文系のための大学院進学準備(1)  大学院入試の仕組みを理解しよう

 「大学院に進学しよう」と思った方、少しだけその意識を持ち始めた学部生や高校生の皆さんに向けて書いてみたいと思います。

 大学院入試に向けた準備、何をしたらよいかわからない方もいるかもしれません。
 私自身、手探りで準備して本番に臨んだタイプでした。
 
 今回は、「あの頃(学部3,4年生)の自分に伝えておきたい」こととして、まとめてみたいと思います。
 もとから大学院進学の準備をされている方にとっては「当たり前」なことかもしれません。そっと画面を閉じて、研究に集中してください。

 今回は「その1」ということで、準備段階のお話です。

【大学院入試に向けた準備】
1、基本的な仕組みを理解しよう(今回)
2、スケジュールをたてよう
3、研究室の情報を集めよう
4、研究室や指導してほしい教員に連絡してみよう 
5、試験対策を始めよう
6、本業の研究は怠らずに
7、さあ、試験本番



 
 まず、基本的な私の大学院進学情報についてですが、以下のようなものでした。

・学部→大学院は人文系
・大学院進学は、「指導教員のいる現在の私立大学」か、「その分野では著名な国立大学」かで悩む
・結局、学部→大学院は別な学校を選択
・受験校は先ほどの「国立大学 文学研究科(合格)」、「私立大学 法学研究科(合格)」の2校を受験
・試験は「前期試験(9、10月ごろ)」ではなく、「後期試験(1、2月ごろ)」のみ受験

以上の通りです。

 なぜ法学研究科なのかとか、 少々私の進学経緯は複雑なので、詳しくは一旦置いといてください。

1,基本的な仕組みを理解しよう

①大学院入試の時期を理解しよう
②大学院入試の内容を理解しよう

③過去問を見てみよう

 まず、大事なことはスケジュール感です。
 大学院入試は、学部4年生で受験することになります。しかし、4年生ともなるとゼミでの発表や、何より卒業論文(卒論)に追われることとなります。
 大学院進学を希望する方は、卒業論文の研究も目いっぱい頑張りたい人も多いと思います。バランスを考えてゆくためにも、事前にスケジュールを立てておくことは大事です。とはいえ、スケジュールを考えることは「2,スケジュールをたてよう」にて扱います。

 まずは、大学院入試に関する基本情報から抑えていきましょう。

①大学院入試の時期や定員を確認しよう

 修士課程(博士前期課程)の試験の場合は、どこの大学院でも
1,「前期試験(9、10月ごろ)」
2,「後期試験(1、2月ごろ)」
の2種類が用意されていることが多いです。また、「推薦入試」(後ほど説明します)は前期に行われることが多いです。

 これは大学入試と同じく、基本は「前期試験」のほうが定員が多く、「後期試験」は定員が少ないようです。大学院内の専攻などはそれぞれですから、志望する学校を調べてみましょう。
 中には、以下の東京大学のように「後期(冬季)試験」しか行わない大学院の専攻分野もあったりします。

東京大学大学院 人文社会系研究科「一般選抜」

「基礎文化研究」専攻
・定員 夏季・冬季 あわせて 55人

(各専攻分野の試験実施日程)
「言語学」 夏季及び冬季
「考古学」 夏季及び冬季
「美術史学」 冬季
「哲学」 冬季
「倫理学」 冬季
「宗教学宗教史学」 夏季及び冬季
「美学芸術学」 冬季
「死生学応用倫理」 冬季
「心理学」 夏季及び冬季

「令和5(2023)年度 東京大学大学院人文社会系研究科 修士課程学生募集要項」https://www.l.u-tokyo.ac.jp/assets/files/HP/bosyuyoukou2023M.pdf

・推薦入試

 大学院入試の場合、「自大学学部→自大学の大学院」へと進学する学生に向けて、「推薦入試」などがある場合があります。
 例えば、「GPAが3.0以上」などの条件を達成していれば、筆記試験が免除されて面接と小論文だけで受験できる大学院なんかもあります。
 語学や専門科目を受験しなくてよいぶん便利なのですが、「前期試験の時期限定」、「専願受験のみ」という場合が多いです。
 
 他大学への進学も考えたい方からすると、少々悩みどころですよね。
 もちろん「自大学の大学院の受験=推薦・専願受験である必要はありません」。他大学と自大学を同時並行で一般受験しても何の問題もありません。
 
 ちなみに私の場合は、推薦入試の条件は満たしていました。
 ただ、他大学への進学も考えていたため、結局のところ推薦入試は受験しませんでした。

・定員の見かた
大学院によっては
「△△大学大学院〇〇学研究科 ××学専攻」もあれば、
「〇〇学研究科 〇〇学専攻 〇〇学専攻分野」と、専攻の中に専攻分野まで分かれていることもあります。
 正直、複雑ですよね。まして、他大学の受験を考えようとしている方には、知らない他大学の仕組みは独特で理解しづらいことと思います。
 「定員」は、〇〇学研究科全体で設けられている例や、〇〇学専攻で設けられている場合があります。
 「大学院の試験」は、この最小単位である××学専攻や、〇〇学専攻分野ごとに独自の試験問題が課されたりします。これは次項で扱います。

