Paris me manque ~パリが恋しい~
Paris me manque. パリが恋しい。
フランスのパリのことではない。
YSL(YVES SAINT LAURENT)の香水『パリ』が既に廃盤になっていたのを知ったのは2月頃のことだった。
私が10代後半につけていた香水で、その時の私の雰囲気よりもずっと大人っぽい香りが、私を背伸びさせてくれていた。
ただ、それは正規店で買ったものではなく、セレクトショップに置かれていたおそらく並行輸入品で、しかもガラスケースの中ではなく、テーブルの上に無造作に置かれていた。
縦に細長い平行四辺形のような形をしたボトルだった。
もしかしたら模造品だったのかもしれないが、あの時代にそれが模造品であったのならかなり良くできたもので、それ程にきちんとラストノートまできれいに香っていた。
先日、渋谷スクランブルスクエアのYSLに何気なく立ち寄った時、そういえばパリを買おうかなと思って尋ねると、もう廃盤になっているとのこと。
いくつか別のものを試させてもらったが、パリが持っていたあの大人びた雰囲気はなかった。
他にも愛用していたのに、気づけば廃盤になってしまった香水はいくつかある。
そのうちのひとつがBulgariの初代『オムニア』だ。
チョコレートのような甘さとスパイスがホッとさせてくれる、温かみのあるオリエンタルだった。
フランカーが次から次と出て、気がつけば初代オムニアは消えていた。
オムニアの廃盤を知ったのもわりと最近だが、その時対応してくれた販売員は初代オムニアを知らないという。
なんてこった…
思うに初代が一番よくできた香りではないだろうか。
実はこの2つの香水、最近になって手に入れた。
忘れられなかったのだ。
どちらもちゃんとしたルートで手に入れてはいるものの、やはり正規店で購入したかった。
香水は、規制の変化によって、あるいは買収でどこかの傘下に入ると香りが変わることがあるし、気がつくと廃盤になっていることが多い。
あんなに売れたYSLのベビードールも、もう廃盤になっていた。
同じ香水をずっと作り続けるのは難しいのかもしれない。
香水は、香りが変わる(可能性がある)前に、廃盤になる前に、買っておこうと思った。
欲しいものは欲しい時に買わなきゃダメだ。
欲しいものは欲しいと言わなきゃダメだ。
ただ、私には欲しいと言えないものがひとつだけある。
Tu me manques.