをすること、さらに、”研究の手法に則ったアウトプット”をしてみることが大事なのだろうと思います。
 私のいう「ミニ論文」に限らず、課題レポートなどでも、そのような意識をもって書いてもらえたら、少しでも「研究」の雰囲気がわかってくるのではないかと思います。


 ここまで読んでくださって、ありがとうございました。



 



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