 自分の入学したい大学院の専攻、もしくは指導を受けたい教員は、どの専攻分野にいるのかを確認しておきましょう。


②大学院入試の内容を理解しよう

 「大学院入試って、何の試験があるの?」とよく聞かれることがあります。確かに、大学入試とは少々違う点もあります。
 先ほどもみたように、大学院試験は、××学専攻や、〇〇学専攻分野ごとに試験問題が異なります。隣の専攻は研究内容が全く違うわけですから、一種当然ともいえます。
 分野によっても異なりますが、基本的な試験の仕組みは以下の通りです。

①語学試験
②専門科目試験
③口頭試問(面接)

 先の項目で、大学院は「〇〇学専攻」や「△△専攻分野」など細かく分かれていることを説明しました。
 試験問題に関しては、①「語学科目」だけは研究科や専攻規模で統一問題、採点がなされる例があります。
 対して②「専門科目試験」③「口頭試問」は、最小単位の専攻分野や研究室毎に独自問題が出題されます。

語学試験

 「語学試験」つまりは、英語の試験ということになります。
 ただ英語以外の語学を選択できる大学も多くあります。
 中には、「英・独・仏・中」から2科目選択という大学院もあったりします(東京大学の一部専攻分野など)。
 ちなみに「語学試験」は、国立大学(学部)入試でいうところの「足きり」が発生する部門になります。
 「専門科目」や「口頭試問」は研究室や専攻分野ごとに出題・採点されますが、「語学科目」だけは専攻全体、研究科全体共通で採点されることがある関係上、指導教員の救済が効かないということでもあるんだと思います。

 ですから、語学科目の対策は万全にしておく必要があります。
 もちろん、入学後にも外国語論文の読解などに求められたりもします。入学後も苦労しないためにも、準備は大事です。
 「語学試験の内容」ですが、私の経験上、試験問題はほぼ「長文読解」です。英語長文を「和訳」もしくは「内容を日本語で説明せよ」といった形で日本語での回答を求められるような形が多い印象です。
 ですから、長文読解、和訳をするにあたって、英文読解能力(特に英文法)の特訓は必須です。もちろん、英単語も知っておかなくてはいけません。
 例外として、「歴史学」などの分野では、「語学試験」を「史料読解」に変更できる大学院もあります。例えば、「くずし字史料の読解」や「漢文・古文で書かれた原典史料の読解」などが登場してきます。こちらの場合も、入学後にも必要な能力ですから、事前に対策はしっかりしておいて損はありません。
 いずれも、大学院ごとに過去問の閲覧ができたり、ネットにアップされている場合があります。

②「専門科目試験」
 
これはもちろん、各分野ごとの専門科目になります。
 法学なら憲法、民法、行政法など、その専門に分かれます。もちろん政治学、社会学、心理学、日本文学、日本史、西洋史、東洋史……と分野ごとに分かれて出題されます。
 先に紹介した、大学院の専攻や専攻分野ごとに出題されます。
 語学試験同様に、過去問が閲覧できる場合があります。
 また、今後のnoteにて書きますが大学院の指導を希望する教員や、研究室を訪ねると、対策として読んでおくべき参考書などを教えてくれたりすることもあります。

③口頭試問 
 わかりやすく言えば「面接」ということになります。
 質問内容は
 ・「なぜ大学院進学なのか」
 ・(他大学からの進学の場合)「なぜ、うちの大学院に入りたいのか」
 ・「修了後の進路予定は?」

といった、一般的な質問から
 ・「自分の卒論の研究について説明してください」
 ・「大学院での研究計画、スケジュールについて説明してください」
 ・「その研究の学問上の意義を説明してください」

といった、研究計画やこれまでの研究に関する説明を求められたりします。
 さらに、
 ・あなたの研究分野である〇〇について、△△という説がある。この説を説明してみてください。
 ・あなたが研究しようとしている〇〇は、××という観点からはどのように評価できますか?
といった、研究の側面からの質問などもあります。これはまさに、「口頭での試験」といった感じですね。
 さすがに口頭試問に関しては、閲覧できる過去問がありません。ネットや大学院進学をした先輩に経験談を聞くのが一番でしょう。また、研究室訪問の際にヒントをもらえたりもします。 
 大学院での「研究計画」については、出願時に提出する場合が多いです。これは今後のnoteにて書いていきます。

③過去問を見てみよう

 ここまで紹介してきた「過去問」は、大学院、特に研究科ごとに扱われ方が違ったりします。
 「ネット公開」をしてくれている研究科、「郵送での取り寄せ」のみの研究科や、「大学入試課にて閲覧のみ」の研究科などがあります。
 一番厳しいのは「閲覧のみ」の研究科。私も体験しましたが、写真撮影も禁止で、閲覧しながらノートにメモを取ることだけ可能という規定でした。

 研究科のホームページに情報がない場合は、入試課に問い合わせてみるとよいでしょう。

 例えば大阪大学大学院文学研究科や、東北大学大学院文学研究科を見てみましょう。ネット上で公開されているので、参考になります。


 第一回はここまでとなります。
 今回は大学院入試の仕組みを簡単に説明してきました。

 次回は、大学院入試の日程と出願時期、そして卒論などとのスケジュールに関して考えてみたいと思います。

 長文お読みくださってありがとうございました。

(その2へ続く)

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