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身体的な特徴はアイデンティティなのか

今回はDSDs(体の性の様々な発達:Differences of Sex Development)について書いていきます。

【目次】
①DSDsとは?
②ステレオタイプな誤解にさらされるDSDs
③LGBT+との関係
④参考文献

①DSDsとは?

DSDs(体の性の様々な発達:Differences of sex development)」とは、

「染色体や性腺、外性器の形状、膣・子宮などの内性器、性ホルモンの産生などが、男性ならばこういう体の構造でなければならない、女性ならばこういう体の構造でなければならないとされる固定観念とは、生まれつき一部異なる発達を遂げた体の状態」

を表します。(nesdsd JAPAN より引用:https://www.nexdsd.com/dsd)

DSDsは、然るべき検査なしでは分かりにくい形状の外性器で生まれる赤ちゃんや、二次性徴の欠如等で、染色体が男性に一般的とされるXY型であったり、膣・子宮が無いと判明する女性(全くの女性)、不妊で判明する男性等様々なものがあり、それぞれの体の状態や判明時期の違い、状況は本当に様々です。

ちなみに、DSDsは、医学的には「性分化疾患」、海外の支援団体の一部では「インターセックス」とも呼ばれています。

ですが、日本では「インター”セックス”」という言葉は、性行為,あるいは「男でも女でもない」ということをを連想させますので、当事者家族の大多数にはその名称は好まれていません。

そのため、英語での「Hermaphrodite」、日本語では「両性具有・半陰陽」といった「男でも女でもない性別」を連想させる用語は、当事者の心を傷つけるものとして使用しないようにと世界的に促進されつつあります。

​なので、基本的には、「DSDs(ディーエスディーズ)」との略語を使うことがよいでしょう。

ただし、そもそもとして,当事者家族の大多数は,「性分化疾患」・「DSDs」はもちろん,「インターセックス」といった包括用語自体を好まず,使用することはほとんどありません。

そのため、DSDsを表す際には、個別の体の状態名=疾患名で表すことがほとんどのようです。​

また、留意しなければならないのは、がん患者の皆さんや糖尿病患者が,体の状態や病名をアイデンティティとしていないように、DSDs(性分化疾患/インターセックス)などの用語を自分のアイデンティティとすることはありません。

DSDsとは,その人の体の一部分に過ぎず、その人全体の存在を決めつけるものではないのです。

②ステレオタイプな誤解にさらされるDSDs

DSDsに対する社会的ステレオタイプ(誤解・偏見)として、「男性・女性以外の性別」・「男性女性の両方の特徴を持った人」・「男女分けられない」・「第3の性」・「中間の体」などのイメージがあります。

しかし、DSDsは胎児期における性に関する体の発達のほんの一部が少し違った経路をたどった結果に過ぎません。

新生児のころには、性別が分かりにくい外性器の状態で生まれたお子さんでも、現在では専門家によるしっかりした検査での性別判定が可能になっており、DSDs(性分化疾患)それ自体は、性自認・性別同一性(自分のことを男性と思うか女性と思うか)や性的指向(男性・女性どちらを好きになるか)を意味するものではありません。

つまり、あくまである体の状態の総称であり、決してLGBT+の人々が抱えるような心の性の問題ではないので注意しましょう。

③LGBT+との関係

DSDsは、性自認や性的指向ではなく、あくまで外性器の大きさ・形や、性腺の種類、染色体の構成、女性の子宮の有無など、「これが『普通の』女性の体・男性の体」とする固定観念とは一部異なる「体の性のつくり」を表す概念です。

さらにDSDsを持つ人々の大多数は、自分が女性・男性であることにほとんど全く疑うことはありません。

むしろ自分の体が完全な女性・男性と見られないのではないか?と不安に思っています。

LGBTQ等性的マイノリティの皆さんの「男性・女性に分ける社会に疑問を投げかける」といった流れとは、実は全く逆という状況がほとんどなのです。

ただし、もちろん、DSDsを持つマイノリティの人々にも、LGBT等性的マイノリティやその支援者の人々はいらっしゃいます。

しかし、メディアやLGBTQの皆さんの前に登場するDSDsを持つ人々は、その中でも性的マイノリティの人々に限られてしまい、メディアのセンセーショナリズムも相まって、更にステレオタイプなイメージを広めている状況があります。


今回記事を書いてみて、

社会的偏見にじっと耐えている、多くの当事者・当事者家族の皆さんがいることを知る機会がないこともあり、知らぬうちに、「男でも女でもない人」・「精巣性女性化症」などと表現してしまっていること。

そのような誤解を解くためにも、「胎児期の体の発達の違い」や「性に関する様々な体の発達状態」などの表現を使うように気を付けなければと感じました。

④参考にしたもの

・「LGBTQ等性的マイノリティのみなさんがDSDsを持つ子ども・人々・家族のアライになるには?」


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